欧州5ドアハッチバックのベンチマークといわれ、日本でも高い人気を誇るのがフォルクスワーゲンゴルフだ。一方、2代目に進化した日産ノートの上級バージョンとして発売されたノートオーラは、その高い質感が評価され、国産車ユーザーのみならず、輸入車志向のユーザーからも人気を集めている。
そこで注目の両モデルの魅力を伊藤梓氏に分析してもらった!
文/伊藤 梓、写真/ベストカー編集部
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■元ゴルフオーナーの伊藤梓氏が比較する!
「世界的にお手本のクルマと言えば、ゴルフ!」というのが、クルマ好きの間では通説になっていますが、果たして今もそうなのでしょうか? ゴルフが分類されているCセグメントには、日本車からも良いクルマがどんどん増えています。
特に新型になって大幅な進化を遂げたのが、日産ノート。ルノーのルーテシアとプラットフォームを共有したこともあってか、走行性能やクルマ全体の質感が大幅にレベルアップしています。
そして、さらにe-POWERのモーターをよりパワーアップし、装備やデザインも上質になった上級モデルのノートオーラも登場しました。
最初は「単に装備を盛って売り上げを増やすためのクルマなのでは……」と疑っていましたが、実際に触ってみると、これがクルマ好きを唸らせるほどの出来!
今回は、そんな世界のクルマのベンチマークと言われるフォルクスワーゲンゴルフと、上質な世界観を作り出した日産ノート オーラを比較してみることにしました。
まず、消費者として気になるのは、価格帯。本体車両価格でいえば、ゴルフが約300〜475万円(GTIを除く)なのに対して、やはり国産車であるノートオーラの方が約260〜295万円と安価で購入できます(NISMOを除く)。
ただ、注意が必要なのは、ノートオーラは、ナビゲーションシステムや高度運転支援機能のプロパイロット、専用設計されたBOSEのスピーカーなどは、セットオプションになっているということ。
この盛り盛りのオプションは約40万円なので、これを加味するとノートオーラは、300〜325万円くらいの価格帯となります。
ゴルフも純正ナビのDiscover proが約20万円、Harman Kardonのスピーカーは、電動スライディングルーフとのセットオプションで約23万円となっています。
これは勝手なイメージですが、ノートオーラは、そもそも標準モデルよりもより快適で上質な空間を求める人が購入するモデルなので、「日産の売りであるプロパイロットは欲しいし、音質の良いスピーカーも欲しい……」という人は多いはず。
なので、このセットオプションの装着率は比較的高いのではないかと思います。
一方で、ゴルフは、盛られたオプションよりも、自分のライフスタイルに合わせて必要なものだけ選びたい人が多い気がします(私自身が元ゴルフオーナーでそういう考え方なので)。こうなると、上級グレード以外は価格帯はほぼ変わらず、購入層もほぼ同じだと考えられそうです。
最初は「40万円のセットオプションは高すぎない?」と思ったのですが、純正のナビ単品が約20万円しますし、それに加えてプロパイロットやBOSEの8スピーカーオーディオなどが付いてくるなら妥当な価格なのかなと思いました。
私自身は、車内での音楽は絶対必要なタイプなので、このBOSEスピーカーは特に一押し! 新型ノートになって大幅に車内の静粛性が高められたこともあって、BOSEスピーカーから流れる音楽はより豊かに心地よく聞こえました。
ただ、「このオプションにシートヒーターを加えて欲しかったな」というのが、正直な気持ちです。シートヒーターは、4WDモデルには標準で装備されるのですが、2WDモデルはホットプラスパッケージ(約7万円)というセットオプションを装着しなければ、シートヒーターが装着されません。
ホットプラスパッケージは寒冷地向けのオプションとして書かれていましたが、女性としては寒冷地に住んでなくてもシートヒーターは欲しいもの……。
では、ゴルフはどうかというと、約340万円以上のグレードからシートヒーターが標準装備されています。そう考えると、盛り盛りオプションにホットプラスパッケージを付けてもノートオーラの方が安いのですから、「上手くできてるな!」とつい唸ってしまいました。
■両車に大きな差があるポイントとは?
