SBIホールディングスは27日、22年3月期の決算を発表。売上高は前期比41%増の7,636億円、純利益は同352%増の3,669億円と、いずれも過去最高を更新した。
新生銀の買収に伴い、買収先の純資産より低い金額で買収した場合に発生する「負ののれん」が業績を押し上げた影響も大きかったが、近年の手数料ゼロなどで口座数を過去3年で業界トップに増やすなど急成長。主要証券各社がコロナ禍で軒並み業績を落とす中、北尾吉孝社長が「新生銀行があろうが、なかろうが極めて良好な業績を上げられた」と胸を張る“一人勝ち”の様相となった。
新生銀に投じられている公的資金3500億円の返済に向けて、同銀の顧客属性を精査し、グループの経営資源との結合を引き続き進めると強調。またアメリカで起きてきた証券会社の淘汰や再編が今後日本でも起こる可能性を指摘。北尾社長は、今後の業界再編を主導する意思も示した。
時事談義も飛び出す「名物」の質疑応答では、岸田首相が今月上旬、外遊先の英ロンドン・金融街シティで所得倍増計画をぶち上げたことが話題に。
北尾社長は、記者から受け止めを尋ねられると「岸田さんは宏池会だから大平(正芳)さんが言っていた“田園都市”とか、池田(隼人)さんが言っていた“倍増”とか使いたがる傾向があるよね」と指摘。そして所得倍増政策と、金融所得課税強化や自社株買い規制などの発言が矛盾するとの認識を示し、「総理総裁は言っていることが矛盾していたら、信用をなくしますよ。(所得を)もっと増やすためにどうするのか、そこがないといかん」と苦言を呈した。
さらに日本人の金融資産のうち、貯金が5割を超え、投資が3割程度と「貯金偏重」が続いている問題にも触れながら、「年金税制、あるいはNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の制度や税制の改革を具体的に言っていかないと。何でもかんでも池田さんの所得倍増を言っておけばいいだろうという調子ではダメですよね」と、やや呆れ気味に話した。さらには“比較”するように、菅前首相と先日懇談した際の話を引き合いに。菅氏とは、国民がNISAやiDeCoなどで資産形成し、そのために税制改革が必要だとの認識で一致した様子を伺わせた。
北尾氏は「岸田さんもそこまで言われるなら、矛盾したような話をするのではなく、そこのど真ん中をどうするか話しすべきではないのか」と述べ、さらに「資源のない日本はお金が資源。お金を使って内外で投資をし、中では産業を育成し、外では成長企業に育成する。僕が東南アジアでやってきたようなことを政府はやればいいが、ソブリンファンド(政府系ファンド)を政府は作らない。本当にそういうところは遅れに遅れている」と厳しく指摘していた。