4月25日から先行予約が始まったマツダの新型SUV、CX-60。すでにプロトタイプの試乗記事で読者のみなさんはご存じかもしれない。このCX-60はマツダの大黒柱になるえるのか? 「いまさらディーゼル?」という声や「マツダはどうなっちゃうの?」と心配の声も聞かれる。
さっそくディーラーに出向いて、CX-60の見積書を作ってもらいながら、CX-60の中身はどうなのか、解説していこう。
文/柳川洋
写真/柳川洋、マツダ、ベストカーweb編集部
※本記事はディーラーからの取材情報をもとに筆者が記事化したものです
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■マツダ初のFRベースのSUV、新開発の直6クリーンディーゼルターボも選べるCX-60
SUVは運転しやすく実用性も高いが、その代わりに運転の楽しみはいくぶん犠牲になる、というこれまでの定説を覆す、「妥協のない走りの楽しさ」を目指したマツダの最新SUV、CX-60。マツダ初のFRベースのSUVでエンジンは縦置き、新開発の直6クリーンディーゼルターボエンジンも選べるなど、話題に事欠かない意欲的なモデルだ。
4月25日に先行予約が開始され、6月には顧客向けリーフレットが完成予定で9月には発売が開始され実車が見られるようになるという。
現時点ではディーラーに出向いても印刷された資料を手に入れることができず、セールスマン向けの事前資料をPCの画面上で見られるだけだ。そのため、情報が一部限定的であることをあらかじめお断りしておく。
CX-60のボディサイズは、全長4740×全幅1890×全高1685mm、ホイールベース2870mm。エンジンが縦置きになっているため、CX-5の全長4575×全幅1845×全高1690mm、ホイールベースが2700mmと比べると、全長が165mm長く、全幅が45mmワイド、ホイールベースが170mm長い。
またCX-8の全長4900×全幅1840×全高1730mm、ホイールベース2930mmよりはコンパクトだが、CX-5とCX-8の中間というよりはCX-8寄り。ただしスポーティ感を出すために全高はCX-5よりも気持ち低められている。
パワートレインは、新開発の3.3L直列6気筒クリーンディーゼルターボエンジンとその48Vマイルドハイブリッド版、CX-5でもお馴じみの2.5L直列4気筒ガソリンエンジンとそのPHEV版。スペックは、ディーゼルが231ps/51.0kgm、マイルドハイブリッド版は254ps/56.1kgm、2.5Lガソリンは188ps/25.5kgm、PHEV版は電気だけで60kmの走行が可能な17.8kWhのリチウムイオン電池が搭載されるという。
■CX-60のパワートレイン
・SKYACTIV-G 2.5直列4気筒ガソリンエンジン(188ps/25.5kgm)
・SKYACTIV-G 2.5(PHEV)直列4気筒ガソリンエンジン+プラグインハイブリッド327ps/51.0kgm)
・SKYACTIV-D 3.3直列6気筒ディーゼルエンジン(231ps/51.0kgm)
・SKYACTIV-D 3.3(MHEV)直列6気筒ディーゼルエンジン+マイルドハイブリッド(254ps/56.1kgm)
■CX-60の価格とラインナップが判明
■CX-60のラインナップと価格
25S Sパッケージ:FR/299万2000円、4WD/321万7500円
25S Lパッケージ:FR/341万5500円、4WD/364万1000円
25S エクスクルーシブ モード:FR/384万4500円、4WD/407万円
XD:FR/323万9500円、4WD/346万5000円
XD Sパッケージ:FR/358万500円、4WD/380万6000円
XD Lパッケージ:FR/400万4000円、4WD/422万9500円
XD エクスクルーシブ モード:FR/443万3000円、4WD/465万8500円
XD-ハイブリッド エクスクルーシブ スポーツ:4WD/505万4500円
XD-ハイブリッド エクスクルーシブ モダン:4WD/505万4500円
XD-ハイブリッド プレミアム スポーツ:4WD/547万2500円
XD-ハイブリッド プレミアム モダン:4WD/547万2500円
PHEV Sパッケージ:4WD/539万円
PHEV エクスクルーシブ スポーツ:4WD/584万6500円
PHEV エクスクルーシブ モダン:4WD/584万6500円
PHEV プレミアム スポーツ:4WD/626万4500円
PHEV プレミアム モダン:4WD/626万4500円
※ディーラー調べ
グレードは多岐におよぶが、ファブリックシートのSパッケージ/Lパッケージ、通常のレザーシートのエクスクルーシブ、ナッパレザーシートが奢られるエクスクルーシブ・プレミアムが用意される。
ベーシックグレードのガソリン車、2WDのSパッケージは299万2000円から、ディーゼルのXD、2WDは323万9500円から、という戦略的な価格設定がなされている。
エクスクルーシブ以上のグレードには、価格が同じスポーツとモダンという2種類が用意される。
スポーツはフロントグリルの外周部やホイール、ミラーなどがブラックアウトされ、フロントグリルメッシュも横に広がるタイプ。モダンはクロームベースのフロントグリル外周部、切削加工のホイール、縦に広がるフロントグリルメッシュなどが特徴となっている。
最高級グレードのエクスクルーシブ・プレミアムスポーツはキルティング入りのタン革シート、エクスクルーシブ・プレミアムモダンにはセンターにグレーのアクセントの入った白い革シート、日本の匠の技をイメージしたインテリアが用意される。価格はどちらも626万4500円となっている。
■CX-60の売れ筋グレードと納期は?
