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2022年になり、「VTuber」「バーチャルYouTuber」と、あらゆるクリエイター・アーティスト・エンターテイナーとの境界線が、良い意味で曖昧になりつつあります。だからこそ、表現の幅を増やすため、自由に気楽に発信するためにVTuberアバターを活用する道を選んだ人々の作品は、興味深いものだらけ。今までの活動が魅力的で、かつ今後にも大きく期待が持てるVTuberを独断と偏見で選び、紹介していきます。

エンタテインメント動画VTuber

かえる人間

瞬発力抜群のネタは子どもにも大人にも勧めたい、誰でも楽しめるかえる人間の動画。一本一本が短く、人間の本能的笑いをくするぐネタの連発。まずは「なにかするやつ」と、一連のショート動画がオススメです。ネタのこだわりもさることながら、大体の動画がVR技術を使わないとできないものばかり。今熱いバーチャルピン芸人のひとりです。

衛星ライト

VRならではのギミックを活かしエンターテイメントを演出する衛星ライトぽんぽこ24の「ぽこピーフレンドパーク」では、凝ったギミックを使ってゲーム舞台を制作し、話題にもなっていました。

かつてからVTuberの1ジャンルとして人気だった物理演算ネタを熟知した上でVR空間を作り、それをちゃんと笑いのネタに昇華できるエンタメ性と企画力は見ごたえがあります。ジャグリングなどをVR内空間でこなす三珠さくまる、VRならではのものまねなどを見せるレオン・ゼロミヤと組んだ「トライアンブリ」の3人組は、技術力をうまく活用しているエンタメユニットとして注目されています。

ゾンヨンジュ

ゾンヨンジュはホムンクルスの奇屋敷ゾンゾン、キョンシーのような不死奇ヨンシィ、ゾンビの死骸美 呪々による三人組ユニット。ビジュアルのバランスのよさ、華やかでホラーなかわいらしさもさることながら、3Dモデラー、Live2Dモデラー、イラストレーター、ボーカリストと3人ともクリエイターのため、活動をセルフで作り上げることができる強力なグループです。

公式Twitterでは毎日なんらかの3人のコンテンツがアップされているという充実感も魅力的。またVTuberなどで使えるLive2Dモデリングも正式に受注制作を受け付けています。クリエイターとしてハイセンスなクオリティの作品を作り、エンターテイナーとしてわちゃわちゃ楽しく盛り上げてくれる注目の3人組です。

西園電脳空間倶楽部CNES

埼玉をはじめとした実写世界を旅し、その空間にスッと混ざり込んだVlog的作品群が楽しい、うさみみと独特なしゃべりがかわいい西園。ぽんぽこ24のホラー動画に参加したり、埼玉バーチャル観光大使に立候補したりと、積極的な活動を続けています。Vlogはかなりこだわりを持った映像づくりになっており、レトロな画質、そこにいるかのような実在感、歩いている地域の臨場感、全体の構図と色味などこだわりが多く見られます。今後も注目してほしい映像クリエイターの1人です。

物語動画VTuber

風街ピリカ

異世界の物語をつづるストーリー楽曲がチャンネルを彩っている風街ピリカ。その世界の情景と出来事を歌う様子はまさに吟遊詩人。かなり多様な地域にでかけており、旅の様子と物語を綴(つづ)った曲を楽しめるのですが、実はそれらは一連のストーリーになっており、しかも、かなりバーチャルな仕掛けがなされています。

ものすごく丁寧に織り込まれた伏線は一周年記念配信で一気につながり、真の意味を知ることができます。ファンタジー世界のクリエイターとして、劇場型VTuberとして、ぜひ観てほしいひとりです。

RinRinne -りんりんね-

りんりんねの動画は、TVアニメと言われても全く違和感がないクオリティのアニメーション動画をアップしています。基本的にはゲーム実況VTuberなのですが、そのゲームと、りん・りんねのふたりのいる世界がシームレスにつながっている描写が非常に秀逸。かなりバーチャルな構造の映像づくりになっています。

