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 ターボ+FRというパッケージで生まれ変わる新型フェアレディZ。約524万円という価格で406psを発揮するグレードを設定している。6速MTを搭載しており、価格も性能も魅力的だと言えるだろう。

 今回はそんなフェアレディZの登場で思い出す、かつて試乗しその強烈な走りに驚いたのハイパワーFR車について振り返っていきたい。

文/岡本幸一郎
写真/NISSAN、TOYOTA、CHEVROLET、ALPINA

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■美しく迫力あるエキゾーストサウンドに惚れる!「トヨタ スープラ(A70)」

 フェアレディZときたら、最もガチンコのライバルといえるトヨタ スープラから振り返ってみたい。

 「THE SPORTS OF TOYOTA」のキャッチコピーを掲げ、特徴的なルックスをまとい中身も現代的なスポーツカーとして洗練されていたA80ももちろん印象的だったが、筆者にとってもっとも印象に残っているのは、1990年に登場したA70の後期型でラインアップに加わった「ターボR」だ。

当時のトヨタ技術陣の高性能車開発への情熱と技術が、これでもかと注ぎ込まれたスープラA70

 登場時のベストカー本誌でも「待ってろよ、GT-R」という挑戦的なキャッチがつけられていたのを思い出す。

 ついに280psになった1JZは、1988年に500台が限定販売された3.0リッターで270psの「ターボA」よりも、2.5リッターながらだいぶ速かった。低速トルクが太くてレスポンスもビンビン! 踏み込んだときの吹け上がりも最高! 美しく迫力あるエキゾーストサウンドは、2JZを積むA80よりも官能的で好みだった。

 ターボRはガチガチのビルシュタインとトルセンLSDが組み合わされていて、ちょっと強めに踏むと簡単に横を向く。それがまた楽しかった。筆者も若い頃に愛車にしていた時期があるのだが、このクルマには本当に鍛えられたと思っている。

■燃費の悪さは愛でカバー? 至高のロータリーエンジンを味わう「マツダ RX-7」

 Zにスープラときたら、もちろんRX-7だ。ZやスープラはGT的な性格が強いところ、RX-7はピュアスポーツぶりが際立っていた。低く美しいスタイリングも、独特のエンジンフィールも、バランスのよいハンドリングも、すべては世界で唯一、ロータリーを積むからこそ実現したものであったことはいうまでもない。

 あの世界観にハマる人が続出していたのは、それだけ魅力があったからに違いない。

 中でも印象的だったのは、FD3Sで中期型と呼ばれる4型で、CPUの制御が8ビットから16ビットになった時に、それまでとは回転フィールの緻密さが別物になったことだ。10ps増の265psになった最高出力の数値以上に乗り味は大きく変わっていた。

 続く後期型と呼ばれる5型ではついに280psに達し、デザインも新しくなり、さらに6型ではターボチャージャーの軸受けにアブレダブルシールを採用したことが効いてレスポンスが向上した。このとき足まわりやABSも進化して、ブレーキング時の姿勢がよくなり安定感が飛躍的に高まっていたことも覚えている。

 実は筆者、70スープラを2台乗ったあとに、FD3Sを2型、4型、6型と乗り継いで、そのあたりの進化のほどを如実に感じたものだ。あまり変わり映えしないようにいわれることもあったFD3Sだが、中身は大きく進化していることを強調しておきたい。

 ただし、燃費の悪さに閉口することたびたびだったのは否めず。当時は独身だったので、つぎ込めばなんとかなったけど……(苦笑)。

■アメリカンマッスルここに! 「シボレー コルベット」

 一方で輸入車にも目を向けると、真っ先に思い浮かんだのは、シボレー C6コルベットのモデル名に「Z」のつく速い系だ。個人的にも大好きなコルベットには、C4以降の大半のモデルに乗ったことがあるが、中でもとくに印象に残っているのが、C6のZO6とZR1だ。

レースフィールドで培った技術を惜しげもなく投入した、シボレーコルベット Z06

 標準モデルが6.0リッターで404ps、55.6㎏mのところ、7.0リッターに拡大され、ル・マンを戦ったレーシングカーの技術を盛り込んだ特別なV8を積むZ06は511psと64.9㎏mを、さらに6.2リッターV8にスーパーチャージャーを搭載した最強版のZR1は、当時としては異例の648psと83.50kgmというとてつもないスペックを誇った。

 実のところC6について、最初は否定的な気持ちが強かった。あんなに似合っていたリトラクタブルヘッドライトをやめたことにもガッカリした上に、全長が短くなったのにホイールベースが長くなって見た目のバランス的にもC5のほうがカッコよかったな~と感じていたからだ。

 ところが、「Z」のつく特別版になるとぜんぜん雰囲気が違って、ワイドボディにするとC6のプロポーションが絶妙によく似合う。

 走りのほうも、いざ乗ってみてシビレた! 7.0リッターもの大排気量のV8が、VTECのように軽々と吹け上がるZ06の走りっぷりにホレボレ! それはもう気持ちイイのなんの。コーナリングもワイドトレッドとファットなタイヤが効いて、まさしく地を這うように安定して走れたことも印象的だった。

 それから約2年後に登場したZR1は、さらにスゴかった。ただでさえ大排気量でパワフルなV8に、スーパーチャージャーをドッキングしたのだから、その速さたるや、圧倒的という言葉がピッタリ! 恐るべき加速力だ。でも、個人的には自然吸気ならではの吹け上がりが美味しいZO6のほうが好みだったかも……。

 C7にもZR1は存在したものの日本には正規輸入されなかったので、ドライブしたことはないのだが、C6のZR1をはるかにしのぐ766psを発揮したというから、さぞかし凄かったことだろう。乗ってみたかったな~…。

■もりもりトルクで車体を押し出す! 「アルピナ B8 4.6」

 そして、最近では高性能版のxDrive(AWD)が当たり前になってきたけれど、FRといえばBMWに触れないワケにはいくまい。BMW車については、プライベートで所有したクルマを含め、これまで数々のモデルをドライブする機会に恵まれてきたのだが、もっとも印象に残っているのはズバリ、アルピナのB8 4.6だ。

ベースモデルにさまざまな改良を施してV8をねじ込んだ、アルピナ B8 4.6

 ご存じない方も多いだろうが、ざっくりいうと、E36型3シリーズに5シリーズ用のV8をブチ込んだというクルマだ。

 アルピナがチューニングしたV8の333psで48.0㎏mというスペックは、いまの時代では驚くほどの数字ではないとはいえ、下からモリモリとトルクがわきあがり、E36のコンパクトな車体をグッと力強く押し出す感覚は、ほかでは味わったことのないもの。E36なのにV8サウンドというギャップも新鮮だった。

 しかも、足まわりがしなやかで乗り心地がよく、極めて上質なドライブフィールに仕上がっていることにも感心したものだ。アルピナが身上としている、快適性を損なうことなく目的地までもっとも短時間で到着できるクルマを提供するというコンセプトが息づいていることがうかがえた。

 全生産台数はクーペとリムジンをあわせて200台あまりで、日本に上陸したのは30台あまり。中でもクーペはわずか数台とか。そんな貴重なクルマに乗れたのは幸運だったと思う。

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