バスでやってはいけないことは法令で決まっているモノが数多くある。原則として常識的なモノが多いが、じつはバスに乗ると車内に禁止事項がいくつか記載されているのをご存じだろうか。その中でも「みだりに話しかけること」という項目があるのだが、一体どういう意味なのか? 今回はその真相を解説する。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
根拠法例は「旅客自動車運送事業運輸規則」
法律は国会で制定されるが、あくまでも法律は大枠であって、細かいことについては政府や関係省庁が政令や省令という命令により決めることになっている。
道路運送法の委任により制定されている「旅客自動車運送事業運輸規則」に乗務員や旅客についての決まりが定められている。
本稿の運転士に話かけてはいけないというのは正確には同規則第53条5号に旅客の禁止行為として「走行中みだりに運転者に話しかけること。」が明記されている。これには除外規定があり「自動車の事故の場合その他やむを得ない場合のほか」となっている。
運転士側にも規定がある!
一方、乗務員にも禁止事項が定められていて、同規則第49条第3項2号に「旅客の現在する自動車の走行中職務を遂行するために必要な事項以外の事項について話をすること。」が明記されている。
これらの理由は明白で、運転操作に不要な会話をすることにより注意力が削がれることを防止し、もって安全な輸送に資することに尽きる。よって、運転士の車内放送や案内放送は「走行中職務を遂行するために必要な事項」として問題はない。
用事のある時は停車中に!
実はこれらの規定には「車掌」という項目があり、路線バスでも車掌乗務が前提の規定になっている。現在ではワンマンバスがほとんどなので車掌が乗務しないバスの規定もあり若干ややこしいものの、以上のことから運転士と旅客は走行中はみだりに会話してはいけないことになっている。
では用事があるときはどうすればよいのか。例えば両替は旅客自身でできるので運転士に話かける必要はないが、1日乗車券の購入やICカードへのチャージは運賃箱の操作が必要なため運転士に申し出る必要がある。降車停留所が分からないので聞きたい場合もあるだろう。
このような場合には、停車中に行うことが基本だ。信号停車だといつ発車するのかわからないため、用件だけ言っておけば運転士によっては次の停留所停車中に続きを案内してくれるし、信号待ちが長いと判断できるときには呼んでくれるのでそれに従えばよい。
すべては安全のため
路線バスは不特定多数の旅客が乗り合うため、車内では何が起きるのかわからない。バスの外では進路開通や閉塞区間のような概念がある鉄道の信号システムとは違い、道路交通の場合は信号に従っていても他の交通とのタイミングや接近は都度目視で確認する必要があり、ワンマンバスでは実に多くのことを運転士一人がマルチタスクで行っている。
よって旅客も最低限、車内に掲示されている禁止事項や遵守事項は守って安全に気持ちよくバスに乗車したい。
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