いかんせん、細かい部分までかなりこだわりを持って作っているようなので、1回の撮影の労力のかかり方が半端じゃなさそうな。じっくりと活動を続けてほしいクリエイターです。

(実在しない)VTuber切り抜きチャンネル

正確にはVTuberではなく「VTuberの配信を切り抜きしたかのように演出した動画」シリーズをアップしているのが(実在しない)VTuber切り抜きチャンネル。「切り抜き動画」というYouTube独特の文化を利用したことで描かれた物語は、映画やドラマなど他の媒体ではできない新しい表現になっています。

切り抜いているが故に多くを述べすぎないことで、ユニークさと哀愁感の間をすり抜けるエモーショナルを表現。ポジティブな話題が多い上に、登場する実在しないVTuberたちのキャラ立ちがはっきりしていて魅力的。VTuber文化の二次創作的作品として、新境地を開きました。

知識・学問系VTuber

さいば萌

人間なら必ずなにかしらでお世話になる場所である焼き場・火葬場をテーマにしているVTuberのさいば萌。自身で撮影にいった動画の数々はすでにかなりの数になっており、YouTubeで観られる火葬場映像量としては最高クラスです。

現在使われている火葬場のみならず、いわゆる「野焼き場」のような昔の施設や、廃墟になった場所なども大量に紹介。資料性が非常に高いチャンネルです。

矢木めーこ

演劇や映画などへの愛情が尋常じゃなく伝わってくるVTuber矢木めーこ。VTuberとしては珍しい、舞台作品の紹介・感想・解説を、図なども駆使してわかりやすく観せてくれます。作品の魅力的なポイントの語りがうまいので、聴いていて心地よいです。また「歌ってみた」動画の中でミュージカル曲を多く歌っているのも特徴。演劇芸術が好きな人なら楽しいこと間違いなしなVTuberです。

雨声シト

メンタルとおくすりについて、薬剤師免許を持っており、かつ双極性障害で通院経験があるという現場の知識から論理的に解説してくれるのが雨声シト。様々なメンタルの症状についてはもちろん、精神疾患で用いられる薬の意味などをかなり丁寧に紹介してくれます。決して遠い世界の話じゃない、誰でもかかる可能性のある病気の話なので、知識として観て損はないです。

高遠頼

2021年の夏、多数の専門性を持った学術系VTuberが集合して実施された夏休み科学Vtuber相談室。その中心人物のひとりが高遠頼です。論文や文献をしっかり参照した科学の動画をアップしており、短くわかりやすいのも動画の特徴。現在は学術系VTuber「まなぶい」による経済産業省STEAMライブラリー「学術系VTuberと考える“未来のバーチャル社会”」の制作にも参加しています。VTuberとして学問をわかりやすく、正しく、楽しく切り込んでいこうとする姿勢で発信しているトップランナーのひとりとして注目したいVTuberです。

犯罪学教室のかなえ先生

犯罪学教室のかなえ先生は時事ネタも取り上げながら、犯罪心理学の観点で世の中にメスを入れるVTuber。少年院で勤務していた経験があり多様な犯罪を目の当たりにしてきた彼は、経験を元に語ることもあるので発言に説得力があります。

また一元的に「悪」と決めつけることはない丁寧な公正さも、聴いていて勉強になる魅力のひとつ。配信の際に細かく図説している回も多く、かなりわかりやすいです。また「懲役先生」という犯罪情報バラエティーチャンネルも運営しており、数多くの犯罪とリアルに向き合ってきた親方太郎とのトークでかなり生々しい部分まで犯罪について取り上げ分析しています。ニュースの裏側を知る対談として、観ておきたい注目のチャンネルです。

企画系VTuber

瑠璃野ねも

すさまじいスピードとリズム感のトークで、想像のはるか上を行く企画を作ってしまう瑠璃野ねも。講談師のような流暢な語りを駆使して、一瞬で自身の世界にリスナーを引き込むパワーがあります。

