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 日常のメンテナンスの大切さは重々承知しているつもりでも、ついついも日々の忙しさにかまけて「まだ大丈夫だろう」と油断していると、想像以上のトラブルに見舞われて「うっかり」レベルでは済まなくなってしまうこともありえる。

 そこで、反省の念も込めて、ついうっかり、やってしまったクルマの操作や、うっかり見逃してしまった故障の兆候など、クルマを長く乗りためにやってはいけない失敗タブーを紹介していこう。

文/岩尾信哉
写真/Adobe Stock(トビラ写真/Piotr@Adobe Stock)

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■まだ大丈夫まだ大丈夫……ブレーキからの「キーキー音」を放置すると

 街を走るクルマから「キーキー」という音が聞こえて耳障りだという場面に出くわすことは、最近は少なくなったように思えるが、決してゼロというわけでもないだろう。

 いわゆる「ブレーキ鳴き」は、ブレーキ周りから発生する「キーキー」といった異音のこと。ディスクブレーキの場合、車輪とともに回転するディスクローターが、ブレーキキャリパーに組み込まれた摩擦材のブレーキパッドに挟まれると車両が減速するという仕組みだ。

 一連の作動行程のなかで、ディスクローターとブレーキパッドが接触した際の振動によって、ブレーキ鳴きが起こる。ブレーキペダルを踏んでディスクローターとブレーキパッドが触れる際に、接触部に対して均一に圧力がかからないと、振動(音)が発生してしまうことになる。

 気をつける必要があるのは、修理や点検を受けた際にブレーキ以外の箇所が原因になっていないか注意しておくこと。音の種類にもよるが、ブレーキキャリパーや周囲の部品に問題があるケースなど、異音が発生している箇所を特定することは意外に難しい。ともあれ、ブレーキ鳴きの症状があらわれた場合には、発生する状況を慎重に確認したい。

「鳴きの」原因として真っ先に頭に浮かぶのは、ブレーキパッドの磨耗だ。ブレーキパッドは磨耗によって有効部の厚みが減ると、あらかじめ異音が発生するように設計されている。このため、ブレーキの異音は、ブレーキパッドが磨耗していることの警報音ともいえるからだ。

 早めにディスクローターやブレーキパッド周りなどを、担当ディーラーのサービス部門のスタッフなどにチェックしてもらい、必要であれば調整など適切な作業を実施してもらうべきだ。

ブレーキ鳴きの対策としては、ブレーキディスクの損傷やブレーキパッドの消耗など、車両の使用年数や自身の走らせ方ととともに、部品の経年劣化を考慮して、部品の交換を実施するべきかどうかを考えるべきだ(malkovkosta@Adobe Stock)

 そのまま放置しておけば、ブレーキパッドの偏摩耗などがあれば、最悪の場合ではディスクローターに傷をつけてしまい、ディスク全体を平滑にするために研磨することになりかねない。

 あるいはローター交換というお金を大量に出費する可能性もあるので注意すべきだ。なにより、安全に止まるというのはクルマの性能の基本中の基本。不慮の事故を避けるためにも、くれぐれもないがしろにすることのなきように!

■忘れられがちなブレーキの「エア抜き」

 ブレーキのメンテナンスについて加えておきたいのが、「エア抜き」だ。あまり採り上げられない項目かもしれないが、心に留めておきたい。

 エア抜きとは、ブレーキ部分(主に油圧系統)に発生した気泡を抜くこと。ブレーキの効きが悪い、あるいはブレーキペダルを踏む際に違和感があると感じたら、ブレーキ部分に気泡が発生している可能性がある。

 ブレーキの油圧系統内に気泡が生じると、ブレーキペダルを踏んで油圧をかけても気泡を圧縮するために使われるため、ブレーキの効きが悪くなる症状が発生する。気泡が発生するのはブレーキフルードであり、ブレーキの効きが鈍くなったと感じたら、ブレーキフルードの交換を勧めたい。

 ただし、交換の際に注意してほしいのは、調整の前後でブレーキングの際の踏力やフィールがどう変わったのかについて慎重にチェックしてほしいということ。

 安全面を考えれば、基本的にディーラーや整備工場のスタッフに依頼してほしいが、踏み応えというのはあくまで感覚的なものだから説明するのが難しいからだ。さらにいえば、ブレーキフルードを交換しても「こんなものかなあ」と変化が感じられないこともあるからだ。

