1986年に公開され大人気となったトム・クルーズの出世作『トップガン』の続編、『トップガン マーヴェリック』が本日公開された。実機を用いた迫力ある戦闘機による空戦シーンで話題となった前作だが、その魅力は本作にも引き継がれている。
映画の公開に合わせてトム・クルーズが来日するなど話題沸騰の本作の魅力をお伝えしよう!
文/渡辺麻紀、写真/東和ピクチャーズ
(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
■36年ぶりの続編!! マーヴェリックが帰ってきた!!
ミスター・ハリウッドともいえるトム・クルーズが最新作『トップガン マーヴェリック』をひっさげて来日を果たした。
本作は当初、2019年に公開する予定だったが、コロナ禍の影響で延びに延び、やっとこの5月27日、日本でも封切られる運びになった。本作の公開とトムの来日は、まるで日本のコロナの鎮静化を象徴しているようにも見える。
さて、その『マーヴェリック』。これは1986年公開の『トップガン』の正当派の続編。リブートでもリメイクでもなく、本当に話が繋がっている続編だ。前作は36年も前に作られているのだから当然、ストーリーについていけないと危惧する人も多いだろう。
ところが驚くことに、シンプルな基礎知識さえ押さえておけば、ちゃんとついて行けるというか、何の問題もなく楽しめる。それが本作の凄いところでもあるのだ。
その知っておきたい基礎知識は、トム演じるピート・ミッチェルことマーヴェリック(TACネーム)の設定。かつてトップガン(米海軍パイロットのトップ1%のみが入れる養成学校)に在籍中、相棒であり親友だったグースを練習中の不慮の事故で失い、それがトラウマになっているスゴ腕パイロットということだけ。
あとは映画を追って行けばすべてわかるので、わざわざ1作目を観なおす必要もない。しかも、その歳月がモノをいうドラマも用意された、大変優れた脚本なのである。
■教官となったマーヴェリックが向き合うのは亡き戦友の息子
今回のマーヴェリックは教官として、そのトップガンに大きな秘密任務を携えてやってくる。最高の飛行テクニックが必要なこの任務のためにトップガンのパイロットを鍛え、ベストの人材を選ぶのが役目だ。
物語の核となるのは、若きパイロットのなかにいたグースの息子。彼とマーヴェリックには深い溝と確執があるため、それが作品にドラマをもたらせている。
そこで、このコラムにふさわしい「車」なのだが、マーヴェリックが乗るのは1作目と同様バイクで、今回はカワサキのニンジャH2R。1作目も同じくカワサキのGPZ900R。ということは、マーヴェリックの好みもちゃんと引き継がれているということになる。
一方、車をもっているのは、ジェニファー・コネリー扮するマーヴェリックの恋人ペニー。トップガンの連中が入り浸っているバーの経営者で、ポルシェ911の古い930型を所有している。
このペニー、1作目では、マーヴェリックが昔、付き合っていた提督の娘としてセリフで言及され、登場するのは本作が初めてになる。
どちらかというと地味な印象のジェニファーなので、ポルシェを乗り回すふうには見えないのだが、それでもポルシェなのは1作目とのリンクを考えてのこと(だと思う)。その前作でトムの恋人を演じていたケリー・マクギリスの愛車がやはりポルシェだったからだ。
彼女の車は名車と言われるポルシェ356スピードスターのカブリオレ。この車はなぜか女性が運転するとかっこよく、本コラムの最初に紹介したカーアクション映画の傑作『ブリット』(1968)でも、スティーブ・マックィーン扮する刑事ブリットの恋人(ジャックリーン・ビセット)の愛車として登場している。
なお、映画が公開されるまえは、戦闘機とトムが運転するポルシェGT3のチェイス等のクールな映像がアップされていたが、残念ながら本編にはそういうシーンはなかった。
■搭乗機はキャスト変更!! マーヴェリックの愛機はスーパーホーネットに
では、本シリーズのもうひとりの主役でもあるトムの愛機はどうなのか?
1作目ではF-14トムキャットを使っていたが、36年を経た今回はF/A-18スーパーホーネット。映画のウリはデジタルを使用せず、機内に6台ものIMAXカメラを設置、トムを含む役者たちが実際にその機に乗り込み、飛行シーンを撮影したというところにある。
この飛行シーンは本作のハイライトのひとつ。最新設備の劇場で鑑賞すると没入感がハンパない。
このシーンをよりリアルにするためトムは、若きトップガンを演じる役者たちにスーパーホーネットに慣れるためのブートキャンプを開設。毎晩、彼らのレポートに目を通し、ひとりひとりに合った訓練をカスタマイズしていたという。トムはオフカメラでも彼らの教官を演じていたわけだ。
また、マーヴェリックが丁寧に整備している第二次大戦の戦闘機、P-51マスタングはトムの実際の愛機。ロールスロイス社のエンジン、マーリンを搭載していることもあって、車ファンには親しみのある名機だ。
ちなみに、戦闘機に関しては後半、嬉しくなるようなサプライズも待っているのでシリーズファンは楽しみにしてほしい。
本作、オープニングは1作目のテーマソングだったケニー・ロギンスの『デンジャー・ゾーン』で幕を開け、映像はオレンジ色の夕陽をバックにした空母上で飛び立つ戦闘機の図。これもまた、ちゃんとオリジナルとリンクしている。
最初に、本作を楽しむ場合、基礎知識だけ押さえておけばいいと言ったが、基礎知識以上を押さえている人には、続編ならではのお楽しみが山積み用意されているということ。ここまで親切かつ丁寧に作られた続編には滅多にお目にかかれない。最近のシリーズものではピカイチの出来栄えだ。
●解説●
上官の命令に背いたベテランパイロットのマーヴェリックことピート・ミッチェルに課せられた新しい任務、それはかつて彼が在籍していたトップガンの教官だった。
そこで彼を待っていたのは、訓練中に亡くなった親友の息子グースと、実現不可能とも言えそうな極秘任務。マーヴェリックはグースの反抗的な態度に手を焼き、さらにはその任務の難しさに行き詰まる。
1986年公開の『トップガン』はトム・クルーズのアクション映画デビュー作であり、彼はこの大ヒットでスターの地位を確立し以来、ハリウッドのトップを走り続けている。
当時、大きな話題となったスタイリッシュな映像と音楽のコラボレーションは、これが長編2作目になるトニー・スコット監督によるもの。トム同様、トニーも本作でブレイクしたのだが、2012年、残念なことに亡くなってしまった。
本作は当初、そのトニーが再びメガホンを取ることで進んでいたが、彼の死によって中断。トムが主演したSF『オブリビオン』(2013)のジョセフ・コジンスキーがそのあとを継いで監督を務めることになった。
そういう経緯があるためか、随所にトニーに対するリスペクトとオマージュが散りばめられていて、それも本作の大きな魅力となっている。こちらも最後にサプライズが用意されているので、楽しみにしてほしい。
『トップガン マーヴェリック』
2022年5月27日(金)
(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
配給:東和ピクチャーズ
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