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納期縮小がんばれ!! 発売から1年 現行型ヴェゼルSUV王者に返り咲くには?

 2021年4月23日にホンダ現行型「ヴェゼル」が発売してから、約1年経過した。そこで、直近2022年1~3月の1カ月平均登録台数をみてみると、約4500台という記録だった。激戦区であるコンパクトSUVジャンルにおいて、SUV王者であったヴェゼルが苦戦を強いられている。

 現行型ヴェゼルの実力は、ほかのライバル車と比較しても、さまざまな点でナンバーワンを誇る。それならば、なぜここまで販売が伸び悩んでいるのか? 

 そこで、本稿では、ホンダ現行型ヴェゼルの販売状況、知られざる魅力について解説する。さらに、ヴェゼル購入時に気をつけておきたい点もお届け。

文/渡辺陽一郎、写真/HONDA

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やはり納期長期化が原因か 現行型ヴェゼルの販売最新情報をチェック!!

上質な内装や多彩なシートアレンジなど多くの魅力を備えるが、納期の長期化で販売台数が伸び悩むヴェゼル

 ヴェゼルはコンパクトSUVの主力車種だが、2022年1~3月の1カ月平均登録台数は約4500台に留まる。ライズの平均登録台数は約1万台、ヤリスクロス(コンパクトカーのヤリスとGRヤリスを除く)は約8700台、カローラクロスは約7100台だから、ヴェゼルの約4500台は大幅に少ない。

 しかしコロナ禍になる前の2019年には、ヤリスクロスやカローラクロスは登場していない、ライズも同年11月のデビューだから、先代ヴェゼルはモデル末期ながらSUVの販売1位になった。2019年の1カ月平均登録台数は約4700台で、現行型の約4500台よりも売れ行きが多かった。

 現行ヴェゼルの販売は、なぜ伸び悩むのか。販売店に尋ねると以下のように返答された。「ヴェゼルは納期が長い。売れ筋のe:HEV(ハイブリッド)Zは、売れ筋のボディカラーなら約6カ月で納車できるが、個性的な色彩を選ぶと1年を要する。またe:HEV・PLaYは、納期がさらに延びたので、メーカーへの発注を中断した。お客様からの注文は受けるが、発注の順番待ちをしている状態だから、納期は分からない」。

 納期が延びた原因は、半導体の不足なのか。「半導体以外にも(さまざまな信号を伝える)ワイヤーハーネス、塗料、各種のユニットなど、いろいろな供給が滞っている。またe:HEV・PLaYは、もともと計画していた生産台数が少なく、そこに予想以上の受注が生じたから納期も延びて発注の中断に至った」。

 この納期遅延とe:HEV・PLaYの発注中断は、当然ながらヴェゼルの魅力を下げる。ちなみに今は、新車需要の約80%が乗り替えに基づくから、今まで使ってきた車両を下取りに出して新車を買う。その納期が予想以上に長引くと、新車が納車されるまえに、下取りに出す車両が車検を迎えてしまう。納車を待つために車検を受けるといったムダが生じるから、購入時には充分に注意したい。

 納期の問題を除くと、ヴェゼルは優れた商品だ。発売は2021年4月だから約1年を経過しており、ヴェゼルの後に、カローラクロス(2021年9月)、ライズ&ロッキーeスマートハイブリッド(2021年11月)なども加わった。それでもヴェゼルの備える魅力は薄れず、ナンバーワンとされる複数の魅力を備えている。その内容は以下のとおりだ。

ヴェゼルがコンパクトSUVのナンバーワンになる魅力

(1)内装の上質感がコンパクトSUVのナンバーワン

 外観の見栄えは、フロントマスクを含めて見る人によって印象が異なるが、ヴェゼルは上質に造り込んだ。特にインパネ周辺の質感は、サイズが大きく価格の高いCR-Vと比べても、ヴェゼルが上まわる。メッキパーツの処理も巧みで、派手さを抑えて上品に仕上げた。

(2)居住性がコンパクトSUVのナンバーワン

 全長が4400mm以下のSUVでは、ヴェゼルの居住性が最も快適だ。特に後席の広さが注目され、身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半に達する。

