今年4月のニューヨークモーターショーでステランティス社よりお披露目されたのが、同車のSUVブランドであるジープの「グランドワゴニアL」だ。先に登場しているグランドワゴニアをさらにストレッチしたボディは5.7mを超えるし、電動化もされていない。下手をすれば時代に逆行? とも言える超巨大なSUVが登場するアメリカンSUVの文化と魅力に今回は迫っていきたい。
文/九島辰也、写真/ステランティス
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■ジープがグランドワゴニアLを追加してきたワケ
4月中旬に行われたニューヨークモーターショー2022で新たなジープの仲間が正式に発表された。グランドワゴニアLである。「正式に」と記したのは、すでに昨年3月にデジタルワールドプレミアさせているからだ。要するにカタチはお披露目ずみ。その意味では、この超フルサイズSUVのデザインに惚れ、販売を待っていた方には、お待ちどうさま! となる。
グランドワゴニアLの追加はグランドチェロキーに次ぐラインナップの拡大である。あまり興味がないと「どこが違うの?」となるが、サイズ以上にも大きく異なるところがある。それはアイデンティティ。ジープヒストリーでそれぞれが礎となったモデルだ。
そもそもグランドワゴニアの誕生は1960年代初頭にさかのぼる。1962年にピックアップトラックのグラディエーターをベースに63年型とリリースしたのが始まりだ。コードネームはSJ型だった。
■グランドワゴニアはかつてジープブランドの最高級SUVとして君臨
当初はワゴニアと呼ばれた。1983年にリリースされたXJ型チェロキーの最上級モデルをワゴニアと称したことで、それまでのワゴニアに「グランド」の名がついたのだ。つまり、「グランド」はそのままサイズの大きさを表している。チェロキーというネーミングもそう。1974年にワゴニアの廉価版をチェロキーとして登場されていたが、XJ型チェロキーが出るとこちらをビッグチェロキーと呼んだ。
グランドチェロキーも同様で、1993年にリリースされたZJ型はXJ型チェロキーのネガティブポイントである室内の狭さをこのクルマで解決するという意図でグランドがつけられた。アメリカ人にとって「グランド」は食いつきやすいワードなのかもしれない。
それじゃ当時のグランドワゴニアのコンセプトはというと、高級SUVである。その頃はSUVという言葉はまだなく、ジープのステーションワゴンというカテゴリーだったが、高級さがウリだった。それを表現しているのがウッドパネル。実際の樹皮ではなく、プリントしたウッド柄だが、それは上級グレードを意味していた。背の低いステーションワゴンも同様だ。このウッド柄デカールやボディカラーをツートンに塗り分けるのが1960年代高級車の証だったのである。
という背景を鑑みると、このクルマの立ち位置がおわかりいただけると思う。ここ数年フラッグシップの座をグランドチェロキーに明け渡していたが、1991年の生産終了以降およそ30年ぶりにジープの頂点に返り咲いたのである。
■約30年ぶりに復活したグランドワゴニアに追加された「L」はとにかくデカい
なので、今回発表されたグランドワゴニアLはとにかくデカい。標準ボディの新型グランドワゴニアと比較して全長は305mmプラスの5759mm、ホイールベースは178mmプラスの3303mmとなる。
これは同じカテゴリーのライバルでいうところの、シボレーサバーバン、キャデラックエスカレードESVに値する。フォードエクスペディションマックスはこれよりも10インチ以上短くなるので、別と言えよう。ジープがフォードよりも大きなSUVを作るとは、30年近くその動向を見てきたが、驚きである。
そもそもジープはこれまで大きなモデルを作るのを否定してきた。ハマーH2が流行った時、それを追従するモデルを計画していないのか、開発陣にインタービューしたところ、「あるサイズを超えるとジープとしての走破性がなくなる」と口にした。
長いオーバーハングは前後のアングルを浅くし、長いホイールベースがランプブレイクオーバーアングルを小さくしてしまうからだ。確かに、当時H2に寄せたコンセプトカーを発表はしたが、商品化には至らなかった。きっと保守的なジープブランドの社風がそれを許さなかったのだろう。確かその時はダイムラークライスラー社だったと記憶する。
■ステランティスグループは「ジープ」ブランドを積極的に展開する方針だ
ところがそこから20年ほど経って様子は変わり、こうしてグランドワゴニアLなんてとてつもないサイズのジープが発表された。その背景には今日のSUVが主軸となるマーケットの動向が関係しているのは確か。そしてそこに対し、積極的な姿勢で臨むステランティスという新会社のフィロソフィがつながる。
