昨今、自動車運転を取り巻く環境が、大きく変化しています。逆走や煽り運転、ペダルの踏み間違いによる事故は、連日ニュースで取り上げられる状況です。危険が潜む場面では自己防衛が必要となります。その方法のひとつとして注目されているのが「ドライブレコーダー」です。
本稿では、国内大手保険会社の代理店を営む筆者が、実際に対応した保険請求事例を交えながら、ドライブレコーダーの映像が事故の過失割合にどの程度影響を与えるのか、詳しく紹介していきます。
文/河野みゆき
写真/Adobetock(トップ写真=photobyphotoboy@Adobetock)
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■ドライブレコーダー映像の重要性は高まる
昨今は、ドライブレコーダーにより事故当時の映像が録画されることで、事故の過失割合(どのドライバーが、どれだけ事故に対して責任を負うのか)の判定に大きく影響するようになりました。
ドライブレコーダーが普及していなかった一昔前は、自動車事故の過失割合が双方の言い分や道路状況、目撃者の証言などに基づいて決められることが多く、実状にそぐわないことが多かったのです。当事者同士で意見の食い違いも多く、示談までに数年かかることもありました。
しかし、現在はドライブレコーダーを搭載した車の増加によって、事故の詳細が証拠として残り、過失割合が明確かつ早く決まるようになっています。
■ドライブレコーダーが事故の過失割合を変えた事例
ここからは、筆者が実際に取り扱った事例を紹介します。いずれも、ドライブレコーダーの映像をきっかけに、事故の過失割合が変化したものです。
●事例1:商業施設の駐車場
Aさんが商業施設の立体駐車場のスロープを登っていると、下ってきた車がAさんの車の前に突然現れ、接触しました。Aさん自身は、自分では接触を避けることができない事故で、過失はないと申し出ます。しかし、相手のドライバーはお互い過失があった主張し、過失割合5:5を提示してきたのです。
Aさんはドライブレコーダーに記録された映像を保険会社に提出しました。その映像には、相手車がスロープのセンターラインを大きく割り込み、Aさんが走行するべき場所に入り込みながら下ってくる様子が、残っていたのです。
この映像により、相手は全過失を認め、Aさんの過失割合は0となりました。
●事例2:通勤途中の通学路
Bさんが通勤途中、歩道のない通学路を注意しながら走行していました。前方に子どもたちの姿を確認したBさんは、周囲の安全を確認しながら停車し、子供たちの安全を確保しながら優先的に通行させようとします。すると、子どもたちが車の横を通り過ぎるのと同時に、大きな音を耳にしました。
車から降りて確認すると、ドアミラーの破損を目の当たりにします。Bさんは当初、幅寄せをしすぎて自損事故を起こしたのかと考えましたが、車は完全停止した状態で音が聞こえたため、自損事故の可能性は極めて低いものでした。
そこで、Bさんはドライブレコーダーに残された映像をすぐに解析します。すると子どもが水筒を振りながらBさんの車の横を通り、その水筒がドアミラーに当たって破損したことがわかったのです。
このドライブレコーダーの映像から、子供の過失が認定され、Bさんは自分でドアミラーの修理代を出すことなく、車は元どおりに修理されています。
このように、ドライブレコーダーの映像は、被害状況を克明に記録し、しっかりとした証拠として残ります。多くの事故、事件の検証に使用され、自動車事故の過失割合を決める場においても、効果を発揮するのです。
■おすすめのドライブレコーダーとは?
最近、自動車保険会社がドライブレコーダー特約付自動車保険を取扱うようになりました。保険会社としても、ドライブレコーダーの取り付けを推奨しています。
ドライブレコーダー特約付自動車保険は、ドライブレコーダーによる映像や音声記録だけでなく、端末がカスタマーセンターへの通信手段を兼ねていて、運転中のトラブルにも即対応してくれるのが魅力です。
ただし、ドライブレコーダーは専用品を貸与され、保険の特約を外すと、機器の返却を行わなければならないのが、少々ネックとなります。
一般的な市販品では、カスタマーセンター直通とはならないものの、事故の証拠を残すには十分です。前方撮影のみの1カメラタイプは種類が多く、比較的安価で購入できます。
さらに、より強い状況証拠を残したい、運転中の安心を求めたい方には、後方にもカメラがついた2カメラタイプをお勧めします。また、1つの機器で車の周囲全てを撮影可能な、360度撮影タイプもよいでしょう。
2カメラや360度撮影タイプは、1カメラタイプに比べると高価です。また、後方カメラや360度カメラは、装着する場所を選び、その場所によっては、後方や遠方を撮影しづらい場合があります。愛車の構造を専門業者と相談しながら、しっかりと撮影できる機器を選びましょう。
ドライブレコーダーには「相手のナンバーが読み取れるカメラ性能」が重要です。画質のよさは「解像度」と「画素数」の数値がポイントとなります。解像度は1920×1080以上、画素数は200万画素以上でフルHD以上のものを選べば間違いありません。
また、ドライブレコーダーを使用する際に注意したいポイントがあります。映像の記録にはメモリーカードを使用するものが一般的です。
記録容量がなくなれば、自動的に上書きしていくものが多いのですが、何度も上書きを繰り返していると、メモリーカードに記録されないというトラブルが発生する可能性があるのです。
これを避けるため、メモリーカードの定期的なフォーマットを行いましょう。最近では、フォーマット不要を謳うドライブレコーダーも販売されています。新しく購入する際には、このような機種を選ぶことで、録画できなかったというリスクを避けることができるはずです。
ドライブレコーダーの映像や音声は、自動車事故の過失割合を決定する材料として保険会社でも活用されています。今後も重要な証拠として利用が広がっていくでしょう。
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