5月のゴールデンウィーク期間中のJAF出動件数は6万7138件と、昨年の同時期に比べて3570件数増加したそうだ。
まだ出動件数だけで、出動した件数が多かった原因について発表されていないが、昨年のデータを見ると、バッテリー上がり/劣化バッテリー、タイヤのバースト/エア不足が1位、2位を占めていると予想される。
5月28日、29日は今シーズン一番の暑さとなり、真夏日を記録したところもあり、クルマのトラブルも増えてくるのはないだろうか。
そこで、エアコン作動でバッテリーが消耗する夏を前にして、バッテリーのチェック方法と交換の薦め、そしてメンテナンスをさぼったことによる、各部の異常の予兆はどんなものがあるのか? 起きてからでは遅いので、愛車の緊急検査をお薦めしたい。
文/高根英幸、写真/AdobeStock(トップ画像=xreflex@AdobeStock)
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■最近のクルマは壊れにくい! しかし……
部品の品質向上や構造の工夫でメンテナンスフリー化が図られて、車検時にしっかりとメンテナンスしてやれば、滅多に壊れるようなことはなくなってきた。けれどもJAFのロードサービスが車両故障で出動している件数を見れば、実際には故障で立ち往生しているクルマが結構な数存在していることが分かる。
特に今年のGWは移動における制限が解消されたことで、クルマで出掛ける人が増えたのだろう。渋滞も各所で発生し、それがクルマの故障を引き起こす最終的なトリガーとなることもある。
輸入車など高級車の場合、電子制御のパーツがふんだんに使われていて、メンテナンスサービスが終了したあたりからいろいろと不具合が起こり始める。
国産車でもADAS(先進運転支援システム)や快適装備などで電子部品がたくさん使われており、軽量化やコストダウンのために複雑な樹脂部品を使うケースも増えているので、新車から5年、7年と経過すれば、マイナートラブルが出始めることも珍しくない。
最近は平均車齢が10年を超えて長く乗られるクルマが増えてきたが、10年間消耗品だけの交換でノートラブル、なんて個体ばかりなハズがないのだ。
車検をディーラーや整備工場などキチンとしたところに依頼しているのであれば、2年に一度はしっかりとメンテナンスを受けているハズ。そうであればブレーキやタイヤが摩耗限界を迎えたりするようなことはないだろう。
しかしそれ以外にもトラブルを起こす要素はある。そうしたポイントを踏まえて、点検整備の必要性を解説していこう。
■近年はバッテリートラブルが増加傾向
近年の傾向として、バッテリーにトラブルを抱えたクルマがロードサービスに救援を依頼するケースが多いようだ。これは充電不足によるバッテリー上がりや、劣化による内部抵抗の上昇により充電不良になってしまうことが一番の原因だ。
バッテリー充電器も最近は低価格で高性能なモノが販売されている。パルス充電機能がついた充電器で月に一度程度、定期的に補充電してやれば、2、3年ごとに交換していたバッテリーが軽く5、6年は使えるようになる。筆者は補水ができないMFバッテリーでも、寿命を大きく延ばせた経験がある。
それでもバッテリー関連のトラブルが起こらないとは限らないのが、クルマの複雑なところだ。発電機であるオルタネータはブラシの摩耗やベアリングの寿命でも壊れることがあるが、電圧を制御するICレギュレーターが壊れることもある。
これは予測できないトラブルで、いきなり充電不能になってしまうのでお手上げだ。
■今までは問題なかったクルマでも、気付かないうちに劣化が
真夏の渋滞など、エンジンルームが高温になってしまうと、こうした半導体を使った部品はジワジワとダメージを蓄積していく。見た目に劣化する樹脂パーツと違い、外観からは分からない劣化だ。防ぐ手段は、できるだけエンジンルームを高温にしないことしかない。
補機類を駆動しているベルトも劣化したまま使っていると、破断して発電や冷却水の圧送が止まったり、ベルトがプーリーに巻き付いてエンジンにダメージを与えてしまうことがある。ベルトテンショナーの寿命もあるので、加速時にベルトが滑って鳴いているクルマは、速やかに修理しないと
水温や油温は電動ファンによって温度上昇を抑えているが、渋滞で空気の流れが悪い状態になると、エンジンルーム内の温度は上昇する。特に排気系などが近い部品などは、ダメージを負いやすいようだ。
特に輸入車にみられるのは、点火系の部品の故障によるトラブルだ。ダイレクトイグニッションとなって、コイルがエンジンの頂部にマウントされることになり、シリンダーヘッドを通じて高熱が伝わってくる構造になってしまったことも影響している。
