硬派なオフロードモデルのラングラーはジープブランドのなかでも最も人気の高いモデルである。そのスタイリングは1940年代初期型ジープのアイデンティティを残したまま、走行性能、快適性、安全性を大幅に向上させている。
そんなジープラングラーは、ついに電動化されハイブリッドモデルの4xe(フォーバイイー)となった。電動化されてもそのパフォーマンスは健在で、システム出力380ps、最大トルク637Nmを発生する。
今回は、ジープのなかでもオフロード最強モデルと言われているラングラー4xeルビコンの試乗テストの機会を得ることができたモータージャーナリストの木村好宏氏が、アメリカで試乗した感想をお伝えする。
文/木村好宏、写真/ステランティス、木村好宏
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■伝統を誇るラングラーについにPHEVが!
ジープラングラーのルーツは1941年に誕生した軍用ジープをベースにしたシビリアンタイプ、すなわち1944年のタイプCJから始まっている。そして現行モデルは2017年に発表されたJLで、ポルシェ911(1964年)よりも20年以上も長い伝統を誇っている。
この要因は何といってもシンプルで堅牢、加えてほかに類を見ないほどのワイルドなスタイルとそれに相当するオフロード走破性にある。
しかし、こうした伝統ある存在にも環境問題が重くのしかかっており、ステランティスは昨年からプラグインハイブリッドモデル、4xe(フォーバイイー)をラングラーラインに登場させた。このPHEVシステムにおけるパワートレーンの主力は272psと400Nmを発生する2L4気筒で、マチックギアボックスとエンジンの間に107kW(145 ps)と245Nmを発生する電気モーターが挟み込まれ、システム出力380ps、最大トルク637Nmを発生する。
そして0-100km/hを6.4秒という俊足で加速する。またリアシートの下に搭載されるリチウムイオン電池は96個のセルから成っており、そのエネルギー容量は17.3kWhで、EV航続距離は25マイル(WLTP)と公表されている。
■ラングラー最強グレードのルビコンをテスト試乗
このラングラー4xeは昨年の発売以来、アメリカ市場では引っ張りだこで、PHEV市場ではそれまで1位だったトヨタRAV4からトップの座を奪ったほどである。
今回テストしたのはラングラーのもっとも硬派なモデル、ルビコンでブルーのボディカラーで、ゴツい四角張ったボディで市街地では目立つことこのうえない。フロアから30cm、周囲のクルマを見下ろすような高いドライビングポジションは四隅の見切りがよく、市内ばかりではなく、さまざまなシチュエーションでの取り回しを楽にしている。
ダッシュボード左下にあるドライブモード・スイッチは「エレクトリック」、「ハイブリッド」、そして「eセーブ」の3種類で、まずは最初のEVモードで市街地を抜ける。2.4トンの自重に対して107kW(145 ps)と245Nmを発生する電気モーターは充分な走りを見せる。
いわゆる音なし走行だが、ちなみに歩行者用警報音AVAS(Acoustic Vehicle Alerting System)は装備されているが、ラングラーのワイルドなスタイルは周囲の目を引くので、警報音を出すまでもない。
■カタログ燃費は驚きのリッター28km!
また、市内では最大0.25Gまでの回生ブレーキング効果で、いわゆるワンペダルドライブも可能だった。やがてハイウェイではハイブリッドモードに切り替えるが、8速ATを介した電気モーターとICEの協調はスムーズで、さらにブレーキ回生においても不自然さは見られなかった。
市街地を抜けてアメリカによくある郊外の未舗装路に出て進んで行くと採石場に出た。そこには大型トラックによってできた深い轍があって、ちょっとばかりオフロード気分を味わった。そこでは高い地上高に加え大きなアプローチ&デパーチャーアングルによって深い穴をクリアし、さらにオンデマンドフルタイム4WD「セレック・トラック」は泥濘地でも素晴らしいトラクションでその片鱗を見せてくれた。
カタログデータによればラングラー4xeの燃費は100kmで3.5L、すなわちリッターおよそ28km、二酸化炭素排出量はスタンダードモデルと比べるとマイナス70%と、まさに環境への負荷を低減している。
ラングラーは逞しい外観のなかに環境への優しさを内包した、まるでマッチョだがこころ優しいアメリカン・ヒーローのような性格を持ったモデルであった。これならば市街地での日常ドライブはもちろん自然のなかでのオフロードトライアルも堂々とできるだろう。
ステランティスジャパンからの発売は今年中だが、ジープファンならずとも注目されるモデルになるだろう。
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