「架空のゲームをエア実況しよう」「織田信長を彼氏だと思い込んで匂わせをしよう」「野菜にバトルロワイヤルをさせよう」「猫を飼っていないけど飼っているテイで配信しよう」など、空想力と語り口で1時間エンタメにしてしまえるのは才能です。イースターエッグ探し配信のような準備に手間のかかるものもユニークに提供しており、ゲーム実況でもしゃべっていない時間がほぼないと言っても過言ではない、中毒性が高く一度見るとやめられなくなるVTuberです。

九頭龍るる

九頭龍るるの「るるちゃんのオカルト研究部」はTRPGやマーダーミステリーを多く行うチャンネル。中でも特筆したいのが定期的に行われている「死生観ラジオ」シリーズ。招いたゲストにリアルな「死」と「生」を問いかける、かなり尖った、けれどもその人の生き方の根幹を聞くことができる内容です。

各々の思想や人間性や世界観がもろに出るため、招待されたVTuberたちも話が進むにつれどんどん真剣になっていきます。理解のある相手じゃないと呼べないハードルの高さ、それに応えるVTuberたちのトーク力、全体から見える多様な哲学。九頭龍るるの聞く力とゲストの真剣さが伝わってくる、インパクトのある企画シリーズです。

音楽系VTuber・VSinger

JOHNNY HENRY

VRChatでの生演奏Liveを行っている4人組JOHNNY HENRYは、ボーカリストが割れ顎アメリカン男子で、メンバーに一人ザリガニがいるという、唯一無二なビジュアルのバンド。ブルースロックを主軸にオリジナル曲を披露している、VSingerとしては珍しいスタイルです。

バーチャルな空間で歌う、泥臭くて甘いと酸っぱいが入り交じる人生観は非常にエモーショナルで聴き応え抜群です。ボーカルのYAMADAは昨年「AWAKE24」という24時間ライブイベントを開催しており、多くのバーチャルミュージシャンが集結し生演奏したことでも話題になりました。

PHAZE

VRChat内で発足した、ドイツと日本の国際VRバンドPHAZE。パンチの効いたボーカルの悪魔っ狐のAki、キーボードとサックスのShell、ベース・ギター・コンポーザーのDizの3ピースユニットで、大人びたムードの曲を中心としたロックやジャズを得意としています。

バンドのウリのひとつが頻繁に行われているセッション配信。全体的にトークをゆったり楽しめる雰囲気で、ピアノ・ベース・ボーカルによる演奏はしっとりと聴かせてくれるので、お酒を飲みながら聴くのに最適です。オリジナル曲も次々発表されており、ライブや新曲なども含め今後の活躍が非常に楽しみです。

YSS

YSSは曲・ボーカルの櫻野ソルテと、曲・映像・演奏・MIXなど全般を手掛けるyopiによるユニット。VRChatなどのメタバースでのライブ活動を中心に、多数オリジナル曲MVを発表しています。

R&B;や洋ロックの文法にのっとりつつ、かなり強めのベース音で引き締めるタイプのサウンドは独特。柔らかい櫻野ソルテのボーカルが尖った音をさらにうまく調和させ、完成させています。色使いの巧みなMVの構成もみどころ多数。優しいのにソリッドな音の世界を見せてくれる二人組みです。

夢羽九・ソルナシエンテ

ものすごいスピードで広がり続けているVラップシーン。その中でも聴いてすぐに印象に残る歌声とリリックが特徴の夢羽九は注目Vラッパーのひとりです。高めの声なので優しくキュートな空気感も感じるのですが、実際に紡ぎ出してくる言葉はかなり尖っており、迂闊に触れると火傷します。

鵬雛とのユニット「ソルナシエンテ」では、ハスキーな低音がセクシーな男性ラップと入り交じることでコントラストが抜群によくなり、ふたりのラップを相互が引き立てあう、聴き応えのあるものになっています。

