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 前衆議院議員、立憲民主党の辻元清美氏(62)が5日、大阪市などで街頭演説を行った。安倍晋三元首相がロシアのプーチン大統領との北方領土交渉で「金だけ巻き上げられ…」「ええカモに…」などと詐欺被害にあったかのような話をした上で、安倍元首相をロシアに特使として送ることを提案した。今回の参院選に同党の比例代表で出馬予定の辻元氏であるが、公設秘書の給与を詐取した際に「ええカモに…」と思っていたのか問いたい人は少なくないと思われる。

■ウクライナ侵攻に言及

演説する辻元清美氏、右は蓮舫氏(辻元氏ツイッターから)

 この日の演説は立憲民主党の蓮舫前代表代行(54)とのコラボレーションの演説で、兵庫県と大阪府で「GW 青空トーク in 兵庫&大阪 with 蓮舫」として行われた。そのうち、大阪・梅田のヨドバシカメラ前の演説では、ウクライナ侵攻について言及。

 「ウラジーミル、ウラジーミルって言うて山口県の温泉にご招待して、温泉も入らずにプーチンに帰られた。お金だけ巻き上げられて、ええかもにされているんちゃいますかと」とした後で、「いまこそウラジーミルって言うて、プーチン大統領に戦争をやめろと言うてほしい。岸田総理、安倍元総理を特使としてモスクワに送ったらどうですか」と語ったとされる(日刊スポーツ電子版・辻元清美氏「プーチン大統領に戦争をやめろと言うてほしい」安倍元総理を特使に“提案”)。

 山口県の温泉に関する話は、2016年12月15日に山口県長門市の温泉旅館「大谷山荘」で会談したことを指している。この時の日露首脳会談では、北方領土における共同経済活動に関する交渉を進めることで合意し、両首脳は平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明したことが、プレス向け声明が出されている(内閣官房 領土主権対策企画調整室・北方領土2001年~2019年)。

 この首脳会談は北方領土返還に向け、両首脳の信頼関係構築の一環であったと思われる。もし、辻元氏がプーチン大統領が「お金だけ巻き上げようとしている」と考えていると思うのであれば、その時に「交渉のアプローチが間違っている」と言えばよい。

 確かに今から思えばプーチン大統領には領土を返還する意思がなかったのかもしれない。それならば、どのようなアプローチで交渉に臨めばいいのか、そこまで言ってこそ野党としての存在価値がある。そもそも辻元氏は北方領土返還について、どのようにすべきであると具体策を持ち合わせているのか。与党のやっていることに文句をつけるだけの野党は不要、それが自身が落選した昨年の総選挙から学んだことと思われるが、もはやそれも忘却の彼方なのかもしれない。

■辻元氏は「ええカモ」と考えて詐取したのか

 気になるのは辻元氏の言う「お金だけ巻き上げられて、ええかもにされているんちゃいますかと」と詐欺罪(刑法246条1項)に該当するような行為をロシアの国家元首が行なっていると考えること自体が、普通の人の発想からかけ離れているという点。

 日本国民の悲願である領土問題解決の重要な国家間の交渉の場で相手が1項詐欺と同様の行為をしようとしていると考えるのであれば、もはやまともな交渉などできないし、すべきではない。実際に詐欺を実行しようと考えている、あるいは考えたことがある人でなければできない発想と言っていい。

 辻元氏は公設秘書の給与を国から騙し取ったとされた詐欺事件で2004年に懲役2年の有罪判決を受けている。辻元氏に問いたいが、秘書の給与を流用する際、すなわち、詐取に及ぶ際に「(国から)お金だけ巻き上げよう」「(給与を支払う国を)ええカモにしてやろう」と思ったのか。そう考えたからこそ、この日の演説でそのようなことが言えたのではないかと思われても仕方がない。

 仮にプーチン大統領がそうした詐欺罪と同じような行為をしたとして、最も非難されるべきはそのような行為を行った者であるのは言うまでもない。辻元氏は自身が犯した詐欺罪において、最も悪いのは自身ではなく騙されて勤務実態のない者に給料を支払った国が間抜けで悪いとでも言うのであろうか。

 1項詐欺で懲役2年という前科を持つ者をことさら貶める気はないが、これだけ重大な犯罪を犯した者が、自らが犯した犯罪の被害者が悪いのと同様の話をすれば、さすがに兵庫や大阪の有権者から「全く反省していない」と見放されるのではないか。それで自分を国会議員にしてくださいと有権者にアピールできていると考えているとしたら、また、落選する可能性は十分にあると忠告しておこう。

■本当に戦争を止めたいなら

ウクライナ支援の集会に参加した辻元清美氏(同氏ツイッターから)

 ウクライナ侵攻で最も非難されるべきはロシアであり、プーチン大統領である。国会議員になりたいのなら、まず、ロシアの侵攻をどう止め、ウクライナの人々に平和をもたらすことができるかを論ずべき。新宿で「No War」とプラカードを掲げても大した効果は期待できず、所詮は自己満足に過ぎない(参照・辻元氏ウクライナ政治利用 若者よ騙されるな

 安倍元首相を特使として派遣というのをどこまで本気で言っているのか分からないが、辻元氏に言わせれば、カモにされた人を特使として派遣するわけで、そうであれば当然大した期待などできない。大した期待ができないことを、なぜ、主張するのか。

 本当に戦争をやめさせることを考えているなら、ウクライナの人々の安全を願っているのなら、たとえばNATO(北大西洋条約機構)の介入や、ウクライナに防弾チョッキだけでなく、殺傷能力のある武器を送れるようにするなどを呼びかけた方がよほど効果が期待できる。

 そうした悲劇・惨劇を回避するための方法を主張せずに、安倍憎しで「お前がモスクワに行ってこい」といった類の反安倍票を集めようとしているだけの主張をしているから、多くの国民の反発を受けるということにいい加減、気付いたらどうかと思う。

■「辻元節さく裂」と書くメディア

 そして、言わなければならないのは、こうした主張を「『辻元節』をさく裂させた。」などと持ち上げて書く日刊スポーツというメディアのレベルの低さである。

 所詮はスポーツ新聞、読んで楽しんでもらえばいいといった程度の意識で、報道の責務など考えたこともない記者が書いたと思われるが、そのような姿勢がスポーツ新聞全体の劇的な売上減少に繋がっていることを少しは考えた方がいい。