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 国土交通省が推進する「トラガール」=女性トラックドライバーの活用ですが、トラック業界の女性比率は全産業平均を大きく下回っているのが現状です。

 前編に引き続き、本誌トラックマガジン「フルロード」の「素顔の自叙伝」にご登場いただいた3人の女性ドライバーに集まっていただき、女性ドライバーの現状について話してもらいました。

 オフ会兼座談会は延々9時間に及ぶ超ロングランでした。前編では「離婚」「子育て」「女性差別」などの話がありましたが、まだまだ男社会のトラック運送業界の中で、さまざまな悩みを抱え、懸命に働いてきた彼女たちの言葉には、ずっしりとした重みがあります。

 3人の話がすべての女性ドライバーを代弁するものではないけれど、どうか示唆に富む彼女たちの「本音」に耳を傾けてください。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
*2014年9月発売トラックマガジン「フルロード」第14号より


休める休めないは仕事次第

本誌: 先ほど休みの話が出ましたが、土日は休めますか?

みゆ: 私は鋼材の定期便トレーラだからちょっと特殊で、工場カレンダーなんです。工場の専属になっているので、工場のお盆休みが10日っていったら10日きっちり休む。土日祝日は仕事はありません。時間は決まっているけど、多少の無理はきくかな。

 「朝のゴミ置場の掃除当番だから30分遅れてもいい?」って言うと、「あとでうまく調整するからいいよ」とか、どっちかっていうと外部の運転手よりは、工場の一員みたいな感じかな。融通がきくので、その意味では恵まれているほうかもしれない。

 ただ、最初に働いた運送会社は食品などを扱っていたから、土日も何も関係なく、会社は365日24時間動いているわけ。何かイベントがあって、子供を連れて行きたいなと思っても、よっぽど強く希望しないと休みが取れない。

 言ってもいやな顔をされるから、会社から「この日は休みね」って言われるまで待っている。着時間もけっこうめちゃくちゃで、「夜中の2時に横浜」とか言われると、昼間は待機なんだけど、夜から出ていかないといけないとかね。2年くらい頑張ったけど、そういう会社もあるよね。

尾山: うちは基本的に休みは日曜日だけ。祝日は仕事があれば仕事なんだけど、仕事がない時は週の半分くらい休んでいたこともありました。ダンプの運転手は日給がほとんどなんです。だから一日働いてナンボ、出ないとお金にならない。

 ただ、うちは皆勤手当てと無事故手当てというのがあって、2つで3万円だから、これがすごくデカいんだよね。

ゆで: 海コンは日曜日は休みだけど、土曜日はヤードで仕事して、昼からの配達もあるやん。でも帰りたい。すごく忙しかったらしょうがないけど、基本は帰る。お金も大事やけど休みも大事。

みゆ: ほどほどがむずかしいよね。お金をいっぱい稼ごうと思ったら休みがなくなっちゃうし、休みがいっぱい欲しいと思ったらお金減っちゃうし、どっちを取るかになっちゃう。

 うちは恵まれているほうだと言ったけれど、問題は私の代わりがいないことなのね。大型けん引の免許を持っていて、クレーンとか玉掛けの資格を持っている人がいないから、工場カレンダー以外で突発的に「休みたい」と言ったって、代わりを見つけてこないといけない。

 そんなことなかなかできないから、ここ2年3年はずっと有給休暇を残したままになっている。

ゆで: そりゃもう一人欲しいな。交代でな。私らかてケガするやん、病気もするやん。何かあったときのために、やっぱり誰かバックアップしてくれる人間がいて欲しいな。

みゆ: 深夜の食品をやっている人で、一応やってやれないことはないという人はいるけど、段取りとかも全然わからないから……。だから、親戚のお葬式とか身体の具合が悪いとか、よっぽどのことがないとね。最後に頼んだのが2年前かな。ちょっとした用事だと休みづらい。

 (再婚した)うちの旦那もトラックに乗っているんだけど、私より休みが取りやすいので、長女の入学式だとか卒業式だとか「あんたも親なんだから」って言って行かせちゃった。直接血の繋がりは無いんだけど(笑)。

トラック運転手は魅力的な仕事か?

