BMW M4 Cabriolet Competition M xDrive×Porsche 911 Targa 4
走り原理主義の硬派モデルに与えられたオープンスタイル
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ポルシェ 911とBMWのM4(歴代M3も含む)といえば、数あるスポーツカー/スポーティカーでも、走り原理主義の硬派なエンスージアスト御用達の代表格である。それなのに・・・というか、この種のクルマにこそオープンが用意されるのが世のお約束である。その理由のひとつは、世界のスポーツカーの最大消費国が歴史的にアメリカ西海岸であることだ。一年中オープン日和の彼の地では、スポーツカーは屋根なしが常識。理屈ではない。だから、ポルシェであろうとBMWであろうと、オープンが必須なのである。
知っている人も多いように、911のタルガはフルオープンボディでは安全基準クリアが難しかった1960〜70年代に、いわば苦肉の策として取り入れられた形式だった。しかし、83年に911初のカブリオレが登場してもタルガは姿を消さなかった。それどころか、993以降はガラススライドルーフになったり、996では開閉式リヤガラスハッチが追加されたりと「もうひとつのオープン911」として様々な試みがなされてきたのも興味深い。最新のそれは中央開閉部分を電動格納ソフトトップにしつつ、オープン時には往年のタルガらしい姿となる。
あえて力を抜いて乗るのが最上級の洒脱な行為だ
M3/M4も本来オープンとは無縁のホモロゲーションモデルだったにもかかわらず、初代からM3カブリオレが用意された。その後は一時的にカブリオレが設定されなくなるものの、4代目のM3で電動メタルトップとして復活してからは定番化した。今回の最新型はベースとなる4シリーズ同様にソフトトップになった。考えてみると、ソフトトップのM3/M4とは初代以来ひさびさの原点回帰でもある。
こうして屋根なしの911とM4を並べてみると、ゴリゴリの武闘派エンスーの向きには「せっかくのボディ剛性が・・・」とツッコミを入れられそうだ。私も若い時分は同じように思っていたひとりだが、どっぷり50代になると人間は変わる。最近はこういう高性能スポーツカーにあえて力を抜いて付き合うのが、酸いも甘いもかみ分けた最上級に洒脱な行為に思えてきた。
最新のオープンカーはかつてほどぬるいクルマではない
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とはいえ、最新のオープンカーはかつてほど、ぬるいクルマではない。トップを下ろしても15年前なら、屋根なしとはとても思えないくらいの剛性感と一体感が醸し出されている。また、屋根を閉めると見た目からクーペ化する911 タルガはもちろん、M4のソフトトップも今や分割パネルが内蔵されており、トップを閉めればボディ前後はハードに剛結される構造になっている。これは現代のカブリオレならではの最新技術で、911の(タルガではない)カブリオレのソフトトップ構造も同じく分割パネル内蔵型である。
実際、ソフトトップを上げて走るM4は、クーペと区別がつかないほど剛性感にあふれており、ステアリングもすこぶる正確でシャープ。直接乗り比べればクーペとの走りの差はゼロではないだろうが、単独で乗っているかぎりは、内蔵パネルのないファブリック構造が唯一残るクオーターピラーからのわずかな透過ノイズが気づかされるだけである。
カブリオレよりも明らかに穏やかなタルガ
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新しいM3/M4は伝統の2WDに加えて、史上初の4WDが用意されるのもニュースだが、カブリオレについては4WDのみの設定となる。この点は911 タルガも同じ。オープンボディの操縦安定性のわずかなネガをカバーして、より開放的に気軽に楽しむための策だろう。
個人的にはM3/M4の4WDも初めての体験だったが、2WDのヒリヒリとした緊張感が良くも悪くも薄れていたのは事実で、路面状況や路面の曲率をあまり気にせずにアクセルが踏めるのは素直に気持ちいい。剛性感やステアリングレスポンスにはカブリオレや4WDのネガはほとんど感じないM4だが、車重が2WDクーペ比で200kgも重くなっているだけに、動力性能だけは明確におとなしくなっている。まあ、少しばかりおとなしくなっても、絶対的な速さに不足があろうはずはない。また、市街地やリゾートをオープンで軽く流すときの乗り心地には、重さがいい方向に効いている。
見た目にはカブリオレ以上にクーペに近い911 タルガだが、その走りは意外にもオープンでもクローズでもカブリオレより明らかに穏やか・・・というか、正直いうと、ユルい。車重がカレラ4 カブリオレより約60kg重いことに加えて、ロールバーやガラスキャビンといった重量物がボディ後半の低くない位置にあり、その重いガラスキャビンがボディと別体構造である・・・などがその理由だろう。
コーナーで頑張りすぎたときのリヤの動きが唐突なのもタルガ特有のクセっぽいが、フロントタイヤが常に牽引してくれる4WDなら不安感はまったくない。物理的にありえるバリエーションは基本的にすべて用意するのが911の流儀だが、タルガだけはあえてカレラ4のみなのは、なるほど見識である。
飛ばすだけが楽しみではない。両車からそんなメッセージを受け取った
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かつてなら、このように重さやユルさを感じさせる911なんて、まるで魅力的に思えなかったが、今はタルガ特有のリズム感がじつに心地いい。私も年を取ったからか。
911やM3/M4といえば、突き刺さるように鋭い機動性が最大のアイデンティティであり、それを存分に味わえるのはクーペである。ただ、一方で「飛ばすだけがクルマの楽しみじゃない」という、そのカブリオレやタルガのメッセージは、クルマを取り巻く環境が悪化しつつあるこの時世には、あらためて感じるところがあるのも事実だ。
REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
【SPECIFICATIONS】
BMW M4 カブリオレ コンペティションM xドライブ
ボディサイズ:全長4805 全幅1885 全高1395mm
ホイールベース:2855mm
車両重量:1930kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/2750-5500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/35R19 後285/30R20
車両本体価格(税込):1462万円
ポルシェ 911 タルガ4
ボディサイズ:全長4530 全幅1850 全高1300mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1680kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2981cc
最高出力:283kW(385ps)/6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1900-5000rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前235/40ZR19 後295/35ZR20
車両本体価格(税込):1760万円
【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
【関連リンク】
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・ポルシェ 公式サイト
https://www.porsche.com/japan/