ドライブしている時に、一見してフツーとは違うクルマを見かけて、「あのクルマに付いているパーツはいったいなんだろう?」と興味を持った経験は誰にでもあるはず。
それはたとえば、牽引フックやアンダーネオン、グリルガード、アイラインステッカーなど、いわゆる「カスタムパーツ」とか「チューニングパーツ」と称されるアイテムである。
今回はこれら、知らない人にとっては不思議なパーツだが、街中でもよく見かけられるモノにスポットを当て、それぞれの意味について解説していこう。
文/フォッケウルフ
写真/フォッケウルフ、トヨタ、三菱
■世界に1台だけのクルマに乗るために
クルマは大量生産される工業製品(一部を除き)なので、どんなにこだわって選んだとしても自分と同じ仕様のクルマに出会うことは避けられない。販売台数が多い人気車種となれば、出会う確率はさらに高まるのは必至だ。
そこで「ほかとは違う」クルマに仕上げるべく、愛車に改造を加える「カスタマイズ」とか「チューニング」を行う人が多く存在する。走行性能に特化したものや見た目を自分好みにするなど、その目的や趣向はさまざまだが、「世界に1台しかないクルマに仕立てたい」という狙いはクルマを改造する人全員に共通している。
しかし、クルマに疎かったり、最近興味を持ち始めた人は、それらのパーツに対して「どんな意味があるの?」「なんのために?」といった疑問を抱くに違いない。そこでここからは、普通とはちょっと違うクルマ(?)に取り付けられている「奇妙なモノ」=カスタム&チューニングパーツの特徴や効果について紹介していく。
もちろん、クルマのカスタムにはさまざまな手法があり、いずれも「ほかとの違い」を明確にするために行うものだ。ただ、カスタマイズで注意してほしいのは、車体の寸法や重量など細かく定められている保安基準に適合している範囲で行うこと。
なぜなら、有効な自動車検査証の交付を受けているクルマは、クルマ本体や部分的な改造、その装着の取付けまたは取り外し、その他これに類する行為で保安基準に適合しないことを行ってはならないからだ。
保安基準に不適合だと車検に通らず、公道での走行が禁じられてしまう。カスタマイズやチューニングすることでカーライフが楽しくなるのは間違いないが、さまざまなカスタムのなかで自分と愛車に合うのはどれか、そしてそれらが合法であるか否かも理解したうえで楽しんでほしい。
■お手軽なものからマニア向けまで選べるカスタムパーツ
●エアロパーツ ~見た目の印象をガラッと変える「ドレスアップ」の常套手段~
エアロパーツは、クルマのボディ外部に装着することで走行時に生じる気流の流れを制御して安定性を高めたり、空気抵抗を軽減して燃費や冷却性能を向上させたり、印象をガラッと変えてドレスアップするためのパーツだ。装着部位ごとに「フロントスポイラー」「サイドステップ」「リヤスポイラー」「リヤウイング」といったパーツがあり、それぞれの部位に当たる走行風をコントロールする。
空気抵抗は速度の二乗に比例して増えていくので、特に高速道路を走行するというシーンなら本来の効果が実感できる。しかし、レーシングドライバーのような鋭敏なセンサーの持ち主でない限り、一般道を走る速度で効果を感じるのは難しい。
スポーツカーをベースにしたカスタムの場合、サーキットでのスポーツ走行時に操縦性を高める目的で装着することもあるが、街なかで見かけるエアロパーツ装着車の多くは、走行性能の向上よりも見栄えを重視する傾向が強い。
●ダクト・バルジ ~クルマのボディに開いているあの「穴」はなんのため?~
特に改造を施していないノーマル車でも、ボンネットやフロントバンパーに穴が設けられているクルマがある。スポーツカーによく見られるこの穴は、決して飾りではなく、冷却のために空気を取り込むことを目的に設けられているものなのだ。また、取り入れた空気を逃がすための穴も必要で、こちらは前後フェンダー周辺に設けられていることが多い。
いずれもスポーティイメージの演出に大きな効果をもたらしているということから、「穴が開いている風」に見せるダミーダクトと呼ばれるパーツがあり、ドレスアップ派から人気を集めている。外装系アイテムのなかでも価格が手頃で、見栄えを変える効果は大きい。
●ガーニッシュ ~ある部位をさり気なく変えて「違い」をアピール~
ガーニッシュとは、「飾り」とか「装飾」という意味があり、クルマの場合は、内外装を問わずさまざまな箇所に取り付けられた装飾パネルのことを指す。見た目はボディ同色だったりメッキ調やカーボン調など、いろいろと用意されている。
見た目の印象を変えるという点では、エアロパーツほどに大きな効果はもたらさないものの、費用が格段にお手頃なうえに、ワンポイントのアクセントとしてさりげなく他との違いをアピールするには有効な手段だ。なおかつ装着は両面テープで車体に貼り付けるので、コツさえ押さえれば専門的な知識や技術は必要としない。
同様に、車体に「貼る」系のアイテムとしては、アイラインステッカー、先述したダミーダクトもお手軽なうえに違いを主張するには効果的だ。
●スムージング ~あるべきところに出っ張りがなくてスッキリしている!~
スムージングとは、フェンダーやドアのプレスライン、バンパーのくぼみやドアノブや鍵穴など、本来あるべき物や段差をなくして表面を滑らかにするカスタム手法のことだ。
ハッチバックのリアゲート開口用のノブを外して平坦にしたり、フロントナンバーを移設して、正規の場所を平坦にしたり、バンパー側面に設けられた反射板やサイドマーカーを外してスッキリさせているクルマをよく見かける。
ハードなカスタム車になると、4ドアのリアドアノブ部分やウォッシャー液の出るところをスムージングするツワモノもいる。
■保安基準に適応させて個性をさらに強烈アピール!
