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おちおち安心して乗れない!? なぜトヨタ車が盗難車のターゲットにされやすいのか?

 2022年3月16日、社団法人日本損害保険協会の協会ニュースで、2021年の車両本体盗難はトヨタのランドクルーザーが車名別盗難台数ワースト1だったと発表した。

 これは第23回「自動車盗難事故実態調査」の結果からの発表であるが、その資料によるとワースト10までの被害車種すべてが、なんとトヨタとレクサスブランドで占められているではないか。

 しかしなぜ、これほどまでにトヨタとレクサスの盗難が多いのだろうか? モータージャーナリストの桃田健史氏が海外のクルマ事情から考察する。

文/桃田健史、写真/トヨタ、日本損害保険協会、AdobeStock(トビラ:Comofoto@AdobeStock)

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■2年連続でトヨタ&レクサスがワースト10を独占した事実

 なんと、2年連続でトヨタ&レクサスがトップ10を独占した。とはいっても、販売や製造のことではなく、自動車盗難の話だ。

 一般社団法人 日本損害保険協会が公開した、第23回自動車盗難事故実態調査という興味深い資料がある。

「第23回 自動車盗難事故実態調査結果」資料表紙

 2019年1月1日から2021年12月31日までの3年間で発生した盗難事故などについてまとめたものだ。調査対象企業は、あいおいニッセイ同和損保、アクサダイレクト、ソニー損保、東京海上日動、JA共済、こくみん共済など21社。

 調査対象事案数は、2019年の場合が車両本体盗難3800件、車上狙い1856件。2020年は同2964件、1254件、そして2021年が同2425件、931件だった。

 また、2021年の盗難発生時間帯を見ると、日中(9時~17時)の割合が29.0%、夜間(17時~22時)が8.7%で、最も多いのが深夜から朝(22時~9時)の55.2%と約半数を占めている。こうした割合の傾向は、2020年と2019年も似ている。

■なぜトヨタとレクサスの盗難が多い?

 驚きなのは、2020年と2021年では、盗難事案の対象車のトップ10はすべてトヨタ&レクサスなのだ。

「第23回 自動車t城南事故実態調査結果」より 車名別盗難状況-車両本体盗難

 2021年は、1位:ランドクルーザー(プラドを含めて331台)、次いで2位:プリウス(266台)、3位:レクサスLX(156台)、4位:アルファード(138台)、5位:クラウン(81台)、6位:ハイエース(78台)、7位:レクサスRX(58台)、8位:ヴェルファイア(41台)、そして9位:レクサスLS、ハリアー(ともに36台)と続く。

 2020年と2019年は各々、1位:プリウスで2位:ランドクルーザーで、2021年にこれが逆転した形だ。また、2019年の10位にヴェゼルが入ったが、トップ9はトヨタ&レクサスが占める。

 こうした状況を見れば、誰もが「なぜトヨタとレクサスばかりなのか?」と疑問に思うだろう。確かに、日本の新車乗用車市場のトヨタが過半数を占めており、実数が多い。だが、乗用車市場全体を見れば、約4割が軽自動車という状況なのに、軽自動車は盗難車トップ10に入ってこないのもちょっと不思議だ。

 高級車についても、メルセデスベンツ、BMW、アウディ、VW、ボルボなどの定番人気ブランドはもちろんのこと、最近ならばジープなどの輸入車がランクインしてもおかしくないはずなのだが、そうはなっていない。

■海外需要が関係している可能性も?

 実は、車上荒らしのトップ10には、プリウス、ハイエース、アルファード、アクア、クラウン、そしてN-BOX、メルセデスベンツと続き、ハリアー、タント、フィット、BMWという具合に、軽と輸入車が狙われている。

 ところが、盗難となると、トヨタ・レクサスが独占というランキングになっているのだ。いったいその理由は何なのか?