この2台の比較をするときに、個人的に大きな注目ポイントは、内装の質感です。
ゴルフは元々ベーシックな大衆車ということもあり、8になって先進的な機能やデザインを取り入れてはいるものの、やはりシンプルで飾り気がないという印象。個人的には、すっきりしていて好きですが、「この価格帯でこれ?」と思う人はいるかもしれません。
それに対してオーラは、ファブリックや木目調のデザインを上手く取り入れていて、パッと見ただけでノーマルのノートとは全く別物だと分かる高級感があります。
インテリアは、自分の好みの家具のように落ち着ける雰囲気があるかどうかが大切だと思うのですが、ノート オーラは、上質感だけでなく居心地の良さを感じられる作りになっていました。
とはいえ、クルマの質感というのは見た目だけでは分からないもの。特にゴルフは、見た目よりも、「走る・曲がる・止まる」というクルマの基礎がしっかりとしているからこそ、魅力的なモデルです。それは、新型のゴルフ8に乗っても変わらないと感じました。
今回からマイルドハイブリッド化されたことで、これまでややネックになっていたDSGのギクシャク感が少なくなり、どんな領域でもスムーズに運転できます。ハンドリングは、ややクイックに味付けられていて、これまでの「切った通り走る」という印象から「思ったより曲がる!」という驚きを覚えました。
一方で、ノートオーラは、先代から大幅に走行性能が向上し、正直これまでは運転については何の感想も抱かなかったところから、はっきりと「運転していて気持ちがいい」と感じられるようになりました。
ノートオーラは、ノーマルモデルよりもパワーアップし、最高出力100kW/最大トルク300Nm(!)になっていることもあって、どんなシーンでも力強く余裕を持って走ることができるのも高ポイント。
少し気になったのは、ノートオーラは17インチのタイヤが標準装備になっていることもあり、やや乗り心地は硬めなところ。
それ以外は「欧州車に肩を並べた!」……とまでは言い切れませんが、私たちのように職業柄、目を三角にして「走りがいいかどうか」を確かめているような人でなければ、欧州車と遜色ないと感じられるくらい、走行性能の完成度も高いモデルになっています。
■ノートオーラはゴルフの壁を越えられたのか?
これまでのゴルフは、どれだけクルマを作りこんでも、強い個性や突出して良い/悪い点がないからこそ、誰にでも受け入れやすいモデルだったと思います。
私は、その朴訥としたクルマ作りが好きで、毎日乗ることでその良さをじんわりと感じられるモデルに魅力を感じてゴルフ7を購入したのですが、ゴルフ8は、以前のシンプルな価値観とは少し違ってきているのかなと感じました。
デザインもやや主張を感じるようになったり、走りもスムーズになったとはいえ、これまでと比べると添加物が入ってるような感覚があると思わせる部分もありました。
世界的にも電動化が進み、安全性の高さや先進的な装備が当たり前になってきたこともありますし、大衆車代表のゴルフと言えども、もう「走る・曲がる・止まる」だけでは、ユーザーに響かないだろうと考え始めたのかもしれません。
ゴルフ8は、まさにその間で揺れ動いていて、「一般のニーズに近づかなければいけない、でもゴルフの歴史を捨てることはできない」と方向性を決めかねているようにも思えました。
逆に、ノートオーラは、最初からしっかり目標を見定めていて、「輸入車に負けない質感を身に着ける、さらにこれまで日産が培ってきたプロパイロットやe-POWERなどの技術や、日本車ならではの気が利いた快適装備などをしっかり盛り込む」ということをしっかり達成しているモデルだと感じました。
走行性能だけに焦点を当てれば、ノートオーラはまだゴルフの壁は超えられていないかもしれませんが、ユーザーのトータル満足度で見れば、ノートオーラに軍配が挙がると思います。
ノートオーラの完成度を見て、これから輸入車を手にするとしたら、個性がしっかりあって「これじゃなきゃだめだ」と思えるモデルでなければ、このレベルの日本車には太刀打ちできないかも、とまで思ってしまいました……。ノートオーラ、恐るべし!
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