いまや生活に欠かせないスマートフォン。ただ、同じスマートフォンを長く使っていると「なんか最近バッテリーの減りが早くなってきたような……」と感じることはあるだろう。以前と比べればバッテリーの性能も随分向上していると思うが、それでもやはり弱くなっていくもの。
クルマのバッテリーも、アイドリングストップのあるクルマのバッテリーは劣化が早い。アイドリングストップによってエンジンを停止したあと、エンジンを再始動する際はバッテリーに大きな負荷がかかる(大電流を放電する)ため、劣化が進みやすいのだ。
このためか、バッテリー交換の推奨サイクルは大幅に縮まっており、アイドリングストップ非装着のバッテリー交換サイクルは通常「3~4年に一度」であるのに対し、アイドリングストップ車の場合、多くの場合「18カ月または24カ月」と、おおよそ、これまでの「2分の1」程度の寿命となってしまっている。
では、ハイブリッド車の駆動用バッテリーはどうなのだろうか。どのくらい性能がもつのか、ということに加えて、交換となった場合の費用についても、ご紹介しよう。
文/吉川賢一
写真/日産、トヨタ、ダイハツ、ホンダ
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■5年間10万キロまでの駆動用バッテリーのトラブルは「無償」
まずは、主要な国内メーカーのハイブリッド車についての、駆動用バッテリー保証内容を確認しておこう。トヨタのハイブリッド車の新車保証では、「5年以内もしくは10万km走行以下」での駆動用バッテリーのトラブルならば、「バッテリーを無償交換」するとある。
ホンダのハイブリッド車のメーカー保証期間も、「新車登録日から5年間、ただしその期間内でも走行距離が10万kmまで」とあり同様だ。
日産のハイブリッド車もメーカー保証として「5年間または10万km走行のいずれか早い方まで」となっており、 ダイハツの「ロッキーHYBRID(ライズHYBRID)」では、バッテリーについて開発担当者への取材したところ、「10年10万キロは性能保証されるが、バッテリー交換を要するほど劣化してしまう仕様にはなっていない」という回答だった。
ちなみに、バッテリーの劣化が命取りとなる純電気自動車「リーフ」は、初代モデルでは「5年あるいは10万km」という車両保証だったが、2015年11月のマイチェンで30kWh化したモデル以降は「8年、16万kmの駆動用バッテリー容量保証」をしており、この期間内で、「ツインデジタルメーターのリチウムイオンバッテリー容量計が9セグ未満となった場合に、修理や部品交換を行い9セグ以上へ復帰する(無償)」としている。
この「セグ(セグメント)」とは、新車時のバッテリー容量を12として表した容量表示で、メーター内の右端に並んでいる。新車時は12あるが、劣化が進むと11、10と徐々に減少。総容量が減るので、フル充電をしても走行距離は減り、8セグまで減ると新車時の「67%」しか走行できない。
■メーカー保証の2倍以上は耐久性があるはず
ハイブリッド車のバッテリーについては、毎年どの程度の台数が、補償を必要なレベルで劣化をして、実際にバッテリー交換にまで至っているのか、データが公表されていないためわからないが、新車販売ディーラーの担当者や中古車買取専門店の担当者などの情報を見ていても、「保証対象となりバッテリー交換をした」といった事例は、あまり聞くことがない。
ただ、一般論として、機械設計をする際は、必ず「安全率」を考慮して製品化を行う。筆者は会社員時代、自動車メーカーでサスペンション設計をしていたが、サスペンション部品も、一般人が使う想定回数の「約10倍」は、寿命が持つように設計していた。
サスペンションは特に、壊れたら走行不能に陥る可能性もあるため、それくらい厳しく安全率を見込んでおく必要があるのだ。
ハイブリッド車のバッテリーは、途端に走行不能になるものではないが、それでも、メーカーの保証が5年10万kmだとすると、そこを超えると使えなくなる「安全率1.0」の設計は考えられない。
メーカーが「5年10万kmは保証」と言うのには、絶対的な自信を持ったうえで決めているはずであり、おそらく2倍以上の「安全率」を持たせて、耐久性を確保しているだろう。
■トヨタのハイブリッド車用バッテリー交換は17万円~、ニッサンリーフは30万円~
ただ、駆動用バッテリーを交換した事例はなくはない。あくまで一例であるが、保証期間を過ぎたトヨタ プリウスの場合、駆動用バッテリーの交換には約17万円の費用がかかったそうだ。
繰り返しになるが、車種ごとに価格や工賃などは異なってくるため、詳細な交換費用は各ディーラーでの見積もりが必要なので、参考としていただきたい。ただ、実際にバッテリー交換に至ったプリウスの事例は非常に少ないそう。現に、走行距離が20万kmを超えても、元気に走っているプリウスは沢山ある。
日産 リーフの場合、メーカー保証を過ぎたバッテリー交換の費用は、新品バッテリーで24kWh:65万円、30kWh:80万円、40kWh:82万円ほどかかる。中古車の値段かと思うほど高額だ。
実は筆者も、8セグメントまで減った初期型リーフを中古で購入した経験があるが、8セグまで満充電し、航続距離が120kmと出ても、冬場だと走行距離は60km程度しか走ることができなかった。一度本気でバッテリー交換を検討したのだが、見積もり金額が車両購入金額を上回ったため、諦めた。
日産は、リーフの再生バッテリーを使った有償交換プログラムを2018年から開始している。状態のよいセルを選定した「再生バッテリー」は30万円で交換できるが、メーカーが保証するのは「10セグ」とのこと。1年も経てばまた9セグになる可能性もあり、価格は安いがリスクは大きい。
■ハイブリッド車のバッテリーはそれほど気にする必要はない
バッテリーEVはさておき、ハイブリッド車であれば、中古車であってもそれほどバッテリーの劣化を気にする必要はないだろう。
万が一交換が必要になったとしても、交換費用は高額ではあるが何十万というレベルではなく、それをリスクと考えて中古ハイブリッド車を避けることは、非常にもったいないことだと思う。
また、トヨタの場合、駆動用バッテリーのメーカー保証を延長することも可能。5年目を迎える前の中古ハイブリッド車を買った場合、5年目の車検のタイミングで、「保証がつくしプラン」を選ぶと、さらに2年間の保証延長ができ、それには駆動用バッテリー保証も含まれている。中古車であっても安心してハイブリッド車を選んでいただいて大丈夫だ。
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