とうとう来た……。ホンダがCB400SF/SB、VFR800F/Xなどの生産終了を正式にアナウンスしたのだ。
ともに初代から30年以上の歴史を誇り、直列4気筒、V型4気筒というクラス随一の個性が光る名車。その存在意義と終了の理由を解説しつつ、今からでも入手できるのか調べてみた!
文/沼尾宏明、写真/HONDA
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排ガス規制に対応せず。現行唯一の400cc直4が30年の歴史に幕を降ろす
ホンダのwebサイトで2022年4月28日、「法規対応に伴う、Honda二輪車の一部機種の生産終了について」との発表があった。これによると、日本で2022年11月生産分から「令和2年排出ガス規制」が適用されることから、「一部機種につきましては2022年10月生産分をもって生産終了とさせていただきます」という。
その機種とは下記の5モデルだ。
・ゴールドウイング(リアトランクレスタイプ)※ゴールドウイングツアーは含まれない
・VFR800F
・VFR800X
・CB400 スーパーフォア/スーパーボルドール
・ベンリィ110
当webでも可能性を報じてきたが、やはり衝撃的なのはCB400SF/SBとVFR800シリーズの生産終了だ。ゴールドウイングは、トップケース付きの上級版が今後も存続。ベンリィ110に関しては電動モデルのベンリィe:シリーズが登場している。だが、CBとVFRは独自の個性を持ち、代替モデルが存在しないのだ。
CB400SFは1992年の初代以来、何度もベストセラーに輝いた長寿モデルで、90年代の400ネイキッドブームを牽引した1台。排ガス規制の影響でライバルが消滅する中、現在では400ccクラス唯一の直列4気筒車となり、世界でも400cc直4はCB400SF/SBのみ。教習車としてもおなじみで、お世話になった人も多いはずだ。
そしてVFR800シリーズもホンダを象徴するモデルの一つ。ホンダはレースの輝かしい歴史をV型4気筒とともに歩んできた。世界GPにおいては2ストロークV型4気筒のNSR500で勝利を重ね、世界耐久などの4ストローク車においてもRVF750、VFR750R(RC30)、RVF/RC45で快進撃を続けた。現在のモトGPでも4ストV型4気筒のRC213Vで参戦する。
そのDNAを継ぐV4マシンは現在、VFR800FとVFR800Xのみ。V4は世界的にも珍しく、現行ではドゥカティのパニガーレV4、アプリリアのRSV4シリーズがV4を搭載している。
CB400SFのルーツは1980年代、一時は継続が噂されたが……
なぜCB400SF/SBとVFR800シリーズが生産終了になるのか。それは、エンジンの基本設計が古く、欧州排ガス規制のユーロ5に相当する令和2年二輪車排ガス規制を乗り越えるために多大なコストを要するからだ。
まずCB400SF/SBのDOHC4バルブ水冷4気筒エンジンは、ルーツを辿ると1986年のCBR400Rにまで遡ることができる。その後、1988年のCBR400RR、1989年のCB-1を経てCB400SFに改良されて搭載。当時の燃料供給はキャブレターで、エンジンもそれに合わせて設計されたものだ。
1999年型でバルブ休止機構のハイパーVTECなどを採用し、当時の排ガス規制に適合。2008年型でハイパーVTEC REVOを導入した新エンジンになったタイミングで、燃料供給がFIに進化した。この改良が土台となって前回の平成28年排出ガス規制もクリア。一時期は令和2年排ガス規制にも対応するとも噂されていた。
しかし、CB400シリーズはほぼ国内専用モデルとなっており、日本での人気は高いものの、グローバル展開によるスケールメリットがない。また、400クラスながらネイキッドのCB400SFは車両価格が約90万円、カウル付きのCB400SBは100万円超となっており、クラス最高額となる。さらに、排ガス規制を通すため大幅なメスを入れる必要があるため、関係者筋によると「車両価格は200万円近くに達する」とも言われているのだ。
こうした要因から生産終了が決まったと推測できる。
VFRは初代から36年、対策が困難で需要もダウンしていた
VFR800Fに関しても、直接の先祖は1998年のVFR(RC46)だが、源流は1986年のVFR750F(RC24)にまで遡る。RC24で180度クランクシャフトを採用し、1990年のRC36でヘッドを新設計。1998年のVFR(RC46)でFI、2002年にVTECを獲得している。
2001年型までは、カムの駆動に一般的なチェーンではなく、歯車(ギア)を用いたホンダ自慢の「カムギアトレーン」を採用。高回転域でも駆動ロスが少なく、現在のモトGPマシンにも導入しているハイメカだ。車体に関しても片持ちスイングアームのプロアームなどを採用し、一時期までホンダの技術を結集した先進ツアラーとして君臨した。
しかしV4というエンジンレイアウトは、排ガス対策が難しい。リヤバンクのシリンダー周りを冷却するのが困難なため、緻密な熱管理ができず、排ガス規制の対象となる有害物質を抑えにくい。
また、VFRはスポーツツアラーの需要が高い欧州などでセールスが好調だったが、近年は需要がダウン。アドベンチャーであるVFR800Xもヒットには至っていなかった。なおVFR1200F、VFR1200Xといった1200ccV4マシンも存在したが、国内では2016年に生産終了している。
CBは予約が殺到しており、既に購入できない可能性が高い
現在のところ、残念ながらCB400SF/SBとVFR800シリーズに関する後継モデルの情報はない。CB400SFに代わる教習車も未発表だ。
現行CB400SF/SBに関しては、販売店によると「既に各店舗への割り当て台数が決まっており、新規注文しても買えない可能性が高い」とのこと。既に予約自体を受け付けていないショップも多い。今後の増産も難しいようだ。
長年愛されてきたモデルだけにファイナル仕様を用意してほしかったところだが、情報筋によると「通常モデルの生産が手一杯で難しい」とのこと。また、スーパーボルドールよりスーパーフォアの方がより入手が難しいようだ。そして中古車相場も上昇しており、新車に近い状態のタマだと130万円の値をつけるケースもある。
VFRシリーズに関しては、探せば店頭在庫がある模様。ただし状況は流動的なので、欲しい人は早めに動きたい。
――SR400、セローらに続いて、偉大な名車がまたしても消えることになった。転換期を迎えている二輪四輪だけに仕方ないのかもしれないが、これから新たな名車が生まれることを願いたい。
なお、今回の発表に合わせ、「レブル1100」の受注一時停止もアナウンスされた。こちらは新型コロナによるロックダウンや、世界的な海上輸送・港湾の混雑、半導体供給不足などの複合的な要因で、入荷見通しが不透明なため。また、令和2年排ガス規制が迫る中、現行モデルの注文が生産計画に達したため、受注を一時停止するという。
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