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AMDではZen4アーキテクチャーではTSMC 5nmを採用し、その次世代製品であるZen 5アーキテクチャーではさらに先端プロセスであるTSMC 3nmの採用が予定されていました。しかし、このTSMC 3nmについてIntelやAppleに生産枠を抑えられたため、AMD製品の登場が遅れる可能性が出てきています。

TSMC 3nmを採用するZen5アーキテクチャー

 

AMDでは2022年下半期にTSMC 5nmプロセスを採用するRyzen 7000シリーズやEPYC Genoaをリリースする予定としており、さらにその1年後に当たる2023年末までにTSMC 3nmで製造されるZen5アーキテクチャーを搭載する製品の発売を予定していると噂されていました。

しかし、このTSMC 3nmを利用するZen5アーキテクチャーについて、IntelやAppleが生産枠の大部分を抑えた事が原因でAMDのZen5については当初の計画に対して大幅に遅れる可能性が出てきているようです。

札束を積んだIntelとApple、押し負けたAMD

台湾のDigitimesによると、TSMCでは次世代の製造プロセスである3nmについて製造キャパシティーを超える受注を受けており、TSMCに対して多額の契約金を支払ったIntelとAppleに対して初期生産枠が優先的に与えられるとのことです。

Intelは2021年12月ごろにTSMCに対して3nmの生産ラインを予約したという情報が出ており、同時に2025年までパートナーシップ契約を行う事で合意した事がDigitimesにて報道されていました。IntelではこのTSMC 3nmを活用して第14世代CPUであるMeteor Lakeに搭載されるGPUコア製造を依頼する予定としています。

また、TSMC最大顧客のAppleについては2022年または2023年に登場予定のApple M3 SoCに採用がされると見られており、Apple製品全般に採用される予定となっています。

IntelやAppleの他に、このTSMC 3nmについてはAMD、NVIDIA、MediaTekも生産枠を希望しているのですが、前述の通り多額の契約金を払ったInteとAppleがTSMC 3nmの初期生産枠をそれぞれ50%ずつ抑えており、AMDやNVIDIA、MediaTekについては早くても2023年末頃から生産枠が割り当てられる見込みのようです。

TSMC 3nmの歩留まりの悪さが初期生産枠が少ない原因か

ギャズログ | Gaz:Log

TSMCでは2021年末頃に3nmプロセスでの試作生産を開始しする予定となっています。そのため、AppleやAMD、In…

TSMC 3nmについては2022年2月末頃に開発が難航している事がDigitimesから報じられていました。この開発の難航については、主に歩留まりが原因と見られておりTSMCが想定した以上に歩留まりが低く、3nmプロセスで製造される半導体の生産能力が大きく削がれる事態になっているとのことです。

そのため、TSMCでは2022年に製造が開始される3nm(N3)の他に、2023年頃にN3EとN3Bと呼ばれる3nmプロセスの改良版を一部顧客に提供する事を計画しているようですが、歩留まりについては大幅な改善が見込めない事が有力視されていました。

この時点で、TSMC 3nmについては受注に関して制限を設ける可能性も指摘がされていましたが、結果的にIntelとApple以外、2022年中の生産は不可能に近い状況になってしまったようです。

AMDの選択肢はZen5を遅らせるか、5nmや4nmで妥協するか

AMDのZen5アーキテクチャーについてはTSMC 3nmを利用して製造されるという確定情報はないものの、Zen4アーキテクチャーがTSMC 5nmが使われる事や、ライバルのIntel Meteor LakeやApple M3 SoCにTSMC 3nmが活用されることからAMDとしては電力効率面でTSMC 3nmが採用される可能性が高いと推測されていました。

しかし、TSMC 3nmの生産枠が確保できないため、AMDでは生産枠が確保できる2023年末以降、つまりZen5アーキテクチャーを搭載するCPUを2024年から2025年初旬の間に遅らせることになるかもしれません。

ただ、AMDとしては新製品をタイムリーに発売する事は経営戦略上重要となるため、Zen5アーキテクチャーについてはアーキテクチャーが全面刷新されるものの、TSMC 5nmや4nmを活用して製造が行うという可能性もあります。

Zen5アーキテクチャーについてはTSMC 3nmの製造に問題があるという話題が出た2022年2月末頃にGPU用のRDNA4アーキテクチャーと共にTSMC 4nmで製造する方針に切り替えられたとGreymon55氏がリークしており、恐らく2024年から2025年発売という大幅遅延は回避すると見られていますが、電力効率面ではZen4からZen5の間では伸び代がプロセス縮小分小さくなってしまう可能性がありそうです。

 

Appleについては元々TSMCとズブズブの関係であったことから、TSMCの最先端プロセスはApple先行で採用されており、AMDについてもAppleやMediaTekの次に取引額が多いことから比較的優先的に製造プロセスが割り当てられていました。しかし、Intelが2021年末頃にTSMCと大口契約を結んだことでAMDを超える取引額を実現する予定となり、AMDはIntelより優先度が低い顧客という扱いになってしまったようです。

IntelとしてはIDM2.0戦略に基づいてTSMCなど外部ファウンドリーの活用が経営計画として打ち出されておりTSMCとの大口契約やMeteor LakeでのGPUダイの製造委託などはこのIDM 2.0に基づいた動きとなっています。しかし、Intelとしては副次的な効果としてIntelがTSMCと結びつきを強めることで、AMDがTSMC最先端プロセスへのアクセスを制限する事も狙っている可能性がありそうです。

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