 ブレーキフルードの交換時期は、2~4年が交換目安となっているので、車検の際に交換することを目安にしてほしい。むろん急激にブレーキフィールに変化があれば、原因として「エアがかんでいる」ことを疑ってみることに意味はあるはずだ。

■停まったままでの据え切りはいいわけない 労わることが必要だ

停車した状態でステアリングホイールを回すことを「据え切り」という。据え切りはパワステ機構に大きな負担をかける

 切り返しが必要な狭い路地を抜けるような、日常の場面で据え切りをしなければならないケースは頻繁に出くわすわけではない。けれども、時間に追われていたりすると、ついつい荒っぽいステアリング操作を行ってしまうというのは心当たりがあるかもしれない。

 力任せに据え切りしてしまい、ステアリングに負荷をかけ続けるというのは、機械モノにすべき行為ではないことは想像がつくはず。ステアリングを作動させるギア機構は、直接的に接続するわけではないとしても、接続するステアリングのハブ周りやサスペンションアームに備わるラバー製ブッシュなどにとって、余分な負荷となってトラブルの元になる可能性がある。

 少々踏み込んでトラブルをもたらす要素を考えるために、パワーステアリング機構の仕組みをおさらいしておこう。

 大まかにいって、現状のほとんどのステアリング形式はラック・ピニオン式(かつてのメルセデス・ベンツはボール循環式を採用していた)が採用され、もはや現代のクルマには不可欠といえるパワーアシスト機能(いわゆるパワステ)は油圧式と電動式、これらを組み合わせた電動油圧式の概ね3種類がある。

 油圧式のアシスト機構は、エンジン回転をクランクシャフトからベルトを介してパワーステアリング用ポンプに伝える。ポンプ内のパワステフルード(オイル)が作り出す油圧トルクがステアリング・ギアボックスに伝わり、ステアリングの操舵力を補助する。

 電動式パワーステアリングは、電気モーターを使用してステアリング操舵に必要なトルクを生み出す方式を採る。ステアリングを支えるコラムやステアリングが接続するステアリングラック、ピ二オンギアの作動などをモーターでアシストする方式がある。

 モーターを利用した電子制御が可能なため、エンジンのパワーを利用しないこともって、燃費への影響も少ないなど、現在ではこの電動式が主流となった。自動車線維持/変更機能など将来の自動運転機構などの実現には、電動式パワステの機能は必須となっている。

 油圧式パワステの弱点はいうまでもなく、油圧系からのオイル漏れだ。走行中ではほぼ作動状態にあるポンプ周りなどでは経年劣化は避けられない。オイル漏れが発生していても、急激に油圧、具体的にはステアリングのアシスト量が変化しないと認識しにくい場合もあるので、定期的なチェックが欠かせない。

 据え切りのようなシステム全体に負荷をかけてしまうような操作は避けたほうがよい。これは油圧を介さない電動式(油圧式と組み合わせる場合もある)パワステにも当てはまり、メカニカルな作動のみでも気を遣って操作するに超したことはない。

 油圧式パワステの異常の原因の多くは、パワステフルードの不足による異音や動作不良ということになる。適切な量までフルードを補充すればトラブルの症状は改善される。

 それでも症状が収まらない場合には、ステアリングのジョイント部など、メカニカルな故障を考慮して、ディーラーや整備工場で詳細なチェックを受けるべきだ。ブレーキ周り同様に微細なトラブルであっても走行中に見舞われた場合には、トラブルシュートが間に合わず、大きな事故につながりかねないので、常日頃から注意しておこう。

■エンジンオイル、真っ黒でも知らん顔 人間の血と同じと思ってほしい

 これは前出の2項目とはトラブルの性質が異なるかもしれない。燃料を入れるためにサービスステーションに立ち寄り、スタッフにエンジンオイルの交換を勧められても、それなりの出費がかさむのだから、そう簡単には受け入れられないのは、どこか「いつでも交換できる」という妙な安心感があるのかもしれない。

