もっと詳しく
アストンマーティン

| ただしアストンマーティンはすでに資金を使い果たし「破産の可能性もゼロではない |

ちなみにカスタマイズ比率はこの2年で6%から50%へと向上

さて、アストンマーティンが「8度目の倒産を防ぐ」ためのプランがロイターによって報じられ、そのメインは「新車購入時のカスタマイズ比率向上」と「販売台数の増加」「エレクトリック化への移行」とのこと。

なお、この計画はアストンマーティンを買収したローレンス・ストロール氏(同社会長)によって考案されたもので、それを実行するのは同社CEOのトビアス・ムアーズ氏(メルセデスAMG出身)となりますが、前の2つについては「フェラーリに近づける」ことを目標としているとされ、ここでそれらについて見てみましょう。

プレミアムカーメーカーにとって「カスタマイズ製の向上」は利益増加への近道

まずは新車購入時のカスタムについてですが、アストンマーティン含む超高級車そしてスーパーカーメーカーにとって、これは利益を増加させるための「近道」。

どういうことかというと、この価格帯の自動車メーカーは「販売台数を増やそうと思ってもすぐには増やすことができない」という特性を持っており(そもそも購入する人が限られており、値下げ、もしくはむやみな拡販はブランドイメージを損なう)、となると短期的には販売する車両一台あたりの利益単価を上昇させることで利益総額を向上させるしかないということに。

しかし車両販売価格を引き上げると販売が鈍化する可能性があり、となると「購入時に、消費者の意思によってカスタムしてもらう」事が重要となります。

トビアス・ムアーズCEOによると、「私がアストンマーティンに入社したとき、会社はエンジニアリング主導ではなく、製造主導でした。これは、自動車の高級品ビジネスとしては非常識なことです。この規模の会社では、最大限の柔軟性と俊敏性が必要なのです」。

つまりは製造現場(もしくは職人)の権力が強く、そのために生産される製品には柔軟性が欠けていたと考えることができそうで、しかし同氏が着任したのちは「柔軟なカスタム」を取り入れたということに。※製造現場の権力が強いと、消費者が何かを要望しても、「あれもできない、これもできない」と突っぱねられる

実際のところ、2020年にトビアス・ムアーズ氏がアストンマーティンに入社して以来、カスタムオーダーの割合は、全体の売り上げの6パーセントから50パーセントに上昇しており、ロイターのアナリストが55パーセントに近いとするフェラーリのカスタマイズ率にはまだ及ばないものの、アストンマーティンにとっては大きな前進ということになりそうですね。

x9

こちらもCHECK

選択肢多すぎ!アストンマーティン・ヴァンテージ・ロードスターのコンフィギュレーター公開。ボディカラーは54色、内装の組み合わせは事実上無限に近い

| 途中で仕様を選ぶこことに疲弊するほど | さて、先日発表されたばかりのアストンマーティン・ヴァンテージ・ロードスター。早速日本語仕様のカーコンフィギュレーターが公開されており、その内容を見てみたい …

続きを見る

さらにはカスタマイズを促進するために、シートやステアリングホイールを自社で製造し、カスタムステッチなどの適用範囲を拡大し、より費用対効果の高いものにしたといいますが、アストンマーティンはもともと「かなり広い範囲のカスタムができる」と認識していたものの、実際には「そのカスタマイゼーションプラン”Q”を利用する人はそんなに多くなかった」ということになるのかも。※アストンマーティンのパーソナリゼーション部門は、007映画の前秘密兵器開発担当者”Q”の名を借用している

加えて品質については、「メルセデス・ベンツ時代では、品質のばらつきは悪夢のようなもので、あってはならないものでした。しかしアストンマーティンでは品質のばらつきは普通のことで、それを(なくすのではなく)まず減らすことが我々の現在の主な目的なのです」とも。

販売台数は「年間1万台」を目指す

そして2番めの販売台数については、すぐには達成できる目標ではないものの、2025年までにはフェラーリの販売台数と同等の「1万台」にまで持ってゆきたいとしています(ただ、その頃フェラーリの販売台数は1万5000台を超え、2万台に近くなっているかもしれない)が、この手法について詳細は語られていないものの(これから情報が徐々に公開されるものと思われる)、収益性の高いスポーツカーに注力するようですね(つまりラピードやラゴンダのようなモデルは発売しない)。

参考までにですが、トビアス・ムアーズ氏は「ヴァルキリーのような、お金のかかるプロジェクトはもう起こらない」とも語っており、よほどアストンマーティンの業績が好転しない限り、こういったハイパーカーは二度と世に送り出されることはなく、それだけヴァルキリーは「希少」な存在だということを同時に意味しています。

そして3つ目の「電動化への移行」については、トビアス・ムアーズ氏のコネクション(というか、そのためのメルセデスAMGから送り込まれている)を活用し、メルセデス・ベンツの助けを借りつつも前に進むとしており、こちらも現時点では具体的な計画は公表されておらず、改めての発表を待ちたいところ。

アストンマーティンは破綻の可能性を逃れたわけではない

なお、アストンマーティンはすでに獲得した再生計画用資金をすでに使い果たしているといい、レッドバーンの株式調査アナリスト、チャールズ・コルディコット氏によれば「アストンマーティンが破綻する可能性は否定できない」と述べ、続けて「ただ、そうなればメルセデス・ベンツがアストンマーティンの事業を買収することになるだろう」とも。

現時点ではまだまだ予断を許さない状況ということになりそうですが、この不透明な状況においてはどの会社も「破綻する可能性はゼロではなく」、一見安定していそうに見えるメジャーメーカーのほうが「電動化に大量の資金を投じており」、もしそれうまくゆかなければ一瞬にして経営が揺らぐことになるのかもしれません。

合わせて読みたい、アストンマーティン関連投稿

アストンマーティン
アストンマーティンの新型ミドシップスーパーカー最新情報!「V8+HV」、「エントリーモデルという位置づけで3700万円くらい」「ヴァンキッシュの名を使用しない可能性が高い」

| アストンマーティンはコロナウイルスのパンデミック以降に経営陣が入れ替わり、その方向性が大きく変わりつつある | 今後、同社の計画にはさらに様々な変更が生じるだろう さて、アストンマーティンはミドシ …

続きを見る

アストンマーティンが新戦略「レーシンググリーン」発表!2024年に初のPHEV、2025年に初のEVを発売、22030年には全ラインアップを完全電動化
アストンマーティンが新戦略「レーシンググリーン」発表!2024年に初のPHEV、2025年に初のEVを発売、22030年には全ラインアップを完全電動化

| さらには車両の素材や製造設備を見直して2030年までにカーボンフリーを目指す | 加えて管理職の25%を女性にすることで多様性と平等性を確保 さて、アストンマーティンがアースデイにふさわしく新しい …

続きを見る

【動画】こんな音が出るのかアストンマーティン・・・!現行モデルのサウンドを収録した公式動画が公開、あまりの刺激にびっくりした
【動画】こんな音が出るのかアストンマーティン・・・!現行モデルのサウンドを収録した公式動画が公開、あまりの刺激にびっくりした

| アストンマーティンというと「ジェントル」なイメージがあるものの、その本質はやはり真のスポーツカーであるようだ | その姿からはここまでのサウンドを発すると想像することは難しい さて、アストンマーテ …

続きを見る

参照:Reuters

Copyright © 2022 Life in the FAST LANE. All Rights Reserved.