今回の乗りバスレポートは都営バスの「里22」系統だ。鉄道連絡と地元の足として活躍する里22に乗車した。路線図は画像ギャラリーに収録しているので合わせてご覧いただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
写真:小野寺利右
日暮里駅前から乗車
日暮里駅前は小さな都営バスのバスターミルがあり、狭い場所だが鉄道駅から離れていないので乗り換えには便利だ。里22系統は日暮里駅前から亀戸駅前を結ぶ路線で、比較的本数も乗客も多い路線だ。担当は南千住営業所。
同じ日暮里駅前を発着する系統で錦糸町駅前に向かう都08系統とはJRの駅一つ分しか行先は違わないが、経路が被ることはほとんどない路線だ。日暮里は鉄道路線密集地のひとつで、JR山手線と京浜東北線、常磐線の他に京成本線とスカイアクセス線の電車が停車し、さらに日暮里舎人ライナーが発車する。
高架ながら多くの線路が日暮里から散っていくので乗降は多く、鉄道空白地帯へのバスの便も重要だ。
日暮里駅前を出た里22系統は市街地を少し走り最初の鉄道接続である三河島駅前に停車する。日暮里駅以外でも常磐線から直接乗り換えができる。北に向かっていた里22系統は明治通りに入り、ここから亀戸駅まではひたすら明治通りを走る。
歴史的背景が濃すぎる泪橋
実際にはほとんど見えないが、荒川区役所前あたりから大関横丁付近までは都電荒川線と並走している。明治通りは方角を変えるが、そのまま走ると泪橋に停車する。担当の南千住営業所はここから少し入った南千住駅の前にある。
この泪橋は歴史的背景が濃すぎる地名で、現在は泪橋という橋は当地には現存しない。橋が架かる川すら見当たらないが、実際には暗渠になっている。
ここに流れている思川に架かっていた橋が泪橋だった。読んで字のごとく悲しい涙を流すようなイメージがあるがその通りで、この橋を渡った先(現在の南千住駅の北あたり)に小塚原刑場があり、死罪となった人との今生の別れの橋であったためにその名がついた。
同じ名称の橋は東海道沿いの鈴ヶ森刑場に向かう道中にもあり、ここには実際には川も橋も現存するが、泪橋の名称は変えられてしまった。時代劇に出てきたときには現存するこの場所だと思っていただければよい。
亀戸駅前は鉄道駅のよう
泪橋を出ると急に工業団地のような雰囲気になり、すぐに隅田川を白髭橋で渡り荒川区から墨田区に入る。京成曳舟駅付近の高架をくぐると直進は丸八通りだが、明治通りは右に曲がるので里22系統も右折して明治通りをトレースする。
文花二丁目で東武亀戸線の小村井駅と接続し、北十間川を渡ると江東区に入る。香取神社の前を通り過ぎるとラストスパートだ。日祝日の歩行者天国実施時間中は経路が変わる。亀戸駅前は都営バスのターミナルとしては大きな方でバスホーム構成は俯瞰で見ると鉄道駅のようだ。
明治通りを本線とすれば北向き、南向きの通りに乗り場が並び、さらに南方向には待避線のようにもう1レーンが、北方向にはさらに3レーンのホームが並ぶ。その中で折り返し便はホームに付け降車扱いをし、待機となる便は降車専用バス停で降車扱いをし待機する。
四神のひとつが鎮座する亀戸
亀戸駅前公園にはトイレも喫煙所もあり折り返し運転士が休憩をしている姿を見かける。この公園の噴水には不気味な羽のある亀3匹が重なっている像がある。これは四神のひとつである玄武であり、江東区には東西南北を守る四神の像がある。
ちなみに残る3つは、東大島駅前広場(大島口の都営バス東大島駅前)に青龍が、豊洲シビックセンターに白虎が、そして行きにくいが若洲公園に朱雀が置かれていて、江東区を神獣が守るということになっている。
歴史的背景から神獣まで盛りだくさん!
四神は中国の神話に登場する神獣なので現在ではあまりなじみがないかもしれないが、江戸時代には信仰や今でいう風水の対象になっていたようで、落語の演目である百川(ももかわ)に登場する。
演者によっては四神の解説をしてくれるが、あらかじめ知って聞くとさらに面白い笑い話なので江東区の四神があるバス停付近を通る際にはスマホででも聞いてみてはいかがだろうか。
歴史的背景の濃すぎる場所から神獣まで知って乗れば楽しい里22系統だった。乗車時間は50分程度なので乗りバスで一度お試しを!
投稿 都営バス「里22」系統は超便利! 鉄道空白区間を網羅する貴重な路線だった は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。