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 アウディEV「e-tron」シリーズの第3弾として、日本導入が発表された「Q4 e-tron」はアウディEVのなかで、サイズや価格などあらゆる面でコンパクトなのが特徴といえる。そのため、輸入車ユーザー以外の熱い視線が注がれる注目のEVとなっている。

 すでにQ4の生産は開始されているが、日本での発売は今秋の予定となっており、現時点では日本仕様車は存在しない。ただ現在、全国のアウディ正規ディーラーで行われている試乗キャラバンで使われる海外仕様車が存在する。

 今回、なんとそのQ4に試乗することができた。実車に見て触れてわかったアウディEVの本命ともいえる「Q4 e-tron」についてレポートしよう。

文/大音安弘、写真/アウディジャパン

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■アウディEV戦略の要となる「Q4 e-tron」とは!?

 欧州を中心に近い将来EVシフトが宣言されている昨今、アウディもEVの積極的な展開に熱心な自動車メーカーのひとつ。2026年以降の新型車はすべてEVとする方針を発表しており、エンジン搭載車は、2025年以降に段階的に廃止していくとしている。

 日本でも、アウディEV「e-tron」シリーズの積極的な展開を行っており、これまでにただ第1弾のSUV「e-tron」シリーズと4ドアクーペ「e-tron GT」を投入ずみだ。しかし、これらの2車種はメイングレードの価格が1000万円クラスのモデルとなり、輸入車ユーザーにも手が伸ばしにくいのが現実だった。

 ところが、第3弾となる新型モデルの「Q4 e-tron」は、取り回しのいいコンパクトSUVであるのに加え、なんとシリーズの価格帯が599万~733万円までとコンパクトSUV「Q3」シリーズとミッドサイズSUV「Q5」シリーズの間に収まっており、エンジン車のセグメントにしっかりと組み込まれている。輸入車のコンパクトSUVからミッドサイズSUVを検討するユーザーの候補になるべく存在なのだ。

 その実現を可能としたのが、フォルクスワーゲングループでシェアするEV専用の新プラットフォーム「MEB」の採用とRWD化だ。グループ内の主力となるEVに使われるプラットフォームなので、開発費を抑えることができる。

 さらにアウディ自慢の4WDシステム「クワトロ」を非搭載とすることで、後輪側に1モーターを備えた後輪駆動とすることで、電動パワートレーンのコストも抑えている。しかし、この1モーターシステムは、航続距離の拡大にも有利なため、実にクレバーな考え方といえるだろう。

今秋の発売を予定しているアウディEVの第3弾が「Q4 e-tron」。価格とサイズを抑えている点も魅力的だ

■欧州仕様のQ4で細部をチェック

 まずはQ4 e-tronのスペックについて紹介しよう。同車には、スタンダードSUVとクーペSUV「スポーツバック」が用意されるが、試乗車は、前者の欧州仕様の「40 e-tron Sライン」だ。これは日本のグレード構成のトップモデルとなるものだ。異なるのは、一部装備の内容とステアリング位置だ。

 欧州仕様のスペックを紹介すると、全長4588×全幅1865×全高1632mmで、ホイールベースは2764mmと長め。モーター性能は最高出力150kW、最大トルク310Nmを発揮し、後輪のみを駆動する。

 フロア下に収まる駆動用リチウムイオンバッテリーは82kWhの大容量で、航続距離が516kmとされている。試乗車は、アウディスポーツの21インチアルミホイールが装備されていたが、日本仕様は非装着。ただし、標準車でも前後でタイヤサイズが異なる20インチホイールが装備される。

ほかのe-tronシリーズと比べると、エンジン車に近い雰囲気を放つ

 エクステリアデザインは、ひと目でアウディとわかるもの。スポーティで若々しいが、肉厚なボディがQ3よりも、上級車であることも感じさせる。開口部のないフロントグリルやマフラーのないリアテールが、EVであることを示すが、全体の雰囲気はほかのエンジン付きのアウディSUVと並べても違和感がなく、そこにアウディからの「今やEVは特別な存在ではない」というメッセージを感じる。

 インテリアの最大の特徴は、アウディお得意のデジタルなコックピットとなっている。他モデルとの大きな違いを挙げるとフローティングコンソールだろう。昨今のモデルでは、電制シフトと組みわせることで操作性の向上と収納スペースの拡大のために用いられる手法だ。

 そのセンターコンソールには、電制シフトが備わる。EV化の特徴としては、車内の広さが挙げられ、インテリア全長ではQ5を凌ぐほど。このため、後席も広々している。

 フロアもフラットなので、3名乗車という使い方もしやすい。さらにラゲッジスペースは、標準時で520Lを確保。スポーツバックでは、+15Lの535Lを確保するという。これもひとクラス上のQ5に迫るサイズとなっている。