クルマをカスタムすることで個性がアピールできることは自明で、「他人と被った」という残念な思いをしなくて済む。そしてなにより車への愛着が深まり、カーライフがより一層楽しいものになるのは間違いない。
しかし、以下のようなパーツは、気をつけないと保安基準に不適合となり、安全面でも問題になる可能性があるパーツがあることを覚えておこう。
●牽引フック ~レーシングカー的な雰囲気を演出できるが出っ張り過ぎに注意~
牽引フックはノーマルでも装備されているが、普段はバンパーの奥に隠れていて、いざというときにバンパーに設けられた穴からフックをネジのように差し込んで使用する。この部分に、レーシングカー風の牽引フックを常時見えるように取り付けるのが牽引フックカスタムで、サーキットなどクローズドコースでスポーツ走行をする場合には装着が義務付けられていることから、スポーツカーなどでは装着した車両をよく見かける。
車載されている標準品ではなく、形状やカラーがいろいろある社外品に変えるわけだが、牽引という機能以外に、フロント(またはリヤ)まわりにアクセントを与えるという効果があるので、ドレスアップアイテムとして選ぶオーナーも少なくない。
注意点としては、道路運送車両の保安基準 第18条にある、「車体の外形には鋭い突起がないこと」に従い、取り付けはバンパーより全長±3cm、全幅が±2cm、全高±4cmの範囲に収まっていること。ただし、リベットや溶接による取り付けは不可となっている。
●マフラーカッター ~リアビューをスポーティに演出するなんちゃってマフラーパーツ~
マフラーの先端部分に取り付けるパーツで、メッキ調の素材で高級感を演出したり、大口径タイプで存在感をアピールできることから、今どきはノーマル車でも装着されたり、純正オプションとして設定されることもある。
錆からマフラーを保護するという役割もあるが、やはりドレスアップアイテムとして選ばれることが多い。取り付けもマフラーにかぶせるだけという手軽さで、ドレスアップパーツのなかでもコストパフォーマンスの高さは群を抜いている。
装着することに違法性はなく、装着状態で車検にも通る。ただし、高さはマフラーカッター最下部が地上から90mm以上で、車体の最後部からの突出は10mm以内であることが条件。
10mmはみ出してしまう場合は、マフラー先端に丸みがついていて2.5mm以上の曲率半径があれば問題ないとされているが、極端に車枠をはみ出している場合は危険物とみなされる場合があるので注意が必要だ。ちなみにマフラーカッターをつけても排気音は変わらない。
●カナード ~空力効果が得られるエアロパーツは危険と紙一重~
カナードとは、フロントバンパーの両脇に装着する板状のパーツのことで、これによって、フロントまわりの空力効果をもたらしてダウンフォース(押さえつける力)を稼ぐことができる。高い速度域でより効果を発揮するため、高速走行時の安定性が増したり、フロントの挙動がクイックにできることが期待できるので、サーキットでは高速コーナー入り口での回頭性の向上に大きく貢献する。
これも取り付けに際して保安基準はないが、カナードは突起物にあたるため、歩行者や自転車を保護する目的で、道路運送車両の保安基準 第18条に適合しなければ車検に通らない。もちろん、傍目に見て鋭く尖っている形状の物は公道での使用は厳禁だ。
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