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<p>特殊詐欺に悪用される転売口座 ベトナム人名義なぜ多い</p><p>特殊詐欺に悪用される転売口座 ベトナム人名義なぜ多い 技能実習や留学のために来日した若者らが、帰国する際に売却するケースが多いという。</p><p>高齢者らに電話をかけ、「還付金」などの名目で現金を振り込ませ、だまし取る特殊詐欺。多額の被害を生んでいるこの悪質な犯罪に欠かせないのが、他人名義の架空口座だ。…</p><p>口座の売却を呼び掛けているとみられるフェイスブックの投稿。「各種通帳、カードを買い取ります」などと書かれている(一部画像を加工しています) 高齢者らに電話をかけ、「還付金」などの名目で現金を振り込ませ、だまし取る特殊詐欺。多額の被害を生んでいるこの悪質な犯罪に欠かせないのが、他人名義の架空口座だ。最近は外国人が開設した口座が使われることが増え、中でもベトナム人が多数を占めている。技能実習や留学のために来日した若者らが、帰国する際に売却するケースが多いという。「この先使うことのない口座なのだから売ってしまおう」という考えがあるのだろうが、口座の譲り渡しは「犯罪収益移転防止法」に違反する犯罪行為。警察当局は警戒を強めるとともに、注意を呼びかけている。 振込先はベトナム人 昨年10月、兵庫県尼崎市の60代女性宅に、「保険健康センター」の職員を名乗る男から電話がかかってきた。男は「近くのATMに行ってください。そこで指示します」と続け、女性は指示に従ってATMを操作し、2回で計100万円を振り込んだ。 すぐに詐欺だと気付き警察に相談したが、現金はすでに引き出された後。うち一つの口座の名義は外国人とみられる名前で、違和感を覚えてもおかしくなかったが、焦っていた女性が気付くことはなかった。 兵庫県警は今年1月、電子計算機使用詐欺容疑で、現金引き出し役「出し子」の男(52)を逮捕。男が出し子として関与したほかの事件の2口座もベトナム人名義の口座だった。 数万円で取引される口座 不審な金の動きがあるとして、捜査当局が凍結する銀行口座は毎年数千件にのぼるとされる。捜査関係者によると、凍結された口座はここ数年、ベトナム人名義のものが急増。平成28年の時点では、ベトナム人名義の口座は全体の1%未満だったが、過去3年間は、全体の2割前後で推移しているという。 「各種通帳、カードを買い取ります。地方のものはより高く。東京なら直接取引。郵送もOK」 バイトの募集や不要品の売買のために使われるベトナム語の交流サイト(SNS)には、こんな書き込みがある。ここで取引される口座の多くは留学生や技能実習生として滞在していたベトナム人が、帰国する際に不要となった口座を転売したものだという。相場は1件につき1万~6万円。監視の目が届きにくい地方銀行の方が価値が高いとされ、「地方のものはより高く」というわけだ。 ある捜査関係者は「昔はベトナム人同士で、在留期限が切れたなどの理由で口座を作れない人に譲り渡すことが多かったが、近年では、反社会的勢力に流れ、特殊詐欺に使用されるケースが増えている」と指摘。令和2年6月に神奈川県警が犯罪収益移転防止法違反容疑で、ベトナム人の男3人を逮捕した事件では、都内のアジトから、計636枚のキャッシュカードが押収された。先の捜査関係者によると、「小遣い稼ぎ」感覚で大きな罪の意識もなく、売却してしまう場合も多いという。 「犯罪者になってほしくない」 平成23年時点で約4万4千人だった在留ベトナム人は、昨年約43万人まで増えた。数の上では約72万人の中国人より少ないが、永住者や定住者が比較的多い中国人に対し、ベトナム人は帰国を前提とした実習生などが多く、口座転売が相次ぐ背景には、こうした事情も絡んでいるとみられる。 兵庫県警は昨年11月、「ベトナム人のみなさんへ」と題したチラシを作成。ベトナム人を雇用している企業や学校で配布し、啓発活動を強化している。チラシには「自分が作った口座や契約した携帯電話等を他人に譲ることは犯罪です」と警鐘を鳴らす文言がベトナム語で書かれている。 ほとんどのベトナム人は誠実に勉学や仕事に取り組んでいる。「夢を持って来た日本で、犯罪の被害者にも加害者にもなってほしくない」。捜査関係者はそう強調した。(木津悠介)</p>