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<p>寒冷地の救命設備に課題 「救命いかだ」は予算面で普及進まず – ライブドアニュース</p><p>【課題】寒冷地の救命設備、「救命いかだ」は予算面で普及進まず 救命いかだは小型船舶用でも1点約50万円かかり、費用面から普及が進まない実情があるという。専門家は「寒冷地の事業者は旅客が水につからず安全に救助を待つことができる方法を早急に検討すべき」と述べた。</p><p>北海道・知床半島沖で観光船「KAZUI(カズワン)」が沈没した事故を受け、寒冷地で運航する観光船の救命設備について課題が浮かんでいる。今回の事故現場は海水温が低く、乗客が救命胴衣を着ていても命にかかわ</p><p>北海道・知床半島沖で観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故を受け、寒冷地で運航する観光船の救命設備について課題が浮かんでいる。今回の事故現場は海水温が低く、乗客が救命胴衣を着ていても命にかかわる状態に陥ったとみられるためだ。専門家は地域ごとの事情に応じた設備の必要性を指摘している。 【写真】七菜子ちゃんらが発見された場所 カズワンは総トン数が19トンで、20トン未満の「小型船舶」に該当する。沿岸区域を航行する小型船舶の場合、乗船できる最大人数分の救命胴衣に加え、膨張式の「救命いかだ」か「救命浮器(ふき)」を備え付けるよう、小型船舶安全規則で義務付けられている。 このうち水に浮かぶ板状の救命浮器は、ウレタンなどでできた四角形のマットが一般的。海上の遭難者は救命胴衣を身に着け、浮器につかまって救助を待つことになるが、通常は胸から下が水につかる状態となるため、海水温が低い場合は早急な救助が不可欠だ。 今回事故に遭ったカズワンは救命浮器を備えていたが、救命いかだの搭載は確認されていない。事故時の現場付近の水温は2~3度だったとみられ、浮器につかまっていても15分から30分で低体温症に陥り、意識を失うという。 これに対し、救命いかだは体ごと乗ることができ、一定の波や風でも転覆しないようになっている。今回の事故を受け、救命いかだのメーカー「アール・エフ・ディー・ジャパン」(横浜市)には、複数の船舶運航事業者から問い合わせが来ているという。ただ、救命いかだの購入費は小型船舶用でも、1点約50万円かかる。一方で救命浮器は約10万円で、費用面から救命いかだの普及が進まない実情がある。 国土交通省によると、観光シーズンなどに不定期で運航する観光船などの事業者は全国に約560ある。カズワンと同規模の小型船舶を運航し、広島県内有数の観光地・宮島(廿日市市)を巡る宮島遊覧観光の沖本広重社長は「我が社の船は、子どもの乗客が多いこともあり、救命浮器と救命いかだの両方を搭載している」と話す。また、福井県内有数の景勝地・蘇洞門(そとも)(小浜市)を巡る遊覧船運航会社「そともめぐり」の溝口裕之社長は「救命いかだはもちろんあったほうがいいが、全国一律にいかだを搭載するのは予算的にも現実的でないだろう」という。 公益社団法人・日本水難救済会(東京都千代田区)の遠山純司常務理事は「水温の低い状況で起きた今回のような事故では、救命胴衣があっても海に飛び込むのは厳しい。地域事情に即した対応が不可欠であり、寒冷地の観光船事業者は旅客が水につからず安全に救助を待つことができる方法を早急に検討すべきだ」としている。【飯田憲】</p>