FRが減っている最大の理由は「高効率化」にあり、小型車は1970年代後半から1980年代にかけて続々とFF化された。
そして今、注目はクラウンだ。当たり前のように踏襲してきたFRを捨て、新型はFFとなる。FRにこだわっているのはごく少数と言われるが、発売される前から新型クラウンの行く末が気になる。
そのヒントを探るため、本企画では、これまでFRからFFに変更されたクルマとその後について見ていく。
※本稿は2022年3月のものです
文/永田恵一、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年4月26日号
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■トヨタ スターレット 最後のFR:2代目(1978〜84年)→最初のFF:3代目(1984〜89年)【大成功】
スターレットは3代目でFF化された。2代目までのスターレットには「エントリーカーながらFR」という魅力もあったが、3代目モデル以降もターボ車の設定などにより充分なスポーツ性を持ち、モータースポーツにも使えるモデルだったので、FF化は正しかったと言える。
■トヨタ カローラレビン/スプリンタートレノ 最後のFR:4代目(1983〜87年)→最初のFF:5代目(1987〜91年)【成功】
過渡期のモデルだったことなどによりコンパクトクラスながらFRだったレビン&トレノはAE92でFF化された。レビン&トレノのFF化はベースのカローラがひと足先にFF化されたのに加え、AE92も充分スポーティなクルマだったので成功だったが、イメージ的には反感も強かった。
■トヨタ セリカ 最後のFR:3代目(1981〜85年)→最初のFF:4代目(1985〜89年)【成功】
4代目モデルでFF化されたセリカは、今で言うプラットホームやエンジンが当時新しかったS型に変わったことによる性能向上や4WDへの発展を考えると、FF化は成功だった。
ただ、現在セリカに近いポジションにある86がFRで成功しているのを見ると、少しだけ微妙だった感もある。
■トヨタ タウンエースノア→トヨタ ノア 最後のFR:初代(1996〜2001年)→最初のFF:初代(2001〜2007年)【大成功】
ノア&ヴォクシーは車名からタウンエース、ライトエースが消えた時にFF化された。FR構造のミニバンは商用ユースも含めるとトラクションというメリットはあるが、それ以外ではフロアが高くなる点など居住性などでのデメリットも多く、2代目のノアでFF化したことは大成功だったと言える。
■日産 ブルーバード 最後のFR:6代目(1979〜83年)→最初のFF:7代目(1983〜90年)【成功】
ブルーバードは7代目でFF化された。7代目ブルーバードは最後のFRとなった6代目がブルーバードらしいスポーツ性もあり大成功したのに対し、全体的に印象の薄いモデルだった。
だが、これは駆動方式よりクルマ自体の問題で、8代目の成功などを考えると、真っ当な移行だった。
■日産 セフィーロ 最後のFR:初代(1988〜94年)→最初のFF:2代目(1994〜2000年)【成功】
初代セフィーロはR32スカイラインやC33ローレルの兄弟車だったこともありFRだった。しかし、2代目と3代目は日本ではマキシマの後継車となったこともありFF化された。セフィーロは3代目で絶版となったが、ローレルと統合しティアナとして続いたのを考えると、FF化は正しかった。
■日産 セレナ 最後のFR:初代(1991〜99年)→最初のFF:2代目(1999〜2005年)【大成功】
初代セレナは商用バンがあったこともあり、キャブオーバー型のFR車だった。このレイアウトはノアで書いたデメリットに加え前席下にエンジンが配置されるため、前席からのウォークスルーができないなどの点が乗用ミニバンには大きな弱点だったこともあり、FF化は正しかった。
■日産 エルグランド 最後のFR:2代目(2002〜10年)→最初のFF:3代目(2010年〜)【微妙】
高級ミニバンであるエルグランドは2代目モデルまでFR車だった。エルグランドは高級ミニバンということもあり、FFにはない高級なフィーリングなど、FRのメリットもけっして小さくなかったが、ノアとセレナ同様のミニバンをFRにするデメリットのほうが大きく、日産の社内事情もあるにせよFF化は正しい選択だった。
