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オンラインで注文完結!! アイオニック5の魅力&ヒョンデのビジネス戦略

 2022年2月、韓国ヒョンデ自動車が、12年ぶりに日本市場へ復活を果たした。販売店は持たず、オンライン販売を行い、電気自動車「アイオニック5(IONIQ5)」、燃料電池自動車「ネクソ(NEXO)」の2車種のみとなる。

 SNS上で話題になっている「アイオニック5(IONIQ5)」と、ヒョンデ日本市場におけるビジネス戦略を解説。ヒョンデ、そしてアイオニック5は日本で成功するのか? それとも? 

文/御堀直嗣、写真/Hyundai、奥隅圭之

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12年ぶりにカムバック!! 「ヒョンデ」のビジネス展開はネットのみ!?

日本市場に投入される燃料電池車のNEXO(ネッソ)。価格は776万8300円

 2022年2月に、韓国の大手自動車メーカーであるヒョンデ(現代)が、12年ぶりに日本市場に再上陸し、再挑戦すると発表した。そのとき、勝算はいかにと疑問を抱いたのは正直なところだ。だが、取材を進め、試乗をしていくうちに、未来への可能性を見るようになった。

 2月の記者会見で、張在勲(チャン・ジェフン)ヒョンデ・モーター・カンパニー社長兼CEOは、「日本は再挑戦すべき地域」と語り、理由として脱二酸化炭素の意識が高まったこと、自分に合った人生設計をする多様性が進んでいることを挙げた。そして、韓国の「迷途知返」ということわざ(一度道を誤ったあとに正しい道に戻って改める)を使い、今回「正しい道に戻って改める」と述べたのである。

 日本市場に際しては、販売店網を持たずネット上で完結する販売/取り扱い車種は電気自動車(EV=IONIQ5)と燃料電池車(FCV=NEXO)に絞る/所有だけでなく共同利用(カーシェアリング)の提供の3つを掲げた。

 しかしその説明だけでは、まだ釈然としないものが残った。さらに取材を進めると、EVとFCV、すなわちモーター駆動車両しか導入しないことが起点であることがより明らかになった。

米国「テスラ」の存在が日本市場での成功のカギとなるか

 米国のテスラを見れば納得できるのだが、EVは、壊れにくく、日常的な点検整備において、オイル交換がなく、ブレーキパッドの減りも少ないなど、走行上エンジン車で不可欠な整備項目が減る。これによって、テスラは米国において出張による整備や修理を提供している。

 工具や部品を車載したパネルトラックを用意し、所有者のところへ行って作業を行うのだ。路上での故障にもこの手法で対処する。そこには、広大なアメリカ大陸という地理的条件もあるだろう。

 新たな保守点検の仕方ができるのも、油脂や液体といった交換や継ぎ足しの必要な機構がなかったり限られたりするため、工具や部品を整えた整備工場でなくても済むからだ。

 また、最新の仕様をオンラインで追加設定できることが、テスラ以降、他の自動車メーカーでも進められているが、ことにEVであればプログラムの更新などによってさまざまな機能を最新仕様に進化させることが可能になり、それはすなわち、故障などの症状もメーカー側で把握できることを意味する。

 所有者がまだ気付かない不具合の兆候も、先にメーカー側で察知し、メール等で案内し、出張整備で対応することにより、不具合で困る前に処置することさえ不可能ではなくなるのである。

 従来、販売店網に併設された整備工場に車両を持ち込むことで点検や整備、あるいは修理をしていたが、顧客の車庫などでそれらの対処ができれば、販売店網という投資が不要になる。販売台数が伸びるに従い、出張サービスなどの対応を増やせば済むことになる。

 先に投資が必要なのではなく、販売動向に応じた投資を考えればよい。これは、事業者にとって不安材料を減らしながら、顧客への浸透をはかれる、一挙両得の事業展開となる。

 ヒョンデも、遠隔での診断機能に加え、出張での整備と並行して、特約工場での整備も行えるように展開をはじめている。日本市場へ再上陸する決断ができたのも、EVならではということだ。FCVも品揃えはあるが、主力はEVであるようだ。

 それなら、テスラという先達が実績を残しているので、その手法が大きな参考になっているはずだ。そして再上陸成功の可能性も生まれる。

アイオニック5は意外とお手ごろ価格? ネット一括でワクワクな体験ができる!!