筆者が訪問した販売店では、CX-30の予約がすでに7台入っているとのこと。そのうち5台がXD-HVすなわちディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッド4WDのエクスクルーシブ・プレミアムスポーツ。残りの2台は「素」のガソリンとディーゼルターボ1台ずつ。同じ価格のディーゼルマイルドハイブリッド4WDのエクスクルーシブ・プレミアムモダンや、ガソリンPHEVにはオーダーが入っていないそうだ。
実車を見ることなくマツダに注文を入れる人は、「V6と違って過給機が一つで済み、ディーゼルエンジン特有の振動が抑えられる直列6気筒ターボで、舵角も確保でき取り回しのいい縦置きレイアウト、大排気量ディーゼル特有のもっさりした低回転域というネガをマイルドハイブリッドが打ち消す、FRベースの走りのいいスポーツSUVのようなマツダがアピールしたいポイントを完全に理解している人」。
もしくは「BOSEプレミアムサウンドシステムやサンルーフなど、メーカーオプション全部コミコミでお得感のあるエクスクルーシブ・プレミアムのグレードはガソリンPHEVやディーゼル+マイルドハイブリッドに設定されているが、ガソリンPHEVは充電にまだ煩わしさを感じて、消去法的にディーゼル+マイルドハイブリッドを選んだ人」。
さらに「先進安全装備も国産車最高峰レベル、内装の質感もレクサスや輸入車対比で全く遜色ないレベルに見え、それでいてオプション全部込みで乗り出し620万円弱というのは、ボルボXC60やBMW X5に比べて200万円から400万円ぐらいお買い得じゃないか」と考える輸入車からの乗り換えユーザーのいずれかだという。
割安な「素」のガソリン(FR/299万2000円)とディーゼルターボ(FR/323万9500円)が人気となるかと思いきや、「素」のガソリンはCX-5で既に使われていて値段もほぼ変わらず、CX-60をわざわざ待って選ぶ理由がないこと、「素」のディーゼルよりもディーゼル+ハイブリッドの相性の良さをマツダが一生懸命アピールしていることから、先行予約をしてまで欲しいと思う人は、「CX-60ならでは」のグレードに集中しているようだ。
ガソリンとディーゼル、ディーゼル+マイルドハイブリッドは、4月下旬に予約を入れれば9月から10月の納車になる可能性が高いとのこと。ガソリンPHEVモデルは、リチウムイオン電池の確保の問題もあり、納車は少し遅れて12月頃の予定だそうだ。
■人気グレードの実際の見積もりは?
さっそく、ディーラーで見積書を作ってもらった。ボディカラーはソウルレッドクリスタルメタリック、8万8000円のオプション。他の外装色オプションはこれより安い。
現時点で一番人気のディーゼル+マイルドハイブリッドのパワートレイン+フル装備のエクスクルーシブ・プレミアムスポーツに、ディーラーオプションとしてナビやETC、フロアマットやドライブレコーダー、ボディコーティングをつけてもらうと、乗り出しで620万円弱となった。ボディコーティングを除けば、610万円程度になる。
またガソリンPHEVのエクスクルーシブ・プレミアムスポーツに、同様にディーラーオプションをつけてもらったら乗り出し価格は約697万円になった。
まだ確定していないが、国のPHEV向け補助金が55万円、自治体の補助金も東京都だと45万円受給できる可能性があるとすると、実質的には600万円ほどの乗り出し価格になる。
ちなみにCX-60購入にあたっては3年で60%の残価設定ローンが使える予定という。これまでCX-5や8では3年の残価設定は55%だった。
仮に3年後に相場が下がっていても、車両本体価格の6割で下取り保証されているわけなので、このクルマに対するマツダの自信と、直近の中古車市場の堅調さが表れていると言っていいだろう。
■「いまさら新開発ディーゼルエンジン?」と言うことなかれ
EVへの移行が進むなか、いまさら大排気量ディーゼルエンジンを新開発? マツダの将来は大丈夫? と思う人もいるかもしれない。
だが現在売れ筋のSUV市場で、マツダならではの乗り味の良さを押し出したクルマを作り、「他のメーカーのクルマより少々高くても、マツダのCX-60がいい」、という顧客を引きつけて収益を確保し、巨額な次世代車の研究開発費用を捻出する、というのが、ニッチな自動車メーカーであるマツダの宿命であり戦略なのだ。
マツダにとって「売れてもらわなくては困るクルマ」であるCX-60。マツダの命運を占うクルマとして、「金の卵を産むガチョウ」になれるのか、注目していきたい。
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投稿 価格は299.2万円から 新型マツダCX-60の先行予約スタート! さっそく見積もりをもらいに行ってきた はたしてマツダの大黒柱になるえるのか? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。