フランスは、2022年から公共放送の受信料を廃止することが分かった。仏紙フィガロによると、11日に行われた閣僚評議会でこの方針が示されたという。公共放送の受信料廃止は、4月に再選されたマクロン大統領の選挙公約でもあった。
年間1万9000円の受信料が無料!
フランスでは、テレビを所有している人は年間138ユーロ(約1万9000円)の受信料負担義務がある。この受信料は、総額で年間30億ユーロ(約4000億円)以上となり、公共放送の「フランス・テレビジョン」「ラジオ・フランス」「アルテ(独仏共同出資のテレビ局)」などに分配される。これまで、受信料は住民税とともに徴収されていたが、フランスでは2023年から住民税が撤廃されるため、今後の公共放送受信料のあり方が議論となっていた。
受信料撤廃後の各放送局は、民営化とはならず予算は国家予算で補填されるという。マクロン大統領が選挙期間中の3月7日に公共放送受信料撤廃の公約を発表した際には、野党などから「国家予算での運営になれば、政権の意向が反映される」と、放送の公共性が担保できないなどの批判が出ていた。
この批判には、ラジオ・フランスに出演した政府広報官が、「公共放送の独立性を維持する予算は確保する」と説明していた。また、「デジタル大手が必ずしもソースが明らかでない情報を流す状況において、強力な公共放送システムが必要である」とも述べていた。ただ、具体的な財源の代替案についての説明はなく、フィガロによると、どのような仕組みで財源を確保するのかはいまだ不透明のままだという。
BBCも受信料凍結、NHKは?
受信料を撤廃あるいは凍結する動きはフランスだけではない。イギリスのBBC(英国放送協会)は、100年前の開局当時から視聴世帯から一定の金額を一律徴収する「テレビ・ライセンス料」(受信料)を聴取してきた。しかし、今年1月には年間159ポンド(約2万4900円)のライセンス料を2年間凍結する方針を発表した。
BBCによると、発表に際してイギリスのドリス文化相は「懸命に働く世帯の財布をこれ以上圧迫する」ことは政府として、「正当化できない」と述べたという。イギリスでは現行の受信料制度が2028年3月まで続くことになっているが、それ以降には受信料が完全撤廃される可能性もあると言われている。
こうなってくると、注目なのはBBCをお手本に誕生した日本のNHKだ。とりあえずのところ、BBCでは受信料を凍結したがNHKはどうか。イギリスの国民生活も苦しいかもしれないが、日本の国民生活だって同じくらい苦しいはずだ。折しも、日本ではNHKが映らずに受信料も必要としないドン・キホーテが発売した“テレビ”が売れに売れている。一気に受信料の凍結とまではいかなくても、まずは時期を限定して受信料を割り引くことくらいはできないものだろうか。
ドリス文化相は1月16日にツイッターで、「(受信料不払いを理由に)高齢者が実刑判決で脅かされ、裁判所職員がドアをノックする時代は終わったのだ」と述べた。日本でもNHKが、受信料不払いを理由とした裁判をたびたび起こしている。NHKによると、今年3月末時点で受信料不払いにより裁判に訴えたケースが4000件以上に上る中、ドリス文化相のようなことを言ってくれる政治家は日本にいるのだろうか。