点火系に不具合が出てくると、燃焼が安定せず燃費が悪くなったり、加速が悪くなってしまうこともある。それだけならまだいいが、放っておけば異常燃焼によるカーボンの蓄積や温度上昇によってエンジンブローへと行き着く可能性もある。
なんとなく調子悪いけど、走るからまぁいいかと乗り回していると、深刻なトラブルに発展する可能性がある、ということだ。
定期的に診断機にかけて、センサーなどのエラーが出ていないか、出ていればそのエラーの原因は何なのか(表示通りのセンサーによるトラブルではないことも多い)調べて、早めに対策することが大事だ。
■エンジンやATからの異常を知らせる症状に気付こう
エンジンからカンカン、コンコンと異音を出しながら走行しているクルマを見かけることもある。これはエンジンの要、クランクシャフトにつながるコンロッドのメタルが摩耗している可能性が高い。
オイル管理が悪いと起こるトラブルだが、以前から軽自動車で多く見かけたものだ。最近はミニバンでもこのクランクの打音を響かせているクルマを見かける。
まだ走るからと、異音を気にも留めていないドライバーもいるが、エンジンに深刻なダメージを与えているので、高速走行などした場合にはエンジンブローにつながる可能性がある。エンジンから普段と違う音が出ている場合は、走行自体に異常がなくても整備工場で点検してもらうことだ。
ATはATFを定期的に交換しているとスラッジの蓄積や内部の劣化を抑えることができるが、近年はフルード交換によるトラブルを防止するために、基本的にATFは無交換でメンテナンスフリーとなっている。
無交換でも10万km以上は走行に支障ないという想定で、特別保証の5年10万kmは通常なら乗り切れるのだろう。
しかし5年を過ぎてしまうと10万kmに満たなくても保証の適用外(三菱自動車だけは特別保証が10年10万kmだ)となってしまうので、もしATにトラブルが生じても、自費でのリビルト品への交換(もしくは下取りして買い替え)となる。
ATがトラブルを起こす前兆として変速ショックが大きくなったり、変速時にタイムラグが生じたり、エンジン回転が一瞬上昇するなどの症状が出ることもある。
これが冷間時など一時的なモノで、走行しているうちに消えるようであれば、初期症状であり延命できる可能性もあるが、近いうちにリビルド品への載せ変える必要があると思った方がいいだろう。
保証云々も重要だが、遠出して出先で立ち往生となってしまうのも困るから、もし駆動系やエンジンに異変を感じているなら、出掛ける前に点検整備に出して、担当メカニックに症状を伝えて調べてもらうことだ。
パンクやバーストなどタイヤのトラブルが多いのも、メンテナンス不足が根本的な原因であることが多い。タイヤホイール交換する時には、デザインやサイズ、価格などをじっくりとチェックしてチョイスするのに、購入して愛車に履かせてからは無頓着になってしまうユーザーも少なくない。
その証拠に、街を走るクルマのタイヤを見ると、インチアップされた薄いタイヤがかなり潰れた状態のまま走行しているクルマを見かけることも珍しくない。
指定空気圧でも、前後の重量配分の関係から見た目に潰れてみえるケースもあるが、もしタイヤ空気圧のチェックを怠っていて、空気圧が下がったまま走らせていると段差やキャッツアイなどでタイヤをキズ付けたり、ホイールを曲げてしまう可能性がある。高速道路ではバーストする危険性も高まる。
たったこれだけのために、タイヤトラブルを引き起こしてしまうのは、非常にもったいないことだ。タイヤはローテーションなどを行なって上手に使えば4、5万kmは問題無く使える。ホイールにまでダメージを負った場合は、1本だけの交換となると1台分セットで購入するより割高になることも多い。
■見た目には変わらなくても、確実に劣化していく!
クルマの情報を検知するセンサー類は、半導体や磁性体を利用しているモノが多いが、それも一定の使用期間を過ぎると動作が不安定になったり、いきなり壊れることもある。
5年10年と車齢が増えるたびに、センサー類の寿命は確実に迫ってくる。スキャナーなどでエラーが出たセンサー類は早めに交換しておくのも、トラブルの予防になる。
最近は平均車齢が10年を超えるようになってきたから、15年、20年を迎えたクルマも走行しているのが珍しくなくなった。昔のクルマの方が作りが良いと長く乗り続けているドライバーにとっては、そろそろ気を付けなくてはいけない時期にあるのかもしれない。
冒頭のように最近のクルマでも安心はできない。それだけに日頃の点検整備は欠かさないで欲しいと思うのだ。クルマは安全性や信頼性こそ第一に優先すべきもので、快適性や燃費はその後に評価されるものだからだ。
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