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 脱着ボディといえば、一般には、フックアームなどによって荷台のコンテナを地上に積み降ろしする、産廃などの輸送に用いられる車両がよく知られている。

 いっぽう、その脱着ボディの範疇にあって、アウトリガーを有した自立式のコンテナによってボディの脱着を行なう方式を水平脱着ボディと呼ぶのだが、特にカーゴ系の車両についてはスワップボディと呼ぶことが一般的だ。

 2020年に国交省がスワップボディ車に対し補助金を設定したこともあり、これまで日本ではあまり普及していなかった同車だが、ここにきて積極的に取り入れる物流企業が増えてきている。

 あらためて、スワップボディとは何か? 2016年頃からいち早くスワップボディに着目してきたニトリホールディングスの物流部門を担うホームロジスティクスと、その協力会社で車両を導入した富士運輸に、注目のスワップボディの実際を取材した。

文・写真/フルロード編集部
*2017年3月発売「フルロード」第23号より


■スワップボディのメリットは?

 スワップボディはトレーラと同じようにコンテナを脱着することで、商品を積載したコンテナの輸送と空きコンテナへの商品の積み込みが同時並行で行なうことができるもの。

 コンテナの積み込み・積み降ろしを行なう人員が必要になるが、輸送量の増大をはじめ極めて効率的な運行ができるとともに、ドライバーの長時間の拘束も解消できるというメリットが生まれる。

 ホームロジスティクスの導入例では、ニトリ関東センター〜横浜センター間を従来、単車5台で行き来していたが、スワップボディ導入後、2台及び、ドライバーも2名で済むようになったという。

 また、コンテナの積み込み・積み降ろしはホームロジ側が担うことで、1週間の積み込み・積み降ろし作業に35時間、運行に20時間の合計55時間かかっていたところ、運行時間も減ってドライバーだけでいうと14時間で運用できるようになった。

 スワップボディを導入することはドライバー不足と労働環境の改善の上で大きなメリットになるだろう。

 ただ、ここで1つの疑問が湧いてくる。そういう使い方であれば、もっとポピュラーなドロップ&フックのトレーラでもいいのではないか?

 実はスワップボディの荷箱には自動車税がからず、車検もけん引免許も必要ない。もちろんトレーラではいずれも必要になり、特殊車両通行許可などの複雑な手続きもある。

 また、拠点間の輸送のみならず、店舗搬入での使用も考えた場合、トレーラでは入りにくい場所でも、普通の単車のように使用できるのもスワップボディならではだろう。

トレーラ同じように荷箱を脱着することができるスワップボディ

■日本トレクス製スワップボディの脱着方法は?

 では、実際の使用方法はどのように行なっているのだろうか。

 富士運輸が導入しているスワップボディは日本トレクス製で、その見た目は普通の単車のバン型車とさほど変わらない。ベースはGVW25tの8×4低床シャシーで、シャシーをアップダウンしてコンテナの抜き差しを行なうのでフルエアサス仕様となる。

 コンテナの脱着方法は、車両をバックでホーム着けしたら、まずはシャシーとコンテナを緊締していたツイストロックを解除し、そののちコンテナに左右3本ずつ計6本設けられたアウトリガーのロックを外し、手動で下ろしていく。

 このとき接地面の高さが均等でないと、コンテナの安定が確保できないので、高さが足りない箇所には敷板となるアウトリガーベースを噛ましていく。

 アウトリガーを6本ともしっかり自立させたら、シャシーのエアサスのエアを抜いて13〜15cmのクリアランスを確保しトラックをゆっくり前進。シャシーのフレーム上面にはガイドローラーが設けられているので、安定した脱着が可能である。

フレーム上部にある白いリング状の部品がガイドローラー

 ただこの際、ガイドローラーを逸脱しなければ、シャシーがアウトリガーに干渉しない仕組みになっているものの、トラックは真っ直ぐに前進させる必要がある。

 日本トレクスによると、脱着に際しては直線距離で30m以上のスペースが必要とし、勾配のあるところや不整地での脱着はできないとされている。物流センターなどの状況によっては使えないケースもあるのがデメリットと言える。

 また、コンテナを搭載する場合はこの逆の手順を踏むことになるが、やはりバックでガイドローラーをあわせるのは少々技術がいるようだ。

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