 ヤリスクロスの膝先空間は、同様の測り方で握りコブシ1つ半、全長が4490mmのカローラクロスでも2つ弱だから、ヴェゼルの2つ半は広い。全長を4400mm以下に抑えながら余裕を持たせた。この後席の広さはCR-Vと同等だ。

(3)シートアレンジがコンパクトSUVのナンバーワン

 ヴェゼルは燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低い。後席は背もたれを前側に倒すと、座面も連動して下がり、平らで広い荷室に変更できる。

 また後席の座面を持ち上げると、車内の中央(前席の後ろ側)を荷室として使える。後席側のドアから、背の高い荷物を積むことも可能だ。用途に応じて、多彩な使い方を可能にしている。

(4)加速の滑らかさがコンパクトSUVのナンバーワン

 ヴェゼルが搭載するホンダのe:HEVでは、エンジンは主に発電を行い、駆動はモーターが担当する。高速道路を巡航するときは、効率を考慮して、エンジンが直接駆動する制御も行う。

 モーター駆動の効果もあり、ヴェゼルの加速感は、全長が4400mm以下のコンパクトSUVでは最も滑らかだ。ノイズも抑えられ、ミドルサイズSUVに匹敵する満足感を得られる。また高速巡航時を除くと、エンジンは発電用で駆動は行わないが、アクセルペダルを深み増すとエンジンの回転数も連動して上昇する。効率の追求と併せて、ドライバーの違和感を抑える配慮も行った。

(5)リアゲートの開閉時に手前に張り出しにくい

 ヴェゼルはリアゲートを寝かせて、ヒンジが前寄りに装着されるから、開閉時に手前に張り出しにくい。縦列駐車をしていて、車両後方のスペースが狭い場所でも、リアゲートを開閉しやすい。

ヴェゼルの欠点と選ぶときの注意点

 ヴェゼルはコンパクトSUVのなかでも特に優れた特徴を備えているが、欠点や選ぶときの注意点もある。その内容は以下のとおりだ。

(1)後席を使っているときの荷室長はあまり長くない

 実用性ではシートアレンジが多彩だが、後席を使っているときの荷室長(荷室の奥行寸法)はあまり長くない。後席の足元空間を広げた影響で、荷室長はキックスを下まわり、ヤリスクロスに近い。上下方向の荷室高には余裕があるが、荷室長は長くないので注意したい。

(2)後席の乗降性はSUVとしてあまり良くない

 リアピラー(柱)を寝かせたので、後席のドアの開口部も、上側が狭まった。後席の乗り降りでは、頭を少し下げる姿勢になる。幼い子供を抱えて乗り降りするときも、頭部をピラーに接触させないように注意したい。

(3)後席の外側に装着されるドアノブの位置が高い

 後席の外側に装着されるドアノブは、外観をスッキリと見せるために、高い位置に装着した。子供が自分で車内に入ろうとしたとき、手が届かない場合がある。ドアノブが縦長だから、操作性も良くない。

(4)100V・1500Wの電源コンセントが用意されない

 トヨタのハイブリッドでは、大半の車種に、100V・1500Wの電源コンセントが標準装着、あるいはオプション設定されている。この装備がヴェゼルe:HEVには見られない。100V・1500Wであれば、電子レンジも使えるから、災害時にも役立つ。ヴェゼルe:HEVも採用して欲しい。

(5)e:HEV・PLaYは価格が割高

 最も価格が高いグレードはe:HEV・PLaY(329万8900円)で、e:HEV・Z(289万8500円)を約40万円上まわる。ところがe:HEV・PLaYは、e:HEV・Zが標準装着しているLEDアクティブコーナリングライト、エアコンの左右独立温度調節機能、トノカバーなどが装着されない。

 つまり価格を見ると、e:HEV・PLaYが最上級グレードだが、装備については必ずしも最上級ではない。欠けている装備を見落とさないように注意したい。そしてe:HEV・PLaYが装着しない装備の価格換算額は、合計約11万円だから、装備の違いまで含めたe:HEV・Zとの実質的な価格差は51万円に拡大する。  

 以上のようにヴェゼルには欠点もあるが、コンパクトSUVとして、内外装の造り、後席の居住性、シートアレンジ、加速感などは上質だ。選ぶ価値の高い車種だから、納期を短く抑えて欲しい。

ヴェゼルの価格表

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