まとめ
- レーシックはエキシマレーザーと呼ばれるレーザーを当てて角膜の形を調整し、裸眼での視力を向上させる手術方法です。
- レーシック後はドライアイや感染症などが生じることがあり、経過観察が必要です。
- レーシックしても思うような視力が出ない方もいます。高額な治療なので納得のいくまで医師と話し合い、治療を選択しましょう。
この記事を書いた医師
レーシックとは
近年、近視の患者さんが増加していることが世界中で問題になっています。これを読んでいる皆さんの中にも、コンタクトレンズや眼鏡を使用している方は多いのではないでしょうか。そのような中、『レーシック』という言葉を聞く機会は増えてきたように感じます。一般的には、レーシックは視力を改善して眼鏡やコンタクトレンズを使わずに済むようにする手術としてイメージしている方もいるでしょう。
それではレーシックとは具体的にどのような治療なのでしょうか。
まずはヒトの目の構造を見てみます (参考文献 1) 。
日本眼科医会HP (https://www.gankaikai.or.jp/health/57/index.html) より引用
目に入った光が網膜に届くことによって動物はものを見ることができます。
その際、角膜や水晶体を通るときに、光が屈折し、網膜に像を結ぶことによって、ピントが合い、くっきりと見ることができます。近視や遠視というのは、この像を結ぶ位置が正常からずれることによって起きます。
眼鏡やコンタクトレンズは、どちらもこの光の屈折具合をレンズによって調節し、見えやすくするというものです。
レーシックは、エキシマレーザーと呼ばれるレーザーを当てて、角膜の形を調整することで、光の屈折の度合いを変え、裸眼での視力を向上させる手術方法です (参考文献 2) 。
これは比較的新しい治療法で、1990年にギリシャで開発されました (参考文献 3) 。その後、アメリカなど世界各地に広まり、日本でも2006年に厚生労働省から承認され (参考文献 4) 、クリニックを中心に多くの手術が行われるようになりました。
レーシックは手術中の痛みが少なく、視力の回復も早く、両目同時に手術ができるため大変魅力的な治療方法となっています (参考文献 5) 。
しかし、2013年の消費者庁によるレーシック手術に関する注意喚起 (参考文献 6) によって、「レーシックは危ない」というイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。この影響もあってか、レーシックの手術件数は減少傾向にあります。しかし、レーシックは今でも年間数万件の手術が行われており、眼科の中では最も多く行われる術式の一つです (参考文献 7) 。
レーシックは誰でも受けられるの?
このレーシックは誰でも受けられるのでしょうか。屈折矯正手術のガイドライン (第7版) によれば、レーシックは下記のような条件の患者さんの治療選択肢として考慮することが書かれています (参考文献 4) 。
1. 18歳以上であること (18歳未満の場合は親権者の同意が必要) 2. 度数が安定した遠視、近視、乱視であること 3. 基本的には度数は 6.0 D (ジオプター) まで (近視の場合は 10 D まで行うこともある) |
これらの条件に当てはまっていても、妊娠中や授乳中、他に何らかの目の病気がある場合は手術を行えない場合があります。詳しくはレーシックをしている眼科医にご相談ください。
レーシックに合併症はないの?
2013年の消費者庁によるレーシック手術に関する注意喚起を見て、「レーシックは危険」というイメージを持っている人もいらっしゃるでしょう。
レーシックには知っておくべき合併症がいくつかあります。特に、一般的とされる合併症を2つ紹介します (参考文献 8) 。
まず1つ目はドライアイです。ドライアイは最も一般的な合併症とされています (参考文献8) 。ドライアイがあると目がゴロゴロしたり、目に違和感を感じたりします。
2つ目は低矯正です (参考文献 8) 。低矯正とは、矯正が不足している状態です。つまり、せっかくレーシックをしても、視力が十分に出ないケースもあります。
その他にも、ガイドラインには目の痛み、感染症などが挙げられています (参考文献 4) 。
目の痛みやドライアイなどの合併症によっても、日常生活で不自由さを感じることもあります。そのため、ガイドラインでも「術後6か月まで経過観察を行うが、その後も一般検査の中で長期経過を見守ることが望ましい」としています (参考文献 4) 。
レーシックで視力は本当に出るの?
レーシックをして視力が出るのか気になりますよね。SNSなどでは「レーシックをして裸眼で遠くも近くも見える」などと拡散されているのが目立ちます。本当のところはどうでしょう。
レーシックを受けた37名の日本人患者さんを対象にした、2017年の報告を見てみましょう。治療を受けてから1年が経過した時点で「両眼とも視力が 1.0 以上」と良好だった方の割合は、もともと軽度から中等度の近視があった患者さんでは 73% 、強度の近視があった患者さんでは 61% でした。しかし、治療の12年後では、「両眼とも視力 1.0 以上」をキープできている方の割合がそれぞれ 63% 、22% まで下がっています (参考文献 9) 。
レーシックの効果が長持ちするかはまだ不明点が多く、明言できないところがあります。もちろん技術レベルも徐々に進歩してきていますが、レーシックにより視力矯正効果が将来的に落ちるかもしれないことは頭に入れておきましょう。
視力低下が進むと、レーシック後に再手術が必要となることもあります。再手術が必要になる方の割合は報告によってバラバラですが、数%〜数十% 程度です(参考文献 10)。
レーシックの費用はどのくらい?
レーシックは医療保険の適用外です。そのため、レーシックにかかる費用は、医療機関によって異なります。それに加えて、選択する術式のプランやオプションによっても費用は異なりますが、両眼で30-50万円で行っている病院が多いと思います。「お安くできます!」と説明を受けた場合も、レーシック後にフォローの診察を受けた時の料金や、追加で手術が必要になった時の保証などが費用に含まれているかもよく確認しておきましょう。
レーシックを正しく知り、適切な選択をしましょう!
ネット上にはレーシックは危険だという情報がある一方、レーシックを推奨する情報もあり、どちらが正しいのか、あるいは両方正しいのか判断に迷います。
レーシックは裸眼での視力を向上させる治療で、痛みが少なくて視力の回復が早いなどの利点があります。しかし、誰でもできるわけではないこと、その合併症があることも知っておく必要があります。さらに、レーシック後に視力が再度落ちてしまうケースもあることは覚えておく必要があるでしょう。これらのメリットやデメリットを踏まえた上で、主治医とよく相談して選択してください。
参考文献
COI
本記事に関して、開示すべき COI はありません。
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