アウディは、新しい照明技術で明るい未来を獲得する。クルマのライトは、ますますインテリジェント化している。デジタルマトリックスLEDライトは、道路に危険信号を投射することも可能だ。アウディのデジタルマトリックスLEDライトの仕組みはこうだ!
「デジタルライト」をテーマとした自社ブランドの「TechDay」では、「A8」と「e-tron」に搭載された最新のLEDヘッドライトが、レースゲームを壁に投影することもできることを紹介している。しかし、このことにはもっと重大な背景がある。何しろ、現代の照明技術は安全性の面でも重要な役割を担っているからだ。
明るい道路は、運転中の疲労を軽減し、運転手の反応速度を速めることができる。さらに、潜在的な危険源も見えやすくなり、確認もしやすくなる。シンプルなヘッドライトの時代は終わり、現代のライトは本物のハイテク部品となっている。我々は、アウディを例にして、最新のライティングシステムの仕組みを紹介する。
ヘッドライト: アウディのマトリクスLEDライトはデジタル化された
今やクルマのヘッドライト技術は、家庭用シネマビームをさえしのぐ勢いだ。20世紀初頭に自動車の前方に設置されたカーバイドランプに始まり、今では自らの光円錐から対向車を正確に把握できる多機能な照明タレントとなったのである。
従来のマトリクスLEDシステムでも十分に信頼性の高い動作をすることが多いのだが、この技術のデジタル化により、アウディのようなメーカーは、柔軟性を新たなレベルに引き上げようとしている。
いわゆるDMD(Digital Micromirror Device)チップの助けを借りて、機械的な部品を使わずに、ヘッドライトを必要に応じて道路に配光することができる。約130万個のマイクロミラーが静電的に作動し、車の乗り降りの際の楽しいアニメーションに加え、照明エンジニアが車線を道路に映し出し、現在の車線を強調したり、危険を知らせたりすることができる。
デジタルマトリクスLED照明の仕組み
3個の高出力LEDがミラーを介してマイクロミラーチップに光を投射する。これにより、切り替えられたリフレクターの位置に応じて光を分散させることができるようになっている。道路に出ないはずの部分はライトトラップで、それ以外の部分は投影レンズで道路に投影される。
このDMDチップはテキサスインスツルメンツ社のもので、この種のものとしては、今のところ唯一無二のものだ。親指の爪よりも小さく、表面の鏡の縁の長さはわずか8マイクロメートルだ。
ライトカーペットや他の道路利用者の位置の情報源は、カメラやナイトビジョンからの情報、他のセンサーからのデータである。
リアライト: デジタル有機EL技術によるコミュニケーション手段
しかし、アウディでデジタル化が進んでいるのはヘッドライトだけではない。リアライトもデジタル有機EL技術(OLED)によって、新たな機能を獲得しているのだ。
インゴルシュタットの会社がダイナミックインジケーターで始めたことを、今度は小型のガラスパネルでデザイン的に継続することになった。
6つの発光面を持つ8つの有機ELユニットは、すでに「A8フェイスリフト」で特別な光のサインを作り出しており、インテリアから変更することも可能だ。
将来的には、1枚のパネルに最大600個の光源を搭載することも視野に入れている。このように、ライトに詳細な警告マークを表示することで、環境との相互作用が可能になるのだ。
有機ELのしくみ
有機ELは、基本的には従来のLEDと同じように機能するが、一点の光を発生させるのではなく、定義された表面で光を放つ。有機ELモジュールの層が異なるとコントロールされた電流が表面に作用するようになる。
エレクトロニクス分野では、この技術を用いたディスプレイが定着しているほどだ。有機ELは自発光型でバックライトが不要なため、非常に高いコントラストが得られる。
ここでは、1枚あたり600個近い素子を持つプロトタイプを紹介している。将来的には、個々の有機ELパネルの解像度が今よりも上がっていく。
また、このようなディスプレイの黒点は、従来のディスプレイよりも大幅に低くなっている。ディスプレイにはさまざまな色を表示することができるが、自動車分野では今のところ赤色だけが一般的だ。
有機ELユニットに使われている化学物質は、少なくともメーカーが想像しているような品質では、まだ白色を表示することができない。しかし、アウディも車載用白色有機ELの開発を進めている。
競争相手: メルセデスはSクラスにもこの技術を採用
アウディには、照明デザインの長い伝統がある。車両にアニメーションをつけることで、購入の動機付けを行い、ついでにより良い照明の選択肢をより多く道路に配置することにつながっている。
デジタルマトリクスLEDライトを採用しているのは、インゴルシュタットのメーカーだけではない。メルセデスも「Sクラス」にこのタイプのライトモジュールを搭載しているが、日常生活ではもっと目立たないように、別の方法でこの技術を使用している。
結論:
デジタルマトリクスLEDライトを一度車に搭載したら、もう他の方法で夜道を走りたくはないだろう。道路を照らす光も格別だが、アウディの場合、ライトカーペットなどの機能も実に楽しい。2022年には、派手であろうと控えめであろうともう暗い道路を走る人はいなくなるはずだ。早く、小型車クラスにもこのような照明が導入されることを期待する。
【ABJのコメント】
最近の自動車で圧倒的に進化した部分、それはアクティブクルーズコントロールのようなエレクトロニクスデバイスの部分とライトの部分ではないかと思う。ライトに関しては、最新のLEDライトに乗ってしまい慣れてしまうと、もう暗いライトには怖くて戻れない、それほどの性能を最新のヘッドライトは持っている。
ついこの間までプロジェクターライトの車にのると「なんて明るいんだ!」と思っていたのに、もはや今のライトの明るさと、くっきり視界を切り取るその性能を知ると、もう戻れないし、安全性を考えると暗いライトの車に戻れなくなってしまう。ついこの間までシールドビームをハロゲンに変えて得意満面になっていたのに、ライト交換して悦に入っていたのに、もう今やそんな交換したり、ライトをいじることしたりするは不可能になった。そんなLEDライトの欠点は高価なことで、軽衝突などでも壊れてしまうと30万円以上かかることが普通である。必ず車輌保険に加入しておくことをおすすめしたい。
それで今回のアウディのライトのハナシだが・・・。もうあまりに高性能で複雑すぎて、門外漢にはさっぱり理解できない。どんなにものすごいもんだか、一度乗ってみたいものだが、たぶんその構造や仕組みは一生理解できない、そんなヘッドライトだと思える。(KO)
Text: Andreas Huber
加筆: 大林晃平
Photo: Audi AG