というか、ジープはアメリカブランドだが、主導権を握るのはもはやイタリア人とフランス人。「そもそもジープとは……」なんて話は必要ない。SUVブランドなのにラインナップを増やさないのが不思議なくらいに思えたはずだ。
そんなボディサイズのキャビンは当然このうえもなく広い。乗車定員は7〜8名。ホイールベースと全長の延長により、キャビンはもちろん、荷室の容量も拡大し、クラス最大級を誇る。3列目をしっかり使ってもカーゴスペースは余裕ってことだ。3列シートの2列目はキャプテンシートが標準で、ベンチシートはオプションとなるらしい。
新型グランドワゴニアLの話題はパワーソースにもある。ステランティスが新開発した3L直列6気筒ガソリンツインターボエンジンの「ハリケーン」がそれだ。最大出力はなんと510hp、最大トルク69.1kgmを発揮する。数値はスーパーカー並み。それでいて大排気量エンジンよりも最大15%燃費を改善しながら、V8ガソリンエンジンに匹敵する性能を実現する。
ドイツ勢が推奨する直6ガソリンエンジンにインテリジェンスさえ感じるほどだ。「え、アメ車なのにV8じゃないのかって?」。ワゴニアはデビューからデフォルトは直6で、V8はオプション。つまり, この選択は「先祖返り」、違った「原点回帰」とも言える
■ジープの伝統を新時代にも発展的に継承する姿勢がグランドワゴニアLにも活かされている
ところで、ハリケーンというエンジンの名前だが、1950年代にも使われていたのをご存じだろうか。1953年に登場したCJ-3Bに積まれたパワーユニットがソレ。そちらは4気筒だったが、ヘッドを新設計してそれまでよりも出力を上げている。
想像するに、その点からも今回高出力エンジンを表現することにこの名前を使ったのであろう。そういえば、三菱自動車がジープとライセンス契約して三菱ジープを国産車として生み出したのがこの時期。なので、三菱ジープでもハリケーンエンジンの名は使われていた。
話がだいぶカビ臭い方向に行ってしまったが、かつてジープ博士としてラジオに出演したり、ディーラー向け教育資材をゼロから作っていたりしていたのでご勘弁を。古い話はどうしても熱が入ってしまう。その立場からして、そうした伝統を重んじながら登場したグランドワゴニアLは好印象。
現代の高級SUVとして生まれ変わったのはジープファンとして嬉しいかぎり。やはりこの名前は別物。20余年前、ワゴニアブームを作った立場からも新型登場はウェルカムである。
ところがそこから20年ほど経って様子は変わり、こうしてグランドワゴニアLなんてとてつもないサイズのジープが発表された。その背景には今日のSUVが主軸となるマーケットの動向が関係しているのは確か。そしてそこに対し、積極的な姿勢で臨むステランティスという新会社のフィロソフィがつながる。
というか、ジープはアメリカブランドだが、主導権を握るのはもはやイタリア人とフランス人。「そもそもジープとは……」なんて話は必要ない。SUVブランドなのにラインナップを増やさないのが不思議なくらいに思えたはずだ。
そんなボディサイズのキャビンは当然このうえもなく広い。乗車定員は7〜8名。ホイールベースと全長の延長により、キャビンはもちろん、荷室の容量も拡大し、クラス最大級を誇る。3列目をしっかり使ってもカーゴスペースは余裕ってことだ。3列シートの2列目はキャプテンシートが標準で、ベンチシートはオプションとなるらしい。
新型グランドワゴニアLの話題はパワーソースにもある。ステランティスが新開発した3L直列6気筒ガソリンツインターボエンジンの「ハリケーン」がそれだ。最大出力はなんと510hp、最大トルク69.1kgmを発揮する。数値はスーパーカー並み。それでいて大排気量エンジンよりも最大15%燃費を改善しながら、V8ガソリンエンジンに匹敵する性能を実現する。
ドイツ勢が推奨する直6ガソリンエンジンにインテリジェンスさえ感じるほどだ。「え、アメ車なのにV8じゃないのかって?」。ワゴニアはデビューからデフォルトは直6で、V8はオプション。つまり、この選択は「先祖返り」、違った「原点回帰」とも言える
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投稿 デカくて速くて強いヤツ! 510psのハイパワーSUV爆誕!! 新開発ハリケーンエンジン搭載のJEEPグランドワゴニアLの魅力 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。