 ここからは、あくまでも筆者の経験に基づく仮説である。

 単純発想として言えるのは、盗難車でトヨタ車が多い理由は、盗難車の買い手(需要側)がトヨタ車を望むからだ。

 そうした需要は、主に海外であると考えるのが自然だろう。国内での盗難車売買は、法的な面、または商慣習として成り立ちにくいと思われるからだ。

 海外といっても、その多くの法規制は右側通行&左ハンドル車であるため、普通に考えれば左側通行・右ハンドル車の国がベターであるはずだ。

 盗難車売買で仲介組織を経由するにしても、現地の直接持ち込んで売り払うにしても、そうした考え方を持つだろう。

■全世界で信頼される品質のトヨタブランド

 そうなると、左側通行&右ハンドル車である、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、ケニアなどの国や地域でトヨタ車の人気が高いのか、という話になってしまう。

 確かに、そうした国や地域ではトヨタ車は新車も中古車も正規販売されており、市場のニーズも高い。

 ただし、そのほかにも経済発展途上国のなかには、右側通行&左ハンドル車の法規制のなかで、日本から輸入された右ハンドル車が当たり前のように走っている風景を、筆者は現地で見たことがある。そうした国でもトヨタの新車は正規販売されている。

 または、右側通行&左ハンドル車の国や地域でも、日本からの盗難車を「ブツ取り用」とすることも当然考えられるし、高級車については右ハンドル車から左ハンドル車への大規模改造を施すケースもあり得るかもしれない。

 いずれにしても、日本での盗難車の主流がトヨタ&レクサスで、それらが海外へ流れている可能性が高いという考え方の裏側には、トヨタの商流網が世界の国や地域をまんべんなく張り巡らさせており、グローバルでユーザーからのトヨタ&レクサスに対する信頼度が高いということになる。

■日本では知られていない海外でのふたつの話

 最後に、盗難車と直接的な関係は別として、日本ではあまり知られていないトヨタ&レクサスの海外事例をふたつ紹介しておく。

 ひとつは、先ほど右ハンドル車の国としても名前が出た、アフリカのケニアだ。同国では、タクシー需要として、カムリやカローラなどの4ドアのトヨタ車に対する需要が高い。「トヨタ車は(いつまでも)壊れない」といった、トヨタ神話があるほどだ。

 こうした需要を見越した日本の大手中古車事業者などが、日本とケニアを直接結ぶ中古車販売ルートを設けるケースもある。走行距離が10万km超でも、ケニア向けでは付加価値の高くつくトヨタ車が日本国内で充分な在庫があるということだろう。

 もうひとつの事例は、東南アジアのカンボジアだ。こちらはトヨタ現地法人を直接取材した際、同社の社長から直接聞いて驚いた話がある。

 なんと、海外から並行輸入された事故車まで、一定の条件のもと、トヨタの正規販売店やトヨタ関連部品を扱う販売店で一般整備を受け付けているというのだ。

 なかでも人気なのは、初代と2代目のレクサスRXで、主にアメリカからの輸入だという。

1998年に登場した初代レクサスRX、日本名ハリアー。北米の販売は好調でレクサスブランドの確立に一役買った

 こうしたビジネスモデルについて、将来的にアフリカなどの一部の経済発展途上国で事業展開するうえでの実証試験的な要素もあった。一定条件をつけたうえとはいえ、事故車や並行輸入車でもトヨタ車&レクサス車について、しっかりと整備を行うことが新車製造と新車販売を担う者としての使命であるということだ。

 ただし、当然ながら盗難車については論外だ。盗難車であるかどうかは、しっかりと調べたうえでこうしたビジネスモデルが成り立つことがトヨタの信頼につながるのだと思う。

■あとがき

 繰り返すが、こうした事案は筆者の過去の体験の紹介であり、盗難車と直接関係する話ではないことをご承知おきいただきたい。

 また、盗難車でトヨタ車が多いことに対する考察についても、あくまでも筆者個人による仮説であることを改めて申し上げておく。

 本稿は、トヨタ車にかぎらず、どのようなモデルが盗難車ランキングで上位になるならない、という点を強調することが目的ではなく、こうした機会に自動車の盗難という社会の現実をより多くのユーザーに知っていただくための内容である。

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