最近はコンパクトなSUVや、コンパクトカーをSUVライクに仕立てた機種が人気だ。そんな中でも、ダイハツ ロッキーのOEMであるトヨタ ライズが絶好調だという。
その人気の秘訣はなんだろうか? 理由を4点ピックアップして解説してみた。
文/渡辺陽一郎
写真/ダイハツ、トヨタ、ベストカーWEB編集部
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■ライズがヤリスクロスを追い抜いた理由とは?
今はSUVが人気のカテゴリーになった。そのなかで最も多く売られている車種がライズだ。2022年1~3月の1カ月平均登録台数は1万台に達する。2位はヤリスクロスで、2022年1~3月の1カ月平均は8767台、3位はカローラクロスで7057台になる。
ちなみに2021年(暦年)のSUV販売ランキングは、1位がヤリスクロスで1カ月平均は8667台、2位はライズの6823台、3位はカローラクロスの5080台(9月の発売後3カ月半で計算)であった。2021年はヤリスクロスが優勢だったが、2022年はライズが追い抜いた。
ライズの売れゆきがヤリスクロスを抜いた背景には、4つの理由がある。
■安価で実用性が高い。ハイブリッドもある
ひとつ目の理由は、ライズが数少ない5ナンバーサイズのSUVで、外観などは少々地味ながら、飽きのこないクルマに仕上げたことだ。発売直後の売れゆきは、外観の目立つヤリスクロスが急増したが、需要が下がるのも早い。その点でライズは、価格が安く実用的だ。発売直後の台数はヤリスクロスより少なくても、その後の需要を長く保ちやすい。
ふたつ目の理由は、2019年にライズが発売された後、2021年11月にハイブリッドを加えて、ノーマルエンジンもマイナーチェンジを実施したことだ。
ライズのハイブリッドは、エンジンが発電機を作動させ、駆動はモーターが行う。日産のe-POWERと同じ方式だ。しかもZ同士で価格を比べると、ハイブリッドと1.2Lノーマルエンジンの差額を28万9000円に抑えた。加えて購入時に納める税額は、ハイブリッドが2万4100円安いから、実質差額は約26万5000円に縮まる。
この割安感も注目され、ライズではハイブリッドが人気を高め、今では販売総数の約55%を占める。つまりハイブリッドの追加により、ライズの売れゆきが押し上げられた。2022年1~2月におけるライズの登録台数を見ると、前年に比べて20~25%増えた。ハイブリッドの設定により、ライズはSUVの販売1位になった。
■トヨタ内で需要が重複しない
ライズの売れゆきがヤリスクロスを抜いて1位になった3つ目の理由は、ライズが2022年にハイブリッドを追加して売れゆきを伸ばしながら、ヤリスクロスは下がったことだ。ヤリスクロスは、2021年の1~3月には1カ月平均で1万577台を登録したが、2022年の1~3月は、冒頭で述べた8767台であった。ヤリスクロスの売れゆきは前年の83%に留まったから、ハイブリッドで売れゆきを伸ばしたライズに抜かれた。
それならなぜ、ヤリスクロスは売れゆきを17%も下げたのか。この背景にはカローラクロスの登場がある。ライズの売れ筋価格帯を2WDで見ると、ハイブリッドを含めて185万~233万円だが、ヤリスクロスは200万~258万円と高い。カローラクロスは240万~299万円だから、ライズの売れ筋価格帯とは重複しなくても、ヤリスクロスとは競い合う。
今のトヨタでは国内の全店が全車を扱うので、選べる車種は従来以上に豊富だ。従ってトヨタ車のユーザーは、よぼどの理由がないかぎりメーカーを変えない。そうなると新車を買う時の選択対象はトヨタ車のみになり、トヨタ車同士が競争する。
そのためにカローラクロスの登場により、価格帯の近いヤリスクロスはユーザーを奪われた。ヤリスクロスの登録台数が下がり、ハイブリッドを加えたライズが一層有利になった。
■比較的納期遅延が少ない
4つ目の理由には、昨今の納期遅延が挙げられる。直近ではライズの納期も遅れているが、以前は比較的短かった。2022年3月中旬の時点では、販売店は「ヤリスクロスの納期は6カ月以上だが、ライズなら3カ月前後で納車できる。従って納期を急ぐお客様には、ライズを推奨している」と述べていた。ライズはハイブリッドの追加で受注台数を増やしながら、納車も比較的順調だったから、SUVの販売1位になった。
ところが、直近では前述のとおりライズの納期も遅延傾向にあり、販売1位も危ぶまれている。
以上のように、今のクルマの販売現場は、異常事態を迎えている。以前は人気の高い車種は売れゆきを伸ばし、不人気車は落ち込む当然の売れ方をしていたが、今は納期によって左右される。
納期に影響を与えているのはパーツの供給だが、これも多様化している。メーカーの商品企画担当者は以下のように説明した。
「新聞などの報道では、半導体の不足が納期遅延の原因とされるが、実際はごく一部に過ぎない。樹脂製品なども含めた多種多様のパーツ、あるいは複数のパーツを組み合わせたユニットなど、さまざまな調達が滞っている。この状態が長期化すれば、汎用性の高いパーツに切り替えるなど、クルマ作りも見直しを迫られる」。
高性能で低コストのパーツを開発できても、製造メーカーが1社にかぎられると、供給が滞った時に代替えが利かない。今の供給状況を考えると、軽視できないリスクだから、性能が少し下がっても供給元を変更できる自由度が求められる。
そして納期の遅延が問題になってから、今では1年半以上が経過したから、納車を待っている受注台数も増えた。今後パーツの供給が回復しても、暫くは受注している車両の生産に追われて納期遅延が続く。この状況も、販売ランキングに影響を与えるわけだ。
従って新車を買うなら、長い納期を考慮して、商談は早めに開始したい。また、現時点でクルマを所有している場合は、長く大切に乗ることを前提にメンテナンスを入念に行いたい。クルマのユーザーにも自衛手段が求められている。
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