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仲麻呂はすぐに弁正(べんしょう)だと気付き、馬車の戸を開けて中に入れた。前に会った時よりずいぶん痩せて、黄ばんだ顔色をしている。赤土色の僧衣はさっぱりしたものだが、体から薬草のような苦みをおびた臭いが立ちのぼっていた。「久しいな。風采(ふうさい)も上がったではないか」弁正は仲麻呂…