メルセデス・ベンツ「ウニモグ」を日本で販売しているワイ・エンジニアリングは、5月12~14日に開催されたジャパントラックョー2022に、同じくメルセデス・ベンツのユニークな大型トラック「エコニック」を出品しました。
すでに消防車として実働中のエコニックですが、架装前のキャブ付シャシーが一般公開されるのは国内では初めてで、注目を集めました。
文/緒方五郎 写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
キャブ付シャシーはめったに見られないレアもの
「エコニック」は、1998年に欧州で発表され、2014年に現在の第2世代モデルへと進化しましたが、日本での公道デビューは、2020年に東京消防庁が導入した、先端屈折車いす対応型車30m級消防はしご車(架装:オーストリア・ローゼンバウアー社、主契約者:帝国繊維)が初めてです。21年12月に水槽車(同)、22年1月には京都市消防局が同型のはしご車(同)を導入しており、すでに3台が稼働しています。
これら3台はいずれも、はしご装置や消火水タンクなど上モノを架装した状態ですが、ワイ・エンジニアリングが出品した「エコニック」はキャブ付シャシー、つまりキャブ以外なにも架装しておらずシャシーフレームと駆動系が露出した状態で、生産工場や架装工場でしか見られない、とてもレアな姿だったのです。
バスのように楽な乗り降り、バスのように広い景色!
展示された「エコニック」は「エコニック2635L 6×2/4ENA」と呼ばれるモデルで、車両総重量として26t(欧州の値、日本の上限値は25t)まで許容される大型トラックです。
もちろん最大の特徴がキャブです
このクラスの大型トラックは、運転席との往来に3~4段のステップを垂直に昇り降りしなければなりませんが、「エコニック」は2段、しかもバスのように昇り降りも簡単にできます。地面からのステップの高さは450mm(315/60R22.5タイヤ装着時)、2段目は350mmです。
運転席に座り、正面と側方の大きなガラスを通して見える景色も大型バスと似ています。ワイ・エンジニアリングが輸入した「エコニック」は、左右ともにヒンジドア仕様車ですが、折戸ドアも選択可能で、こちらはよりバス感があります。
そしてこのキャブ、4人が普通に乗車できます。東京と京都ではしご車用ベース車として選ばれたのも、国産はしご車と同じように隊員が搭乗できることがポイントになっています。しかも展示車はローキャブ仕様でも室内高が129cmあり、ハイルーフ仕様なら192cm(エンジントンネルのある中央部は174.5cm)で大人が立つこともできるのです。
妥協のない専用シャシー
「エコニック」では、この優れた乗降性を実現するためにシャシー自体を低床化、その上で、キャブをマウントするフロントオーバーハング部のフレームはさらに地面側へ引き下げた形になっています。
しかし、はしご車のベースシャシーとして使われるだけあって、「エコニック」のシャシーフレームはヘビーデューティに造られており、安易に寸法を縮めるような妥協がないこともわかります。ここは、さすがダイムラートラックと思わされるところで、また、キャブ付シャシーでなければ観察できないところでもあります。
これによって、東京・京都で導入された「エコニック1835L」(車両総重量18t・4×2駆動)べースの30m級はしご車は、先端屈折式、車いす対応型バケットというハイスペックを備えながらも、車両全高はわずか3140mmに抑えることができたのです。
3軸の大型車なのに小回りが利く!
展示車は車軸が前に1本・後ろに2本の3軸、(厳密にはタイヤは8本ついていますが)計6輪ですが、駆動するのは前から2軸目で、1軸目はもちろん3軸目も操舵可能となっています。そのため、大型トラックにもかかわらず小回りが利きます。これもはしご車用シャシーとして選ばれたポイントでしょう。
エンジンは、メルセデス・ベンツの「OM936LA」という354hp・7.7リッター直列6気筒インタークーラー付ターボエンジンで、6速オートマチックと組み合わせています。大型運転免許にオートマ限定はありませんが、2ペダルで運転できるようになっています。
ちなみに「OM936LA」は、三菱ふそうの大型トラック「スーパーグレート」が搭載する「6S10」エンジンと同型だったりもします。
展示車だけの仕様 海外ではさまざまな特装車も!
展示車はそれ以外にも、同じ2635L 6×2/4ENAをベースとした東京消防庁向け水槽車とはトランスミッションが違う(水槽車は12段機械式自動変速機。これはこれでオプション仕様で国内唯一)とか、パワー・テイク・オフ(PTO)装置を3基も装着しているとか、他にはないシャシー仕様(6×2/4ベースのはしご車向け?)となっています。この点でも日本では珍しいシャシーといえるかもしれません。
ワイ・エンジニアリングでは、「エコニック」を消防車以外にも、航空機地上支援車両(GSE)などのベース車としての採用に期待しているほか、2020年に発表されたバッテリーEVモデル「eエコニック」についても、導入を検討しているとのこと。
実は「エコニック」、海外では消防車やGSEはもちろん、塵芥車、ミキサ車、ダンプ、スキップローダー、冷凍車などの特装車、さらに都市内運行用セミトレーラの牽引車(セミトラクタ)として使われる例があるので、もしかしたら、日本でも思わぬニーズを呼ぶかもしれないですね。
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