兵庫県伊丹市は5日、市内にある大阪国際空港(伊丹空港)の敷地で特定外来生物に指定されている南米原産の「アルゼンチンアリ」が大量に発生していると発表した。
アルゼンチンアリは、屋内に侵入して日常生活に支障をきたすなど地域住民に被害を及ぼすことはもとより、極めて高い繁殖能力を有しているため在来のアリを駆逐してしまうなど生態系への影響が懸念されている。
どんなアリ?航空機の運行に影響は?
アルゼンチンアリの体長は2.5ミリとアリ類の中では比較的小さく、動きが素早いのが特徴。色は遠目で見ると黒に見えるが、近づいてよく見ると褐色だという。
伊丹市によると、昨年12月に伊丹市昆虫館で職員がアルゼンチンアリを発見。その後、周辺を調査したところ、この日までに大阪国際空港や伊丹スカイパーク、西桑津公園などで生息していることが分かった。空港内の航空管制などの電子機器やケーブルなどに入りこむ習性があるため、精密機器に影響を及ぼす恐れもあるという。
アルゼンチンアリは、人体や健康への直接的な影響はないものの、家屋や店舗、倉庫などに侵入し、衛生被害を発生させる恐れがある。さらに、資材運搬などにより広範囲に拡散されてしまう可能性もあるという。
環境省によると、日本では1993年に中国地方で初めて発見された。その後、愛知県田原市や神奈川県横浜市・本牧埠頭、東京都大田区・大井埠頭など1都2府9県で発見されてきたが、国内の空港でアルゼンチンアリの大量繁殖が確認されたのは初めて。
伊丹空港を運営する関西エアポートは次のようにコメントを発表、利用客へ冷静な対応を呼びかけた。
- アルゼンチンアリは人体や健康への影響はございません(専門家の公式見解)
- 大阪国際空港でアルゼンチンアリが確認されたのは、一般のお客さまがご利用になるエリアからは離れた、制限区域内の一部のみです。お客さまへの影響はございませんのでご安心ください
- 空港運用への影響も発生しておりません
伊丹市担当者「市販の殺虫剤でも十分効きます」
特定外来生物の大量発生と聞くと、近隣住民は不安になるだろう。近隣住民が、もし家の庭などでアルゼンチンアリを見かけたらどうすればいいのか。伊丹市の担当者はサキシルの取材に対して、次のように注意を促した。
「まだ近隣で発見されたという報告はありませんが、家の庭にあるシート、植木鉢やプランターの下などに隠れる恐れがあります。そういった隠れやすい場所にアルゼンチンアリがいないか注意をしていただきたいです。場合によっては、家に上がってくる可能性もありますが、市販の殺虫剤でも十分効きます。慌てずに駆除してから、市役所に連絡していただけたら」
伊丹市と大阪国際空港によると、既に防除等の対策に着手しているという。今後は専門家の指導のもと、分布状況等の詳細な調査をしたうえで、防除計画を策定する予定。