椎名かいね

ボーカル、イラスト、動画制作と多才な才能を発揮している椎名かいね。ムーディーな曲を哀愁こめつつ歌うスタイルが印象的です。VTuberとしては珍しいタイプの、大人びた恋愛をテーマとしたオリジナル曲を次々アップしているので、特に成人男女には、かなり深く心に刺さるタイプVSingerです。多様なシンガーとデュエットボーカルコラボをしているのもあり、自身がテーマとして持っている部分を芯に表現の幅があるのも魅力です。

メタモエ

メタモエレコーズメタモエチューブから分離したメタモエの音楽専門チャンネル。活動自体は2018年から行っている、かなり活動歴が長いVTuberで、2021年7月から本格的に音楽活動をこのチャンネルで行っています。メタモエ本人のビジュアル自体は幼くかわいらしい少女ですが、ボーカルになると、ハードにかっこいい曲、跳ねるようなキュートな曲、落ち着いたムーディな曲と幅広く歌声を使いこなしています。なかでもsora制作のアニメーションMVはメタモエの豊かな歌声とぴったりマッチしており、独特な世界観を完成させています。

惑星ちる

サーカスや絵本のような世界観は、一度ハマると抜け出せない魔力でいっぱい! 惑星ちるはオリジナル曲もカバー曲もかなりこだわりが深く、かつ自身のキャラクター性を活かしたオンリーワンのスタイルで活動しているVTuber・VSinger。ジンタ風の楽曲やミュージカルスタイルの短い楽曲、VRChatでのVlogなどをアップしています。普段のキュートなしゃべりと、世界に深く潜り込むような厚みのあるボーカルのギャップも素敵です。

朝比奈こん

遠くまで通るような爽やかな歌声が魅力の朝比奈こん。すでにたくさんの歌ってみた動画やコラボMVをアップしているVSingerです。興味深いのは朝比奈こんと対になる夜比奈が存在していること。魔法使い見習いの朝比奈こんが寂しい気持ちを切り離した結果、寝ている時に現れるもう一つの人格です。

歌の表現は双方で異なっており、それが物語性を産んでいます。このあたりについては公式サイトで詳しく紹介されており、園田優×朝比奈こんによる物語を紡ぐ音楽ユニット「blue magic garden」の楽曲で表現されています。オリジナル曲のクオリティもさることながら、物語の動きにも注目したいVアーティストです。

2022年は枠を超えた挑戦に期待

マルチタレント型VTuberの増加に伴って、専門的な分野に特化したVTuberもぐんぐん増え始めている2021年から2022年。中でも音楽ジャンルはクオリティの高いMVや3Dでのライブなどが次々アップされています。

毎週かなりの数のオリジナル曲も公開が続いており、個人VTuber同士のライブ企画や合同企画も行われ、界隈全体のアーティスト活動が活発化しているようです。

コラボレーションを行いやすい土壌ができていることも、新しい表現をより深く掘り下げる要因になっているように見えます。VTuber同士のみならず、歌い手、トラックメーカー、ボカロP、専門家、声優、YouTuberなどとの交流もどんどん広がったことで、より自由にVTuberを「表現手段」として用いている人が増えているようです。

今回は取り上げませんでしたが、TRPGやマーダーミステリーのジャンルが、VTuberと相性抜群に噛み合って、ファン層が合流しつつあります。TRPGという舞台上ではVTuberも人間も同じステージに立っている、というのも注目したい部分です。

VRChatやclusterを活用した音楽ライブや講演会も、ほぼ毎週と言っていいほど各地で行われています。VR世界での生き方が人生そのものになり、Vlogなどで発信している人も増えました。

表現手段としてのVTuberと、生き方としてのVTuber。それぞれが線引なく混じり合うことでより、クリエイター活動は今までにない形で熱気を帯びていきそうです。

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