■マツダ ファミリア 最後のFR:4代目(1977〜80年)→最初のFF:5代目(1980〜85年)【大成功】
ファミリアは今になると特に印象がない4代目モデルまでFRレイアウトだった。FFに移行した5代目モデルは全体的に和製VWゴルフという仕上がりだった。
加えてFF化による車内の広さを得て、赤い3ドアハッチバックの陸サーファーのイメージやラウンジシートなどの相乗効果で、魅力あるクルマだったため大成功した。
■三菱 ランサー 最後のFR:2代目(1979〜87年)→最初のFF:3代目(1988〜91年)【成功】
ランサーは2代目モデルまでFR車だった。2代目ランサーは当時でも新しさはなかったが、ターボ車の設定もあり「AE86の兄貴分的魅力」も持っていた。競技でも活躍したことも大きい。
3代目モデルでFF化されたランサーは4代目まで存在感が薄かったが、5代目以降のランエボへの発展を考えると、FF化は必然だった。
■三菱 ギャラン 最後のFR:4代目(1980〜85年)→最初のFF:5代目(1984〜89年)【成功】
ギャランは車名にΣが付いた5代目モデル(Σとしては3代目)でFF化された。ギャランΣはFF化により広いキャビンを得たが、それ以外はパッとしなかったというのが率直なところだ。
しかし、6代目モデルがFFベースのスポーツ4WDのVR─4やクルマの魅力で大成功したのを含めると、ギャランのFF化も必然だったと言えるだろう。
■ボルボ 240→ボルボ 850 最後のFR:(1974〜93年)→最初のFF:(1991〜97年)【大成功】
ボルボ240は1974年登場のためもあり、FRだった。ボルボは高福祉なスウェーデンの社会環境などにより、モデルサイクルが長く、240も19年生産された。その間にボルボもFF化に舵を切ったのに加え、850は1990年代のクルマなのもあり、駆動方式以前に850の進歩や成功は当然だった。
■アルファ 75→アルファ 155 最後のFR:(1985〜92年)→最初のFF:(1992〜97年)【大成功】
アルファ75はFRというだけでなく、ミッションがデフと一体のトランスアクスルだった点など、今考えるとBMW以上にプレミアムなところもあった。しかし、この頃アルファロメオは経営破綻寸前だったこともあり、後継車の155がフィアットベースのFFとなったのはやむを得なかった。
■BMW X1 最後のFR:初代(2009〜15年)→最初のFF:2代目(2015年〜)【成功】
初代X1は初代1シリーズベースとなるFRのSUVだったが、2代目はプラットホームがBMW2シリーズツアラーやミニと共通になったためFFに移行した。X1に関してはFFながらFRに近いBMWらしいフィーリングを持つことと、間口の広いSUVなのもありFF化は成功と言える。
■BMW 1シリーズ 最後のFR:2代目(2011〜19年)→最初のFF:3代目(2019年〜)【微妙】
1シリーズは2代目までのFRから3代目で、X1同様の事情でFF車となった。1シリーズがFFになったのは、キャビンが広くなった点など総合的にはメリットが多い。しかし、乗用系のBMWだけにイメージや2代目の中古車価格が意外に下がらないのを見ると、FF化は微妙。
■キャデラック セビル 最後のFR:初代(1975〜80年)→最初のFF:3代目(1986〜91年)【微妙】
セビルは「欧州車的な部分も持つキャデラック」というキャラで、1980年登場の2代目でFF化。当時のアメリカは「乗用車はFFじゃないと新型車と思われない」という風潮があったようで、セビルのFF化も正解。ただ、セビルの後継車STS以降はFRだ。
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車格やジャンルもあるにせよ、「結果はおおむねクルマの出来次第」が結論だ。これを頭に置くと、従来と逆の姿になる次期クラウンとマツダ6を含めたラージ商品群がユーザーに支持されるか興味深い。
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