クルマ好きが最も憎むべき犯罪のひとつが、大切にしているマイカーを盗まれる自動車盗難。警察庁の統計によると、日本国内での自動車盗難認知件数は2012年に2万1319件、そしてピークの2013年に2万1529件を記録して以降、緩やかに減り続けていて2021年は5182件になっているが、特定の地域では今なお多発しているのが現状だ。
2021年に盗難率の高かったクルマワースト5はランクル、プリウス、レクサスLX、アルファード、ハイエースとそのすべてがトヨタ&レクサス車だったのだが、我々ユーザーサイドはどのようにすれば愛車を守ることができるのだろうか。自身もバイクを盗まれた経験のある自動車評論家、国沢光宏氏が指南する!
文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、トヨタ、レクサス、AdobeStock(トビラ写真:buritora@AdobeStock)
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■クルマを盗まれても警察が積極的に動いてくれないワケとは?
我が国は相変わらずの自動車泥棒天国状態が続いている。盗難の対象はハイエースやランクル、プリウスに代表される海外で高く売買される車両だけに留まらない。ここにきて人気上昇中の「少し古い日本車」や相場高騰中のアルミを目的にするホイールの大量盗難、白金の2倍の相場になっているパラジウム狙いの触媒盗難などなど多岐に渡り始めた。警察は動かないのか?
盗難被害に遭った場合、当然のごとく被害者は警察に通報すると思う。しかし、驚くことに対応はさまざま。先日、知り合いが勤務する整備工場に窃盗グループが入り、タイヤ付きのアルミホイールを90本ほど盗まれた。警察に通報するとけっこうな人数がやってきて、近所の防犯カメラのチェックなどしていったという。キッチリ捜査すれば犯人検挙の可能性も出てくる。日本の警察は優秀ですから。
しかし! 中古ホイールなら被害金額からすれば100万円に達しない。一方、相場350万円程度のRX-7のFD3S型を盗まれたとしよう。警察に届けても本格的な捜査はしてくれないケースが大半を占める。
1000万円のレクサスLXすら捜査員を投入しての犯人捜しは期待薄い。被害届こそ受けてくれるものの、それでおしまい。高額車は盗難保険でカバーされると思っているのかもしれません。
■結局は警察も「自分たちの手柄」にならない個人ユーザーには冷たい?
取材をしていると、「警察が熱心な捜査をしてくれる条件」って明らかに偏っている。基本的に警察は「地元の有力者」などが関係する窃盗事件のみ真剣に捜査するような傾向がある。
もうひとつは「今月は徹底的に車両盗難を捜査するぞ!」みたいなキャンペーンを行う時である。大きな手柄にならないような個人だと冷たい。私もバイクを盗まれたりした経験を持つけれど塩対応でした(泣)。
ちなみに保険会社からすると「たまったもんじゃない! それより犯人を捕まえて欲しい!」ということなのだろう。愛知県自動車盗難等防止協議会(損保会社などが会員)が「警察はあてにならない」的な対応策として、窃盗事件の情報に対する謝礼を1万円から10万円に上げるという対応を始めた。もはや、ならず者が横行していた西部開拓時代のアメリカ状態と言っていい。
窃盗犯グループを捕まえる方法はないのだろうか? WRC取材のために訪れたイタリアで犯罪の専門家に聞いてみたら、「日本のような島国で国土面積が狭い国なら、いくらでも犯人検挙の方法がありますよ」という。
欧州でも高額車の盗難は大きな課題になっているものの、日本で考えるほど厳しい状況ではないという。以下、具体的な「アイデア」を教えてもらったので紹介したい。
■盗難率の高い車種には電波発生器を取りつけるべし!
一番簡単なのはランクルのように盗難率の高い車種だという。希望するすべての車両にバッテリーを外されても数日間電波を発生する装置を付けておく。盗難されたらその信号を追いかければいい。GPSなどは密閉された車両や空間に入れられてしまうと追いかけられない。電波であれば比較的容易に追いかけられるそうな。
どんな電波かと聞いたら、「携帯をイメージしてくれればよい」。電波は常時発信していると探知されるため、極めて短い時間バーストで発信するという。これだと窃盗グループも対応しにくい。海外の情報機関は移動する車両を追跡するための技術をいくつか持っているそうな。
話を聞くと「当然でしょうね!」と思うことばかり。日本の警察が窃盗グループを追跡するための方法として使っていないだけ。その気になればすぐ導入できそうだ。
また、日本のように盗難した車両を国内で販売することが難しい国だと販路がかぎられてくる。窃盗グループは基本的に「ヤード」と呼ばれる高い塀で囲まれた敷地内に盗難車を持ち込み、輸出の準備をする傾向がある。
盗難される台数を考えれば窃盗グループの数はそれほど多くないだろうから、地道に捜査していけばすべてのヤードを突き止められるかもしれない。ランクルに代表される高額車の窃盗を大幅に減らせるだろう。
■現状では個人ですべて対応するのは不可能。やはり警察の力が盗難防止には不可欠
さらにイタリアの専門家は「悪質な犯罪グループの数を調べるとそれほど多くない」という。ランクルなどを盗んでいる窃盗グループがハイエースやプリウスも盗んでいるのではないか、と言う。
残念ながら私は盗難グループの情報を持っていないし、取材する対象でもないため詳細不明ながら、警察ならさまざまな情報を入手できるに違いない。ようするに現状は「やってない」ということです。
相場急騰中のヒストリックカーは、部品をバラされる可能性もあるという。最近はさまざまなルートで部品を販売できる。確かにオークションサイトがたくさんあり、見ると「こんな部品も買えるのね!」と驚く。
部品の入手に困るような年式のクルマの場合、1台をすべてバラして販売すると、車両価格をはるかに超えるケースが珍しくないという。この方法だと窃盗グループじゃなく個人で可能。
現状は個人でセキュリティシステムを取り入れるなどしているが、すべての盗難方法に対応するのは難しい。一定の金額を払うことで電子的な盗難防止システムを導入できるようにするのが一番リーズナブルかもしれません。
警察に天下り法人を作ってもらい、そこで強力な窃盗防止システムなど立ち上げてくれたら嬉しい。Nシステムなども有効に使うことで効果を出せることだろう。
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