| F1以外でもフェラーリがライバルとしのぎを削る姿を見ることができるとは嬉しい限り |
経験豊富なコンストラクターの作るLMDh勢との争いからは目を離せない
さて、フェラーリは2023年からル・マン24時間レースに復帰すると発表しており、ル・マンを戦うレーシングカーについては早ければ6月にもフィオラノ・サーキットにてテストが開始されると言われます。
フェラーリが2023年にル・マン24時間レースへの復帰を決めた背景には「2023年がプロトタイプ(プロトティーポ)を使用した最後のレースから50年」という節目であることが大きく関係しているとされ、そして復帰の場は耐久レースのトップカテゴリであるル・マン24時間レースを置いて他にはない、という判断から。
フェラーリはかつて9度の総合優勝を(ル・マンにて)獲得しているものの、1965年以降は優勝から遠ざかっていて、しかし今回は「プロトタイプを使用した50年ぶりのレース」にて優勝を目指すことになります。
フェラーリはあらゆるリソースを活用してル・マン24時間レースでの優勝を目指す
フェラーリのアティヴィタ・スポルティブGT部門のボスとしてLMHプロジェクトを率いるアントネッロ・コレッタ氏によると、「50年ぶりとなる今回のファクトリー・プロトタイププログラムは、社内のあらゆる技術的リソースを活用している」とのこと。
加えて「フェラーリにあるテクノロジーは、我々にとって最も重要な資産のひとつであり、すべてのプロジェクトでこのテクノロジーを共有するのは普通のことだ」と語っていますが、これは「モータスポーツ活動を行うための資金を稼ぐために市販車を販売している」フェラーリとしてはしごく当然なのかもしれません。
そしてLMH(ル・マン・ハイパーカー)はクローズドボディを持つという性質上、F1のみではなくロードカーにおける経験も十分に生かせると語っており、フェラーリのエンジニアは「市販車からF1まで」様々な知見を生かして新しいレーシングカーを開発しているということになりそうです。
上述の通りこのレーシングカーは6月にもシェイクダウンが行われる予定であり(すでに1年前からバーチャルではテストが行われている)、つまりある程度の形ができあがっているということになりますが、前出のアントネッロ・コレッタ氏は「LMHハイブリッドプロトタイプに採用されるソリューションのいくつかは、すでにF1レベルとロードカーの両方における過去の経験から得られたもの」「フェラーリは、非常に重要な技術的伝統を持つ偉大な企業であり、我々の役割は常にイノベーターである」ともコメント。
さらには「新しいLMHクラスのレギュレーションを考えると、知識を漁らないわけにはいかない。強調したいのは、LMHは会社の一部のプロジェクトではなく、フェラーリという会社の横断的なプロジェクトである」とも述べていて、当然ながらフェラーリとしては相当な力をこのプロジェクトに注いでいると見て良さそう。
ちなみにこのLMHを担当する「アティヴィタ・スポルティブGT」はこれまでの「コンペティツィオーニGT部門」と「コルセ・クリエンティ部門」を統合したものだといい、フェラーリが今後さらにモータースポーツ部門を強化してゆくのは間違いないものと思われます。
参考までに、6月以降に行われるテストについては(WECのGTE Proクラスのチャンピオンである)アレッサンドロ・ピア・グイディ、ジェームス・カラドなど、フェラーリの既存GTドライバーを起用するそうですが、実際にル・マン24時間レースに参戦する際の布陣は今のところ明かされておらず、こちらの発表はまだまだ先になるかもしれません。
フェラーリはIMSAにも参戦の可能性
なお、アントネッロ・コレッタ氏は「フェラーリにとって、アメリカ市場は極めて重要だ」と語っており、そのため北米にて開催されるIMSAスポーツカー選手権に参戦する可能性も示唆。
これについては、IMSAとル・マン24時間レースの両方に参戦できる「LMDh」規定を活用してポルシェ、ランボルギーニ、BMWといった欧州の自動車メーカーがIMSAへと参戦し、北米でのモータースポーツにおける存在感を増すであろうことへの危機感から来る発言だと思われ、しかし2023年についてはル・マン24時間含むWECのみの参戦となることについても言及。
なお、フェラーリのル・マン24時間レース用マシンはLMDh規定に則っていないので、そのままではIMSAに参戦できず、IMSAで戦うにはこのマシンを改良する必要がありますが、たとえそのコストがかかったとしてもフェラーリとしては「他社が設計したLMDh車両を使用することはできない」といったところなのでしょうね。
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