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 2022年も自動車税納付の季節がやってきたが、例年以上にSNS上での自動車税の高さを指摘する声が多いように感じる。一般ユーザーだけでなく、レーシングドライバーやJAFが、自動車税は高すぎる! と声を上げている。

 2018年に自工会の豊田章男会長が声を上げてから、特に多くなったように感じるが、なぜ日本の自動車税はここまで高いのだろうか? ガソリン税もそうですが、嗜好品ではなく生活必需品にもかかわらず、高い税金を課せられる現状は適切な状態ではないのではないだろうか。

 なぜここまで多くの声があるにもかかわらず、国は変えることなく、日本の自動車ユーザーは、高額な税金を課せられているのか。問題点が多いので、税目別に考えていきたい。

文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、HONDA、NISSAN、MAZDA、SUBARU、SUZUKI、ベストカー編集部、AdobeStock(トップ画像=sunftaka77@AdobeStock)

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■自動車税/軽自動車税

自動車への課税理由は、自動車がまだ贅沢品だった頃にまで遡る。年金で生活する高齢者が日常的に自動車を使う現代にはまったくそぐわない(vaalaa@AdobeStock)

 自動車の所有者が毎年納める税金だが、なぜ自動車を所有すると税金を徴収されるのか。総務省のホームページには「自動車・軽自動車に対し、その所有の事実に担税力(税金を負担できる能力)を見出し(中略)、財産税としての性格を持つほか、道路損傷負担金的な性格を持つ」と記載されている。

 第一の問題点は「自動車の所有者には税金を負担できる能力がある」とされていることだ。公共の交通機関が未発達な地域では、今では自動車は生活に不可欠な移動手段になっている。

 年金で生活する高齢者が、日常的な通院や買い物に、古い軽自動車を使っている現実がある。「自動車を所有しているから、持たない人に比べて高い税金を負担できる」という考えは間違いだ。

 そして「財産税としての性格を持つ」なら、資産価値に応じて税額を決めるべきだ。古い自動車は、新しい自動車に比べて資産価値が低いから、税額も安く抑える。新規登録(軽自動車は新規届け出)からの経過年数に応じて、自動車税を段階的に減税せねばならない。

 ところが実際は、自動車税/軽自動車税は、エンジン排気量に応じて単純に決められる。資産価値がほとんど残っていない古い自動車でも、エンジン排気量が3.5Lであれば、少なくとも毎年5万7000円の自動車税を徴収される。

■自動車税/軽自動車税の増税

 自動車税/軽自動車税は理屈のとおらない税金だが、新規登録から11年を経過したディーゼル車、13年を経過したガソリン車は、さらに増額される。ガソリン車の自動車税は約15%の増税で、エンジン排気量が1.6~2Lの場合、年額3万9500円だった税額が4万5400円に増える。

 軽自動車税はさらに増税比率が高く、自家用軽乗用車の場合、13年を超えると従来の年額7200円から1万2900円に跳ね上がる。比率に換算すれば2倍近い増税だ。

 先に述べたとおり公共の交通期間が未発達な地域では、年金で生活する高齢者が、日常的な移動のために仕方なく古い軽自動車を使う。そのような人達に、重税を課して苦しめているのが今の自動車税制だ。

 増税の理由は、古い自動車は環境性能が低いというもので、環境性能の優れた新車に乗り替えさせることを増税の目的にしている。しかし古い自動車を廃棄したり、新車を製造/流通する段階でも二酸化炭素は排出される。新車の購入に伴う環境性能の向上が示されているわけではない。

 また増税の背景には、エコカー減税や電気自動車の補助金も絡んでいる。減税や補助金によって新車の販売促進を行った代わりに、古い自動車を使う人達から高額な税金を巻き上げ、相殺する狙いもある。

 今はコロナ禍で、新車への乗り替えができないユーザーが増えた。増税は困っている人達をさらに困窮させる悪法にほかならない。

 増税は自動車税と軽自動車税に加えて、自動車重量税でも実施される。自動車重量税の増税は、新規登録から13年、さらに18年を経過した時にも行われる。

 例えば車両重量が1001~1500kgの自家用乗用車の場合、継続車検時に納める2年分の自動車重量税は2万4600円だ。それが13年を経過すると3万4200円、18年では3万7800円に増える。後者の増税比率は、増税前に比べて54%多い。

