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2台試乗してみてわかった! ランクル300とレクサスLXの「質の違い」って何よ?

 2021年10月14日にワールドプレミアとなった新型レクサスLX。すでに11月25日から先行予約が開始されていたが、今年3月にようやく試乗車が出揃った。

 本企画では、先に登場していたランドクルーザー300との比較を行い、敢えてLXを買う意味はあるのかどうか検証してみた! 値段どおり、クラス上の存在になることはできているか!?

文/石川真禧照
写真/レクサス、ベストカーWEB編集部

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■ランクル300とレクサスLX、新型になってどう差別化されたのか?

 昨年8月に発表されたトヨタのフラッグシップSUV、「ランドクルーザー」は、半導体不足やコロナ禍などが重なり、ようやくデリバリーが開始された。

 その時とほぼ同じ2022年1月にはレクサスが、「LX」を発表した。こちらも生産現場の混乱などで、なかなか実車が登場しなかったが、ようやく2022年3月になり、試乗車が揃った。

 ランドクルーザーとLXは先代も発売されていたが、「LX」は「ランドクルーザー」をベースにレクサスエムブレムを付け、内外装のクォリティを向上させ、差別化を図った程度のモデルだった。

 今回はどのような差別化が図られたのか、興味深々。車両本体価格もランドクルーザーが510万円から800万円という価格帯に対し、LXは1250万円から1800万円と、ほぼ2倍以上の価格差なのだ。さすがにこの価格差でバッジの違いや素材の違いだけでは、ユーザーも納得もしないだろう。

■LXは高級SUVとしての立ち位置を明確にした!

 そんなことを心のなかに思いながら、レクサスLXに試乗した。結論を先に書いてしまうと、2車はまったく別のクルマだった。もちろん、LXのほうが完成度が高い。

レクサスLX600OFFROAD。レクサスブランドにふさわしい高級SUVとして君臨できるか

 おそらくランクルを注文したユーザーは、価格差が大きいので、レクサス車にはあまり興味がないから、LXの存在は気にはなるかもしれないが、購入の対象にはなっていないハズ。そのほうが幸せかもしれない。

 しかし、その価格差も納得できるくらいに新型LXは高級SUVに仕上がっている。

 新型LXはV6、DOHC、ツインターボガソリンエンジンを搭載している。これはランクルと同じ。ランクルに用意されているV6、DOHCツインターボディーゼルは選べない。

■ランクルはあくまでもスポーティ路線

 LXに試乗する前に、ガソリンエンジンの「GRスポーツ」と、ディーゼルの「ZX」にも試乗した。

 その時の印象だが、ガソリンのほうは3000回転でもエンジン音は伝わるが、ノイジーな音質ではなかった。アクセルレスポンスも1800回転からタイムラグなく反応し、スポーティ感は充分。

スポーティなランクル300。GR SPORTは機能面でノーマルに対し、足回りが強化されている

 10速ATはパドルシフトレバーはないが、手許のシフトレバーをMモードにシフトすれば、マニュアルシフトも可能。0-100km/h加速は、Dレンジで6秒台を出した。この時、V6エンジンは5500回転まで上昇し、シフトアップした。

 GRスポーツは、世界のオフロードラリー参戦のベース車両としてチューンされている。そのために足回りは強化され、電子制御でスタビライザー効果を変化させるE-KDSSというシステムが世界で初めて実用化された。

 これは前後のスタビライザーを独立して自動で電子制御する技術。その効果か、モードセレクトを「ノーマル」のままでも街中から高速までやや重めの操舵力と強めの直進性で走らせる。乗り心地は細かいゴツゴツ感と若干の横揺れが発生していた。

■素のランクルにはハテナが浮かぶ

 気になったのはノーマル仕様のランクルだ。こちらはディーゼル仕様だったので動力性能は別として、ノーマルモードでは路面の上下に対しての動きが大きく、ブレーキング時のノーズダイブも大きかった。さらにブレーキも踏力を要し、しかも効きが甘めだった。

 特に高速からの減速では、ヒヤッとさせられることが多かった。タイヤもGRスポーツは18インチを装着していたのに対し、ノーマル仕様は20インチを装着。明らかにオーバークォリティと思った。

 と、まぁ、最初に出たランクル300には、期待も大きかっただけに、ちょっとガッカリという部分も多かったのは事実。それだけにレクサスLXの出来栄えが気になった。

■いざ、LXの試乗

 試乗は「OFFROAD」。今回のLXから設定されたグレードで、悪路走破性を高めるためにフロント、センター、リアの3カ所にデフロックを標準装備した。タイヤは265/65R18と、偏平率の高いタイヤで悪路での路面追従性を高めている。ランクルのGRスポーツほどモータースポーツ寄りではないが、レクサスブランドにふさわしいスポーツモデルといってよいだろう。

 外観もフロントグリルやホイール、ホイールアーチモールなどはブラック/マットグレーを用い、力強さと迫力を強調している。ノーマル仕様の光ったフロントグリルも豪華で迫力だが、ブラックブライト塗装もおしゃれだ。

 V6、3.4L(カタログやプレスリリースには3.5Lと書かれているが、排気量は3444ccなので3.4Lのハズ。これはLXもランクルも同じ。でもランクルのディーゼルは3345ccで、3.3Lと表記されている。?なのだ)ガソリンエンジンのフィーリングだが、1800回転あたりからトルクが盛り上がるのはランクルと同じ。しかし、4000回転をオーバーしても音の侵入は少ない。遮音効果がかなり高いのだ。

■伊達ではない高級車としての静粛性

 プレスリリースを読むと、フロントガラスを厚くするなどの対策も行なわれている。レクサスブランド最厚の5.76mm厚のガラスだそうだ。それだけではなく、ボディ要所要所に防音材を配している。 

 カタログで車両重量を調べると、ランクルよりも90kgほど重い。そのなかには大量の防音、吸音材が入っているはずだ。

 この車両増や18インチタイヤ装着だけではないのだが、乗り心地もランクルとはかなり違う。まず、路面からのゴツゴツとした振動がない。路面の凹凸通過の際の上下動も抑えられている。コーナーでのロールもランクルほどに大きくない。

 ドライブモードを切り換え、スポーツモードにしても、ランクルはロールを抑えきれていなかったが、LXは違う。

 レクサスのエンジニア陣は、ESやNXあたりからサスペンションチューニングの「何か」を体得したに違いない。それほどにLXの足回りはしっかりとしている。

 ブレーキも同じだ。ランクルではややもすると頼りなさを感じた制動力は、LXでは充分に力を発揮していた。高速からだけでなく、低速域でもノーズダイブは抑えられ、運転者以外の乗員からの不満の声は聞かれなかった。

 加速性能も0-100km/hを6秒台前半で走り切った。充分に速い。

■レクサスLXは世界でもトップレベルの高級大型SUVだ!

 LXをランクルとだけ比較しても、車格、価格が違う、という声も聞こえてきそうだ。 

 LXのライバルは輸入車ならメルセデスベンツGLS、BMW X7、ポルシェカイエン、アウディRS Q8、レンジローバースポーツなどが車格や価格的に競合するモデル。

 どのモデルにも試乗したことはあるが、ハンドリングや動力性能でかなわないモデルは多いものの、安全性能、快適性能、扱いやすさなではLXが勝っているモデルもある。さらに現実的にはリセールバリューも考慮すれば、LXの優位性はゆるがない。

 新型レクサスLXは世界でもトップレベルの高級大型SUVだ。ただし、今レクサスディーラーに行き、注文しても納期や納車の予定は教えてもらえないだろう。


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