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ホントにホント? トヨタから紙の新車カタログはなくなってしまうのか……!?

「自動車の新車カタログが廃止される」。そんな話題が出てきたのは、トヨタ販売店のショールームでの話。うわさ程度の話かと思っていたが、すでに紙媒体での新車カタログ廃止に向けて、動き出しているらしい。

 紙製のカタログは、新車購入検討時はもちろん、書籍や写真集のように楽しんでいる人も多いだろう。

 紙の新車カタログがなくなってしまうのは、とても悲しい。紙カタログの廃止によって起こる販売現場への影響や、今後の動きなどを取材してきた。

文/佐々木 亘、写真/Adobe Stock(メイン画像=rymden@Adobe Stock)

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■電子化の準備は着々と進められてきた

カタログの電子化は約10年前からスタートした。電子化によって価格や車両のスペックでの比較がやりやすくなった。タブレットを片手に車両案内するのが今のショールームの営業スタイルだ(piotr_roae@AdobeStock)

 脱紙カタログに向けた動きは、約10年前からスタートしていた。この頃、トヨタディーラーでは「E-choice(イーチョイス)」、レクサスディーラーでは「レクサスコンシェルジュ」というシステムが順次導入されている。

 このシステムのなかには、国内外メーカーの車両データや、ローンや残価設定プランを訴求するための提案ひな型などが入っている。営業スタッフのノートパソコンにインストールされ、クルマ同士の比較検討や低燃費車などにおける経済性の訴求などが、格段にやりやすくなった。

 このシステムをベースにし、ここ数年で電子カタログの機能が追加されている。これにより、紙カタログなしでも、ユーザーへ端末の画面を見せながら商談することが可能となったのだ。

 現在では、各営業スタッフが使用する端末が、ノートパソコンからタブレットへ切り替えられ、電子カタログの利用はさらに進んでいる。

 展示車両の案内をする時は紙カタログではなく、片手にタブレットを持ち、即座に細かな車両データを検索するのが、今のショールーム営業スタイルだ。

■ショールームのレイアウトも変化! コロナ対策以外の意図も?

 ここ数年で、トヨタ販売店のショールームは少しずつレイアウトが変わってきている。カタログ棚が段々となくなっていき、ユーザーが好きなカタログを自由に持ち帰ることができないお店が増えてきた。

 もちろん、カタログの配布は行っているが、在庫は総合受付や営業スタッフが一元的に管理し、受付に行って「カタログいただけますか」と言わないと、手に入らなくなってきている。

 新型コロナウイルス感染予防の観点から、待ち時間に読む雑誌や漫画などのコーナーも廃止され、キッズスペースなどもなくなった。これとほとんど時期を同じくして、カタログスペースの設置も見送る店舗が増えているのだ。

 ひとつの目的としては、不特定多数が触れるものを少なくし、コロナ感染予防を進めていることが挙げられるが、カタログの電子化の影響もあるのではないか。

 当たり前に存在していたものが突然消えてしまうのは、大きな違和感だ。コロナ対策に関連付けながら、自然に紙カタログの存在を消していく、こうした販売店の意図も感じられる。

■電子カタログも日々進化 紙ではできない演出も

レクサスディーラーには巨大なスクリーンがあり、商談になるとこれが「電子カタログ」に変わる。スクリーンにはほぼ等身大でクルマが映るので、希望の車種がなくてもその場にクルマがあるような疑似体験も可能だ(Monet@AdobeStock)

 さらには、電子カタログの機能が段々と充実している点にも注目したい。

 レクサスディーラーでは、「魅せる電子カタログ」が広がりつつある。レクサスのショールームには大きなスクリーンがあり、そこに投影されているのは車両のプロモーションビデオだ。しかし、商談になると巨大スクリーンが電子カタログに変わる。

 大型スクリーンに希望車種の3Dモデルが映し出されて、ボディカラーやエクステリアパーツの装着イメージを映し出す。

 また、エンジン音やドアの開閉音など、音に関してもさまざまなデータを持っており、その場で聞くことが可能だ。

 巨大スクリーンにほぼ実寸大で映し出される車両モデルがあることで、展示車両に希望のボディカラーがなかったり、希望の車種が置かれていなかったりした場合でも、目の前に検討中のクルマがあるような疑似体験ができる。

 展示車と同じように詳細な部分までチェックすることができるのだ。

 紙カタログから電子カタログ、そして今は好きなように組み替えて、動かすことができるカタログに進化した。

 いよいよ、紙カタログの役割も終わりなのだろう。

■販売店業務に影響はないのか

 1冊あたり数百円から数千円するクルマのカタログ。

 販売店では、カタログをメーカーから有料で仕入れ、ユーザーへ無料配布している。紙カタログが廃止されることで、販売店が負担していた費用は削減されるだろう。

 しかし、これまで当たり前のようにあった紙カタログが廃止されると、少なからず販売現場には影響が出てくるはずだ。実際に現場の声を聞いてみた。

 中堅からベテラン営業マンのなかでは、「紙カタログがパッと見られなくなるのは、ちょっと厳しい。商談や説明のリズムも変わる」と、紙カタログへのこだわりを感じさせる声が多かった。

 対して若手の営業マンは、紙カタログの廃止はさほど気にならないようだ。

「現在も、お客様からオーダーがあれば紙カタログを使うが、ほとんどはタブレットですませてしまうことが多い。廃止になっても、普段どおりに活動するだけ」と、反応は大きく分かれた。

カタログ電子化には賛成 だが対策が必要な部分も

「電子化にはメリットも多いが、必要な情報を「探す」「覚える」のには紙をめくるほうが見つけやすいし、頭に入りやすいと思う」とする筆者。さらにシステム障害が起きた時など情報にアクセスできない場合の対策も必要だ(japolia@AdobeStock)

 筆者個人としても、現役営業マン時代の後半は電子カタログを積極的に利用していた側なだけに、紙カタログが廃止されてもその影響は限定的なものだと考える。

 しかし、PDFでは探している項目が延々と見つからないことも多い。

 必要な情報を「探す」時や「覚える」際には、タブレット画面よりも紙をめくるほうが見つけやすいし、頭に入りやすいと思う。

 電子化には賛成するが、システム障害などが起きた時に、どう対応するのかという心配をする営業マンもいた。

 現在は、電子カタログがすべてオンライン上のクラウドに保管されており、ネットワークを使って、1回ずつ情報を引き出さなければならない。

 サイバー攻撃などが起きてオンラインがダウンした際に、全国で一斉にカタログ情報まで取得できなくなると、販売店の商売としては大きな問題になる。

 電子カタログをオフラインで保存しておくか、販売店用にだけ紙媒体のカタログを配布しておくなど、対策が必要となるだろう。

 まだ、ハッキリとした廃止時期は決まっていないが、すでに販売店へは廃止の連絡が入り、その準備が進められている。そして、トヨタに続いて他メーカーでも同様の動きが出ることは容易に想像がつく。

 カタログをめくり、隅々まで読んで保管するという文化も残念ながらもうすぐ終わってしまいそうだ。

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