みなさん、6月1日は何の日かご存知ですか?正解は「電波の日」。昭和25年(1950年)6月1日に電波法と放送法が施行され、電波の利用が広く認められるようになったことを記念するために設けられた日です。
そして72回目の電波の日を迎えた今、電波はわたしたちの生活に必要不可欠のものとなっています。スマホにPC、Bluetoothイヤホン…。そしてついに動き始めた10m級のワイヤレス給電技術。え?「すでにスマホをワイヤレスで充電してる」って?それ、スマホと充電器を接触させていますよね。今進んでいるのは、そんなレベルの話ではありません。部屋に入るだけでスマホが勝手に充電されていく、なんて日が近い将来やって来ますよ。
それでは、電波に関する最先端の研究を覗いてみましょう。前編は「電波とは何か?」をお話していきます。
ところで、電波って何?
電気と磁気の力で作り出される波を「電磁波」といいます。そして、1秒間に現れる電磁波の波の数(波が振動する数)が「周波数」です。単位は「ヘルツ(Hz)」。例えば100Hzだと、電磁波の波が1秒間に100回現れるということですね。
電磁波にはさまざまな周波数のものがあり、その中でわたしたちの生活に大きく関わる周波数3000GHz以下の電磁波を「電波」とよんでいます。電波に分類される電磁波は目に見えませんが、空中を伝わり、その伝わり方は周波数によって大きく異なるため、それに応じた用途に利用されています。
例えば周波数の小さい電波は雨の影響を受けにくく、遠くまで届きます。また、ビルや山などの障害物があっても、その後ろに回り込んで進むことが可能。ただし情報伝送容量が小さくなります。周波数の大きい電波はその逆です。
ラジオのAMとFMを比較してみるとわかりやすいかもしれませんね。AMのほうが周波数の小さい電波を利用しているため、AMは遠くまで伝わり山陰でも聞くことができます。ただし、音域が狭くノイズが多くなるため、トークを中心とした番組構成になります。対してFMは比べて周波数の大きい電波を利用しており、遠くまで伝わりにくいため、地域限定の放送に適しています。ただし音域が広くノイズに強いため、音楽を流す番組に適しています。
電子レンジだけではない「マイクロ波」
さて、先述のラジオより大きい周波数帯の電波(周波数300MHz〜300GHz程度)を「マイクロ波」といいます。みなさんも一度は聞いたことがあるでしょうか。マイクロ波と聞いて、電子レンジを思い浮かべたかたも多いかもしれませんね。電子レンジは、マイクロ波を照射することで食品に含まれる水分子が振動・回転し、水分子同士の摩擦によって食品が加熱されるというものです。
このように、マイクロ波は電子レンジに利用されていますが、それだけではありません。スマホ、テレビ、無線LAN、GPS、ETC、衛星放送、気象レーダー…これらすべて、マイクロ波!これほど用途が多岐にわたる周波数帯はありません。
そうそう。冒頭の10m級ワイヤレス給電に利用されるのもマイクロ波。電気をマイクロ波に変換して送電するのです。今年3月には、京都大学とパナソニック株式会社の共同研究により開発されたマイクロ波電力伝送システム「Enesphere(エネスフィア)」のプレリリースがありました。
一般的なアンテナは、人に近づけると人体に電磁波が吸収され、受電効率が低下しますが、開発された受電気アンテナは人が身につけた状態でも高効率に動作するため、見守り・健康管理用のバイタルセンサへの適用が期待されているとのこと。高齢化社会で大活躍する日がやってくるかもしれませんね。
また、ソフトバンクは半径10mの範囲で基地局設備から電力を送る実験を進めています。駅の構内を歩いているだけで、スマホが充電される!なんて日が来るのかもしれませんね。
そして、このマイクロ波を使った研究には、もっと壮大なものもあります。なんと、宇宙で太陽光発電をおこない、マイクロ波を使ってワイヤレスで地球に送電するというものです。果たして、そんなことは可能なのでしょうか。