運転席を中心としたコックピットデザインもスポーティ。使い勝手も上々だ

■EVの持ち味を活かしつつ、癖を抑えた走り

 試乗時間はかぎられていたが、都心で首都高と一般道を走ることができた。Q4のユニークな機構が、運転席に着座し、ブレーキペダルを踏むと自動的にイグニッションONの状態になること。後はシフトで「D」にセレクトすれば、即発進可能となる。これはEVのスマートさを表現したギミックといえる。

 もちろん、スタートボタンは用意されているので、旧来の方法を選択することも可能だが、慣れれば誰もが即スタンバイとなる新方式を選びたくなりそうだ。

 アウディEVとしての新たな取り組みのひとつが、アクセルオフでの減速力を強めるアウディ初のBモードを備えたことだ。さらにパドルシフトとの組み合わせで、回生ブレーキによる減速力を調整できるようにもなった。

 これまでのアウディEVは、原則として減速はドライバーがブレーキペダル操作で意図的に行うようにしていたため、アクセルオフの減速を使えるようになったことで、より運転がしやすくなった。

 もちろん、ワンペダル操作というほど回生ブレーキの効きは強くないが、下り坂や渋滞時でアクセルオフですばやく減速が開始されるのは、安全面でも心強いと感じた。

フロントセクションには、荷物は収まらない。重量物を車両中央に配置しているため、意外とスペースにゆとりがある

 運転して強く感じたのは、これまでのe-tronシリーズとは味付けが少し異なることだ。もちろん、アクセルを強く踏み込めば、EVらしい力強い加速も味わえるが、アクセルペダルを重めに設定するなど操作系のチューニングで、よりコントールがしやすくなっている。

 なので、道路の流れに合わせた加減速も自然に行える。ステアリングのアシスト量なども通常のエンジン車のアウディに近く、これならばエンジン車から乗り替えても運転中、あまりEVとエンジン車という違いを意識させないだろうと感じた。

 つまり、いい意味でEV感を薄めた味付けに仕上げているのがQ4 e-tronなのだ。これは普及型EVとしては重要なポイントであり、武器となるだろう。

 もうひとつの発見がRWD化のメリットだ。コストや重量の削減に加え、航続距離の拡大などのメリットが挙げられるが、今回の試乗で感じた最大の魅力はスムーズな加速と走りだ。

 これまでのe-tronは、すべてが前後を独立して駆動する2モーターの4WDシステムであったが、Q4 e-tronは後輪のみ。この駆動の差が明確に走りにも表れている。

 4WDは路面に吸い付くようなトラクションの高さが魅力だが、同時にオンザレールの間隔が強く、走りに軽快さが感じられなかった。ところが、RWDのQ4 e-tronは、いかなるシーンも動きがしなやか。

 新プラットフォーム「MEQ」の構成上、重量物も中心に寄せられているので、コーナリングを含めた走りの質感はフロントミドシップのFRのよう。さらに21インチという大径タイヤを履きながらも、乗り味にゴツゴツした感触はなく、比較的乗り心地もよかったことは好印象だった。

 新プラットフォームは、なかなかの堅牢さを誇るようだ。個人的には、Q4 e-tronは、「ザ・EV」というキャラこそ薄められているが、それこそ最大の美徳であり、これまで乗ったEVのなかでもトップクラスに並ぶ乗りやすさだった。

日本導入グレードとなる「40 e-tron」は、82kWhの駆動バッテリーを搭載し、一充電当たりの航続距離を516km(欧州値)と公表する

 アウディQ4 e-tronは、これから続々と登場するEVの未来をいち早く垣間見せてくれ、走りや乗り心地などの味付けもユーザーとの親和性を意識したものにシフトしていることを感じさせてくれた。

 ただ今回は、ごくかぎられた時間でのお付き合い。EVとしての実力を判断するには、より長い時間と様々な環境での試乗も必要だと思うが、多くの人の関心を惹きつけるのに、充分な素質をもったEVであることを実感できた。

 驚くべきは、国産SUVのEV「トヨタbZ4X」や「スバルソルテラ」とも競える価格であること。そして、ファミリーカーに適した居住性や積載性も備える点も同様だ。日産アリアのエントリーグレードは、より価格は抑えられているが、その分、搭載バッテリーもコンパクトだ。

 ひょっとすると、EV界の人気者で、より手頃になった「テスラモデル3」だって、うかうかしていられないかもしれない。そんな予感を覚えたファーストコンタクトであった。

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