 そして日本自動車工業会は「日本の自動車関連の税金は世界一高い」などと指摘しながら、重税には触れようとしない。これでは日本自動車工業会は、ユーザーの味方を装いながら、本当は自動車をたくさん売ることしか考えていないことになってしまう。

 高齢者が増税に負けて新車を買えば、自動車業界が潤う。新車を買えず増税に耐えれば、税収が確保される。自動車業界と国が結託することで、経済的に困窮しているユーザーを食い物にして、さらに苦しめている構図だ。

 物事は何事においても、国と資本家にとって有利な方向へ進むが、自動車に関する増税は限度を超えている。この悪法は許されない。

■自動車重量税

重量税はかつて道路特定財源として使用されてきた。道路特定財源制度が撤廃されている現在、課税する根拠をすでに失っている(umaruchan4678@AdobeStock)

 自動車を購入したり継続車検を受ける時に納める自動車重量税は、13年/18年を経過した車両の増税以外にも、大きな問題を抱えている。それは税金として、課税する根拠をすでに失っていることだ。

 自動車重量税は、1971年に道路特定財源として創設された。「自動車ユーザーは、道路の恩恵を多く受けているから、道路を建設したり維持する費用も負担すべき」という考え方に基づく。そこで自動車重量税が徴収され、少なくとも建て前としては、道路建設などに使われた。

 ところが道路特定財源制度は、2009年に撤廃されている。その後は一般財源、つまり普通の税金として、さまざまな用途に使われている。そうなると自動車ユーザーは、所有するだけで、多額の税金を不当に徴収されるわけだ。

■自動車環境性能割

 自動車環境性能割は、自動車を取得した時に納める税金だ。要は自動車取得税の後継に相当する。

 この経緯も酷い。もともと自動車取得税は、消費税率が10%に高まった段階で、廃止することになっていた。自動車取得税も自動車重量税と同じく道路特定財源として1968年に創設され、1989年には消費税の徴収も開始されたから、「二重課税」と問題視されていた。

 そこで消費税率が従来の8%から10%に切り上げられた時点で、自動車取得税を廃止することになった。

 ところが実際には、消費税率が10%に高まると、自動車取得税の廃止と併せて自動車環境性能割が導入された。その内容は、エコカー減税を実施した自動車取得税にソックリだ。これは屁理屈で、二重課税も依然として続いている。

 要は「消費税率が10%に高まった時点で、自動車取得税を廃止する」という話は、嘘だったことになる。一般財源に変更されたため、名称を従来の自動車取得税から自動車環境性能割に切り替えただけだ。

■ガソリン税など

ガソリンや軽油などの燃料には二重三重の税金がかけられている(phpetrunina14@AdobeStock)

 ガソリンや軽油などの燃料にも税金が課せられ、この中にも元・道路特定財源が含まれる。

 例えばガソリンには、ガソリン税(揮発油税・地方揮発油税)、石油石炭税+温暖化対策税、消費税が入っている。

 この内、ガソリン税の53.8円、石油石炭税+温暖化対策税の2.8円は、ガソリンの本体価格に左右されない。常に徴収されている。

 従ってガソリン価格が1L当たり130円まで下がった場合、ガソリンの本体価格は、わずか61.58円に過ぎない。残りの68.42円は、ガソリン税、石油石炭税+温暖化対策税、諸費税で占められる。

 ちなみに軽油価格が1L当たり130円の場合は、軽油の本体価格は86.2円だ。つまり燃料の本体価格は、軽油よりもガソリンのほうが安い。しかしガソリンは税額が高いために、小売価格は逆転して、軽油のほうが安く販売されている。

※      ※      ※

 以上のように自動車関連の税金は問題だらけで、突っ込みどころが満載だ。早急に行うべきは、困っている人たちをさらに苦しめる13年を経過した増税を廃止することだ。

 そのあとで、自動車関連の税金をすべて見直す必要がある。「自動車を持っている人は富裕層で、効率的な移動によってさらに高い利益を得ているから、多額の税金を徴収する」という50年以上前のコンセプトを捨て去らねばならない。

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