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<p>Mリーグが「見る雀」でマージャンのファン層拡大【ブーム解析】</p><p>Mリーグが「見る雀」でマージャンのファン層拡大【ブーム解析】</p><p>2022年5月2日発売の「日経トレンディ2022年6月号」では、「2022年上半期ヒット大賞&下半期ヒット予測」を特集。マージャン(麻雀)の試合の配信動画を見て楽しむ「見る雀」が近年ブームとなっている。けん引役は、プロリーグ戦「Mリーグ」。ドラマを生む仕掛けや演出にファンが盛り上がり、チームや選手の「推し活」が熱狂の輪を広げる。</p><p>2022年3月31日、東京・六本木の劇場施設に約900人が集まり、大画面に映る一打一打に声援を送った。行われていたのは、マージャン(麻雀)のプロリーグ戦「Mリーグ」のパブリックビューイングだ。会場には、若いカップルや家族連れの姿も目立つ。 実は最近、マージャンの試合の配信動画を見て楽しむ「見る雀」がブームとなっている。そのけん引役が、18年にスタートしたMリーグだ。 ネットテレビ「ABEMA(アベマ)」では、1シーズン216試合のすべてが生配信されており、22年4月下旬まで行われていた「Mリーグ2021−22」シーズンでは、配信1回当たりの視聴数が平均約100万に達するほどの人気コンテンツに成長。Mリーグ創設時の2018−19シーズンと比べて、視聴数は約3倍に増えている。冒頭のパブリックビューイングにも、こうした見る雀でMリーグのファンになった人々がたくさん参加しているのだ。 近年のMリーグの盛り上がりは、賭け事など負のイメージも根強かったマージャンを、「老若男女が見て楽しめる、プレーして楽しめる『頭脳スポーツ』へと変えていく」(Mリーグの企画に携わるサイバーエージェントABEMA編成統括本部スポーツエンタメ局局長の塚本泰隆氏)という目標を掲げ、戦略を練って取り組んできたマーケティングが実を結びつつある結果だ。 ヒットのカギの一つが、もとは個人戦であるマージャンを「チームスポーツ」にしたこと。Mリーグでは、5つのマージャンプロ団体から選ばれた選手が最大4人で1つのチームを組み、ユニフォームを着用。渋谷ABEMAS、U-NEXT Pirates、KADOKAWAサクラナイツ、EX風林火山、赤坂ドリブンズ、KONAMI麻雀格闘倶楽部、セガサミーフェニックス、TEAM RAIDEN/雷電の全8チームが、約半年間のシーズンを戦って優勝を目指す。俳優の萩原聖人やモデルの岡田紗佳、声優の伊達朱里紗なども選手としてユニフォームを着る。 サイバーエージェント、テレビ朝日、コナミアミューズメント、電通などの企業がチームのオーナーとなり、個々の選手とプロ契約を結ぶ(選手には最低年俸400万円を保証)。毎年9月末~10月初めにリーグ戦が開幕し、各チームがレギュラーシーズン90試合、セミファイナルシリーズ16試合(上位6チームが進出)、ファイナルシリーズ12試合(上位4チームが進出)を戦う。 チームスポーツ化することで、「戦術や選手の選び方、起用法などでチームごとにカラーの違いが出てくる」と塚本氏。また、ある選手が負けた試合の後に、同チームの別の選手が失点をカバーしようと次の試合に臨む、といったストーリー性も生まれやすい。 好きな選手を通じてチームを応援する、好みのチームを見つけてその所属選手を応援する、という両方のルートでファンが増えることで「熱狂度がより高まる」(塚本氏)。チームメイトと共に真剣に戦う選手の姿を見れば、チームや選手への愛着も一層深まる。 ルール設定や仕掛けでドラマを生む ドラマを生む仕掛けや演出も重要なヒット要素だ。Mリーグの試合は「一発・裏ドラ・赤ドラあり」という、偶然要素が加わりやすいルールを採用。マージャンをよくする人にはなじみがあるものだ。点数が高い上がりが出やすく、試合終盤での大逆転もよく起こる。ドラマチックな試合展開に、観戦しているファンは大いに盛り上がる。 また、チームは必ず男女混成にする決まり。マージャンは性別、年齢を問わず対等に戦える競技であり、若手女性プロがベテラン男性プロに勝つといったシーンが当たり前のようにあるのも、大きな魅力になる。 ABEMAの配信では、こうしたマージャンの面白さを幅広い層の視聴者に伝えるため、「試合中の点数の移動や選手の成績を数字やグラフで分かりやすく画面に表示したり、スポーツ中継のように実況と解説で盛り上げたりと、工夫している」(塚本氏)。 毎シーズンの選手の入れ替えも興味の的だ。次のシーズンはどんな新戦力が入るのか、誰が抜けるのか、選手の移籍はあるのか。ファンの関心の高さは、他のプロスポーツと変わらない。 新たに入る選手は、各チームが毎年の「ドラフト会議」で指名する。指名選手をチームごとに色々と予測して盛り上がるファンも多い。今やMリーガーを目指すマージャンプロは多く、ここでも人間模様のドラマが生まれる。上位4チームによるファイナル進出を、同じ選手構成で2シーズン連続で逃したチームは、次のシーズンに選手構成を必ず変える決まりがある。そのため、ドラフト会議はほぼ毎年行われることになる。 こうして見る雀を通してファンになった人が、Mリーグとのつながりをより強く体感できるのが、記事冒頭のパブリックビューイングのようなリアルイベントや、そうした場での選手との交流だ。4月に東京・秋葉原で開催されたMリーグのポップアップストアのイベントにも、チームや選手の「推し活」をしようと、多くのファンが訪れた。選手との会話や写真撮影などができるチャンスもあり、うれしい機会だ。 さらに、各チームが情報発信するSNSやYouTube、独自に行うオンラインイベントなども、Mリーグとファンとの接点として大いに役立っている。 「よりよい体験を提供し、ファンと共に熱狂をつくっていく」と塚本氏。コンテンツとしてのマージャンの価値が、将棋や囲碁に肩を並べるのも夢ではなくなってきている。 注)ブーム解析の全文は、「日経トレンディ」2022年6月号に掲載しています。日経クロストレンド有料会員の方は、電子版でご覧いただけます。 ▼関連リンク</p>