電気自動車のIONIQ5(アイオニック5)。価格は479万~589万円

 販売はすべてオンラインとなる。販売店網を持たないのだから当然だろう。そして、既存の自動車メーカーも、EV導入に合わせてオンライン受注の模索をはじめている。

 支払方法に、残価設定による分割や、均等支払いのサブスクリプションが浸透しだしているが、その利点は、個別の値引き交渉をせずに済むことだ。したがって、すべての顧客に均等な条件での販売が可能になり、自動車メーカー側も収益の見通しを立てやすくなる。

 販売奨励金などのような手数料を考えず車両価格を設定できるので、より適正な価格での販売になり、それはまた消費者にも、損のない買い物となる可能性を生み出す。

 消費者にとっては、サブスクリプションや残価設定分割払いであれば、過去数十年所得が伸びない現代社会において、暮らしのなかでの金銭のやりくりを検討しやすくする。もちろん、分割や均等支払いでなく、現金一括購入という方法もある。

 IONIQ5も、現金またはクレジットカード、分割払い、リースの選択肢を設け、対応している。ネット上での詳細見積もりに加え、購入相談の申し込みや、試乗(1時間から1時間半)の予約、そのうえでの注文という段階を踏んだ手続きが可能だ。

 IONIQ5を体験するという点では、注文手続きの流れのなかで申し込めるほか、個人が所有するクルマを個別に借りて運転するAnyca(エニカ)と呼ばれるサービスが2015年からDeNA SOMPO Mobilityによってはじめられており、そこにIONIQ5も加わった。個人ではなくエニカが所有するIONIQ5をカーシェアリングの要領で試乗体験できるのだ。開始以来、途切れることなく試乗依頼が入っているとヒョンデはいう。

 エニカによれば、15年以来の利用者の約6割が20歳代で、そのうち85%が体験をきっかけにクルマを持ってみたいという気持ちになっているとのことだ。すなわち、12年前に日本に上陸した際のヒョンデのことを知らない世代が、エニカを通じてIONIQ5の存在を知り、持ってみたい思いに駆られる可能性がある。

 ネット販売や、カーシェアリングを通じた接点の摸索というヒョンデの施策は、これから花開くであろうEV時代をけん引するより若い世代との出会いや親和性を秘めた戦略ということができるのではないか。実際、IONIQ5購入の年齢層は、30~50歳代と幅広いようだ。

 それでも、IONIQ5が商品として魅力が不足すれば、拡販への期待は薄れてしまう。その点については、試乗をするほどに魅了される魅力をIONIQ5は備えていると感じている。

 まず販売価格は、479万~589万円で、近年のEVのSUV(スポーツ多目的車)の価格帯にそった設定だ。このうち、廉価な479万円は車載バッテリー容量がやや少ない58kWhであり、より容量が大きい72.6kWhになると519万円からとなる。それでも、もっとも廉価な車種でも一充電走行距離はWLTCで498kmである。

 具体的に競合他社の値段を見ていくと、日産アリアは539万円から790万円で、バッテリー容量は66kWhと91kWhの2種類だ。66kWhの2WDで、一充電走行距離はWLTCで470kmである。

 トヨタ初のEVであるbZ4Xは、600万~650万円で、車種は一種類のみだが2WDか4WDの違いがある。バッテリー容量は71.4kWhで、一充電走行距離はWLTCで559kmである。

 こうしてみると、IONIQ5がかなり手ごろな価格設定であることがわかる。そしてバッテリー容量が少ない廉価な仕様でも、一充電走行距離がWLTCで498kmあれば、通常の用途で充分に安心して使える距離だ。

 そのうえで、IONIQ5の廉価な車種は2WDなのだが、アリアやbZ4Xが前輪駆動(FWD)であるのに対し、IONIQ5は後輪駆動(RWD)である。FWDかRWDであるかが、通常の運転ではそれほど大きな差はないにしても、RWDの運転感覚はより自然で心躍らせるものがあるのは事実だろう。

 以上を総合すると、かつての経験を踏まえたうえで、EVに的を絞るかたちで日本市場に再上陸したヒョンデのIONIQ5は、EVの購入を真剣に考える人にとって大きな選択肢となる素養を備えていると思う。実際、試乗をした感触においても、気持ちをそそる魅力を備えていた。

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