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<p>仮想か現実か。本城直季による、ジオラマのような都市の姿。</p><p>〈東京都写真美術館〉で開催中の写真家・本城直季の初となる大規模個展は5月15日まで。展示には特別な撮り下ろし作品も。お見逃しなく。⇒</p><p>ジオラマのように実在の風景を撮影する写真家・本城直季の初となる大規模個展が〈東京都写真美術館〉で開催中。</p><p>《Tokyo, Japan》代表作ともいえる写真集『small planet』より、2002年。 ケニアのサバンナ 小さな人々で賑わうプール、二次元のような都心のビル、指でつまめそうなサバンナのキリン……。一見ジオラマに見えるこれらの写真は、本物の風景を撮ったもの。大判カメラのアオリを用いて都市をミニチュア化する、独特の表現で知られる写真家・本城直季の作品だ。現在〈東京都写真美術館〉で初の大規模個展が開催中。彼の目を通した都市の風景はなぜ人々を惹きつけるのか。そのヒントを本人に聞いてみた。 「さまざまな場所に抱いた違和感を原動力にこれまで撮ってきました。高層ビルが建ち並ぶ東京は異世界に思えたし、ケニアの草原も動物や自然によって作り出された、人工的なものだと気づいたのです。今回の展示タイトルに『utopia』という言葉を入れましたが、理想的な都市とは何なのだろうとよく考えます。どういう都市を人は求めていて、今の都市はうまく機能しているのだろうかと。そのような引っかかりを感じる場所を撮りに行っています」 〈船の科学館〉 シーサイドプール 《Tokyo, Japan》『small planet』より、2005年。 国立競技場 本城の撮影に欠かせないのは、デビューから一貫して愛用している4×5インチ(通称:シノゴ)の大判カメラだ。ピントを合わせる範囲を極端に狭くし、あえて周囲の風景をぼかすことでジオラマのような写真になる。 「一枚一枚に込める思いがはっきりと感じられる気がするんです。ヘリコプターに乗った空撮での撮影でも変わりません」 巡回展である本展では、開催地を被写体とした特別な撮り下ろし作品も展示している。今回「東京」を撮影した新作シリーズは必見だ。 ラスベガスのホテル 〈エクスカリバー〉 《urban area》スクラップアンドビルドの現代都市を象徴するかのように、ラスベガスにそびえ立つ巨大なカジノ。「世界の縮図を見ている気分になった」(本城)。scripted Las Vegasシリーズより、2008年。 岩手・陸前高田市 《Rikuzentakata, Iwate》震災から3か月後に撮影された。tohoku 311シリーズより、2011年。 「都市を俯瞰して撮るとき、道路網が生きもののように思えることがあります。ぐちゃぐちゃなんだけど、すべてが用途を持ちながらまとまっている。けれどちょっとしたひずみで街が機能しなくなる危うさも持っている。特に東京の都市づくりは戦後の復興の中で行われたという歴史もあり、撮影を通して人々の “生きるんだ” というメッセージを強く感じました。 どんどん開発されていく都市は、近年発展するメタバースなどの仮想空間との境界が薄くなっているように感じられます。ジオラマのような写真には、仮想と現実が入り混じりつつある都市の姿が映し出されているのです」</p>