「日本は、いろいろな面でガラバゴス化が進んでいる」との声をよく聞く。消費者向けビジネスの業界を取材していると、とくに欧米のトレンドとのかい離に気付く。
世界人口増加を背景に「たんぱく質危機」が到来すると言われている。解決策の一つとして環境負荷の低減も期待される「植物肉」が国際的に盛り上がりを見せている。日本の動きは、どうだろうか。スーパーに大豆ハンバーグなどが並び、飲食店で関連メニューも登場し始めた。しかし消費者は主に健康面のイメージにフォーカスしており、欧米の市場や消費者が抱く植物肉のコンセプトや、その意義に対する意識は欠落しているように思える。実際、海外に比べて市場成長率は低く、日本に植物たんぱくを導入しようとしている外資系企業の支社では、こうした市場の属性を本国に説明するのに頭を悩ませているようだ。
さて水不足が深刻な国・地域は少なくなく、その解決も世界的課題である。一方、日本では「水が貴重な資源」という認識は希薄だ。欧米の日用品・化粧品メーカーは、シャンプーなどのヘアケア製品で極力、水の使用量を減らす仕様の開発を急いでいる。だが、そうしたソリューションを持つ外資系の原料メーカーは「日本市場では響かないので日本の化粧品メーカーなどには参考情報程度にとどめている」という。
こういった状況をもたらした要因の一つは、品質至上主義だとの指摘がある。肉は肉であるべき。シャンプーは汚れを落としてツヤを与えるべき。消費者が完璧さを望み、提供側も応え続けた。逆も然りで、品質だけを見ながら双方絡み合って発展し、特異的な市場を形成した。市場が求めていないものを売るのは事業戦略として下策である。しかし環境面ではグローバルコンセンサスが問題になる。
一方、プラスチックの使用量を削減できる日用品や化粧品の詰め替えパウチは、日本の化粧品メーカーが発明したものだ。容器リサイクルの横断的な取り組みも活発化しており、日本流の優れたシステム構築が期待される。
ソリューション開発に技術革新が求められるのは言うまでもない。それと同じくらい今後の日本にとって重要な、もう一つの力がある。世界的課題に貢献できる技術資産が豊富な一方、足元のマーケットを体現する消費者が硬直的な日本。この“ねじれ”が国際社会にどう映るかを考えた時に、また日本の優れた技術や文化を海外に発信・波及する際に、そして何より消費者の意識変革を促すのに、最も求められるのはコミュニケーション力になるだろう。
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