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仕入れ値も実は超高い!! トヨタカタログ廃止の衝撃 ディーラーにとってのメリットデメリットは?

 新車購入の際に、じっくり読み込む人も多いカタログ。収集を趣味にする人も多く、新車ディーラーには、カタログを求め、足を運ぶ人も多い。

 そんな中、トヨタが紙カタログを廃止するという情報が入ってきた。一人の自動車ユーザーとして、紙カタログが好きだった筆者にとっては残念な話だ。カタログにスポットライトが当たったこの機会に、ディーラーにおける紙カタログの立ち位置を紹介していきたい。

文/佐々木 亘、写真/ベストカー編集部、トヨタWEBサイト、AdobeStock(トップ写真=LIGHTFIELD STUDIOS@AdobeStock)

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■めくるのが楽しい!紙カタログのメリットとは

一部では都市伝説となっている(?)トヨタ センチュリーのカタログ

 クルマのカタログといえば、他の工業製品に比べて、エンターテインメント要素が強い。家電などでもカタログは存在するが、ペラペラの紙に、必要なスペックや特徴などを詰め込み、購入検討の時だけ読むものが多いだろう。

 それに比べると、クルマのカタログは装丁が丁寧だ。他の製品のカタログが広告紙のような質感なのに対して、クルマのカタログは分厚くしっかりとした紙に印刷が行われる。

 機能説明だけでなく、疾走感のある写真や、可愛らしく見える写真などが、初め数ページに掲載され、1ページずつめくっていくたびに、気分が盛り上がってくる。

 一冊の本のように仕上げられる自動車カタログ。幼少期からこのカタログに魅了され、クルマ好きとなった人も多いはずだ。言わずもがな筆者もその一人である。単純な販売促進グッズに収まらないのが、自動車カタログの立ち位置であろう。

 車種によって仕様を変えるのも面白い。センチュリーのような超高級車では、布調カバーの付いた表紙を備え、中には和紙が使われる。レクサスでは、写真の質を高めるため、写真印画紙に近い紙を使うこともあった。

 ポップな印象のコンパクトカーでは、ザラザラとした紙質に、デコボコと文字の浮きを感じられる印刷が施されるなど、工夫が見える。

 カタログを手に取るだけで、クルマのキャラクターが見えた。ユーザーの購買意欲を様々な方向から高めてくれるところも、紙カタログの良いところであろう。

■カタログ送付が終了しHPへ掲載

トヨタでは新車としてデリバリーする全車種のカタログをPDF形式でホームページ上にアップしている(トヨタWEBサイトより)

 現在トヨタは、新車としてデリバリーする全車種のカタログを、PDF形式でホームページ上にアップしている。自宅に居ながら全車種の最新カタログを、パソコンやスマホで閲覧でき、商談に臨むユーザーの動きも変わってきたようだ。

 これまでは、来店してから車両説明が詳しく行われていたが、カタログをWEB上で見ることができるようになった現在は、事前にユーザーがお目当てのクルマについて予習をしてくるという。

 そのクルマの良いところは熟知した上で、今乗っているクルマやライバルとの違いを、重点的に営業スタッフへ尋ねる人が増えている。商談時には紙カタログをテーブルに置くことなく、基本的には端末や画面を見ながら進めていくこともあるという。既に紙カタログの存在は希薄になってきたようだ。

■細かな変更に対応できない! 紙カタログはデメリットもたくさん

 魅力的な紙カタログなのだが、販売店にとってはデメリットも多い。

 まずは、小変更に対応しにくい点だ。フルモデルチェンジやマイナーチェンジなど、ある程度大きな変更であれば仕方ないが、一部改良でもカタログの中身はもちろん変わる。これに応じて、カタログは新しいものに差し替えられるのだ。余った古い情報のカタログは、全て廃棄される。

 さらに、商談スペースにあるカタログ棚や、カタログの在庫を保管する場所を確保しなければならない。カタログが無ければ、商談スペースを広くとったり、展示車をもう1台入れることができたりするかもしれないが、こうしたスペースがカタログによって無くなっているのもまた事実だ。

 新しいカタログが届けば、販売店独自の仕様表や価格表等を差し込み、販売店のスタンプやシールを貼って提供する。これもまた人力であり、大型モデルチェンジの際には、店舗スタッフ総出でカタログ作りをしなければならないこともあるのだ。紙カタログがあることで、販売店の仕事は増える。

 意外と高いのがカタログの仕入れ価格だ。アクアやプリウスなどでは、1冊300円から500円程度、アルファードやクラウンになると600円から1000円弱、センチュリーでは1冊がハードカバーの書籍程度の値段になる。

 販売店は、カタログを数十種類仕入れて、ユーザーには無料で配っているのだ。そしてクルマの改良により廃棄される。販売店の経済負担は、想像よりも大きいものだろう。

 楽しさ、ワクワク感はあるが、コストの面や環境問題への取り組みなどを考えると、紙カタログは廃止の方向へ向かっていくのが自然だ。絶版車、過去モデルのカタログに関してトヨタは、新車ページとは別に、カタログデータを保管するページを設け、ユーザーへ公開している。

 ページをめくる楽しみが無くなってしまうが、カタログは電子媒体として残るだろう。写真や情景づくりに凝った、カタログのカタチは変えず、これから読み手を楽しませるものであってほしい。

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