みゆ: ただ、会社として次の人を育てようとしても、若い人が入ってこないでしょう。若手が育たないから、もうすぐ40歳の私が未だに若手なのよ。

尾山: ダンプの世界はもっと年寄りばかりだよ。クルマを運転しているときは「どこの若いモンだ?」というような威勢のいい走りをしているけれど、クルマを下りてコンビニなんかに行く後ろ姿は、どっから見てもお爺ちゃん(笑)。確かに高齢化しているよね。

本誌: 実際に若い人のなり手が減って、トラックドライバー不足が深刻化している……。

みゆ: 結局魅力がないんだと思う。私がなろうと思ったときは、「女でも頑張れば月50万円稼げるよ」って言われたの。実際にはせいぜい40万円ちょっとだったけど、月50万円稼げるっていうのは魅力でしょう。

 今はその半分くらいになっちゃったから「稼げるよ」って言えないし、だったら残業なしで帰れる普通の仕事のほうがよっぽどいい。きちんとした休みもあるし、「3K」じゃないしね。ドライバーの仕事のいいところは、運転中にラジオを聴いて「フフフ」って独り笑いできることくらいかな(笑)。

 むかしオフィスでみんな並んで仕事をしていたこともあるけど、トラックは自分一人の空間があるのはいいよね。だから運転しながら今日の夕飯は何にするかを考えたり、ラジオを聴いたりとか、普通の仕事ではできないこともあるにはある……。

ゆで: 私もそれはあるわ。お腹空いたら、気兼ねなく何か食べれるというのがあるやん(笑)。

トラックをめぐる男と女の話

本誌: ちょっと話題を変えて、トラックメーカーに要望したいことってありますか? メーカーの考える女性仕様のクルマって、ボディカラーがピンクっていうのが通り相場だけど……。

みゆ: 女性向けだからピンクっていうのは安直だよね。それより男と女では身体の大きさが違うでしょう、そういうところを何とかしてほしい。操作性なんかも女性だからというのは別に無いと思う、マニュアルミッションでも全然構わないし……。

ゆで: 肘掛けなんかも中途半端で、却って邪魔やん。肘を掛けて運転しようと思ったら、身体が斜めに傾いちゃう。シートとかハンドルのアジャストとかも男性仕様やんか。ピンク色の女性仕様より、男と女の体格差のことをちゃんと考えてほしいな。

本誌: 男と女の運転技量の違いについてはどうでしょう? 昔は、「一姫二虎三ダンプ」なんて失礼なことを言われて、女性ドライバーの運転は酔っ払い運転より危ないなんてことが面白おかしく流布されていました。

 中には未だに「女性は運転が下手」という固定観念を抱いている人間もいるようですが……。

みゆ: 基本的に女だから運転が下手っていうことはないと思う。

尾山: ないよね。男でも女でも運転が上手いのもいれば下手なのもいる、人によるよ。

ゆで: 最初はな、私もトレーラのバックが苦手で、下手やったん。今でも上手いとは言えへんけど、そりゃ隠れて練習もした。だけど、男かて下手なのが大勢いるやん。プライドがあって、苦手って言わへんだけやって。

 私らは女やから「男に負けたらあかん」って思って、どんな仕事きたって絶対にことわらへんやん。でも、おっさんことわっとるやん、「俺は広いところしか行かへん」って……。結局、運転が下手な人は下手なんや(笑)。

みゆ: 海コンしかやったことがないのに、「俺、トレーラに乗ってるんだよ」って自慢する人、いない? シートも掛けたこともなければ、手積み手降ろししたこともない……

ゆで: おるおる。自分が2トンから4トンというふうに上がって行ったやんか。ふつう運転手ってそうやと思ってん。で、会社に入ってきた人がな、トレーラのローリしか乗ったことがなくてな、だからロープの掛け方も知らんし、「レバーブロックって何?」って言うねん。

みゆ: 以前の会社で、私のほうがちょっと年下なんだけど、新人で入ってきた男がいました。たまたま私が新車に乗っていたんだけど、その新人は「女が新車に乗っているなら、俺はスカニアでも貰おうかな」なんて言ったんだよ。

 指導役の年輩の人がそれを聞いて怒っちゃって、「生意気言うな!」って説教したら、次の日から来なくなっちゃった。

 要するに人間によるんだな。女性ドライバーに対しても、仕事ができない人に限って「女のくせに」とかって言うでしょう。仕事ができる人はそんなこと言わないというか、仲間としてちゃんと認めてくれるもん。

ゆで: それはあるな。

尾山: 自分のちっちゃさを際立たせちゃうんだよね、その一言で。

ゆで: 今の会社は、30人くらい運転手がいて、女は私一人やんか。でも、「女のくせに」って責められるってことは今までなかったな。失敗しても「今度から気をつけたらいいやん」って言ってくれる。性別関係なしに、みんな仲間やん。今の会社の人、一人を除いてみんな好き。

尾山: ま、一人くらいはどこいったっているよね、イヤな奴は……(笑)。

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