 ディーラーでの定期点検などで油脂(フルード)系を見てもらうというのは安全面でも多少は気楽に受け入れられる。ただし、エンジンの想像以上の過酷な「仕事内容」を考えれば、ないがしろにすべきことではない。人間の血だって、悪玉コレストロールが増えてくると固まりやすくなり、大動脈瘤解離や心筋梗塞が起きてしまう。

エンジンオイルは日本でよくある「ちょい乗り」に弱く、空気中の水分が混入したりする。放置すると取り返しのつかない性能低下を起こすので、定期的な点検と劣化時の交換はしっかり行いたい(jozefklopacka@Adobe Stock)

 エンジン内部は作動時には亜燃焼ガスにより、2000~3000℃にも達する。燃料の未燃焼成分やススなどによる汚れの蓄積や熱による酸化、添加剤の消耗などがエンジンオイルの性能を落とす原因になる。エンジン冷却時に結露により水分がオイルに混入していることなどもエンジンオイルに悪影響をもたらすことになる。

 このような要因により、エンジンを保護する能力をはじめ、要求される様々な性能が低下していくことになる。

 エンジンオイルの交換時期はユーザー側でもメーカー側でもそれぞれ意見や考えがあるだろうが、オイル(燃料)メーカーではベストな状態で保つためには「3000~5000kmまたは3~6ヵ月のいずれか早いほうで交換することが一般的」としている。

 個人個人でメンテナンスに対する考え方が異なるから微妙だが、エンジンオイルに関しては、ゲージを利用してオイル量が適量か、色が黒く濁るような状態になっていないかについては、気づいたときにエンジンフードを開けてチェックするべきだ。

 少なくとも、燃費が極端に悪化するというレベルに達していたら、適正な交換時期はとっくに過ぎているはずだ。

 特に日常的に悪路を走らせる場面が多く、走行距離が多い(たとえば年間1万km以上など)、街中などでの一回の走行時間が短く短距離であるなど、エンジンへの負荷が高い使用条件の場合には、オイルの劣化が進やすい場合もあるので、こまめにチェックすべきだろう。

■ATのつながりがギクシャク、変速ショックが大きくなってきても知らんぷり

 オートマオイル(ATフルードは一般的ではない?)は、正確にはAT(オートマチック・トランスミッション)車専用のオイルであり、ATFはオートマチック・トランスミッション・フルードの略称だ。エンジンから動力を伝達するトランスミッションの機能を担い、変速制御、各部の潤滑や冷却、内部の洗浄など、その役割は多岐にわたる。

 ATFの交換頻度は、一般的に走行距離が2万~3万km毎の交換が推奨されていたが、現在ではメーカーや車種によっては10万km毎の交換を推奨しているようで、10万kmという目安は、自動車とオイル、それぞれのメーカーの性能向上の努力を反映していることは間違いない。

 ただし、ユーザーがメンテナンスに気を遣って、2~3万㎞毎などでATFを交換していれば問題はないが、長期にわたって無交換で済ませた後にATFを交換する場合には、駆動系で起こりうるトラブルが想像できる。

 ATFについては、ギアの磨耗によって出た金属粉などで汚れている場合があるが、ATFを交換せずに長く使用し続けて交換した場合には、トランスミッション内に固着していたスラッッジなどの汚れが影響して、トランスミッション内部で不具合を引き起こすケースが考えられる。

 具体的には、ギアの滑り、エンスト、シフトチェンジの不具合などが起こりやすくなり、最悪の場合には完全に走行不能になる恐れがある。ましてや、シフトダウンを繰り返して使い、変速ショックが大きくなってもATFを無交換で通すというのは劣化が進まぬはずもなく、交換した方がいいに決まっていて、すでに「うっかり」のレベルを超えている。

 ATFの交換による不具合が起きた場合は、トランスミッション内を洗浄するか、トランスミッション本体を交換することもあり得る。となれば費用もそれなりにかかるため、クルマを買い替えることにさえなりかねない。

 考えておきたいのは、ATFの交換時期が長くなっているのは、自動車メーカーが車種に応じたオイルを設定していることに理由があることだ。決して交換するオイルはなんでも良いわけではなく、グレードや添加物など成分が細かく設定されていることに思いを巡らせて、純正オイルを使って交換することを勧めておきたい。


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