「メルセデス・ベンツ」ブランドの大型商用車を展開するダイムラー・トラックは、2022年5月5日、大型トラックに搭載するデジタルミラー(カメラ式バックミラー)「ミラーカム」のアップデートを発表した。
2018年モデルから搭載されているミラーカムとしては初のアップデートとなり、4月発売のモデルから新世代ミラーカムが利用可能となっている。
左右共にアームを短縮し小型化したほか、雨水がレンズの上を流れにくい新しいハウジングの採用、画像処理や表示方法の最適化なども行ない、周辺環境をよりリアルに、より多くの情報をカメラ&モニターを通してドライバーに伝えられるようになった。
また、オプションのアクティブ・サイドガード・アシスト搭載車では自動ブレーキとも連動する。巻き込み事故の防止など、安全性の向上とドライバーの負担軽減に寄与しそうだ
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Daimler Truck AG
「ミラーカム」に初めてのアップデート
ダイムラー・トラックは「メルセデス・ベンツ」ブランドのトラックに搭載する「ミラーカム」に初のアップデートを行なった。バック(サイド)ミラーの代わりにカメラを用いるミラーカムは、ダイムラーの大型トラック(市販車)としては、2018モデルから採用されている。
第2世代となったミラーカムは、大型トラックの「アクトロス」、建設・特装用大型トラックの「アロクス」、および大型電気(BEV)トラックの「eアクトロス」で、2022年4月から利用可能だ。
ミラーカム第2世代はシステムの細かなところに重要な改良を施し、複数のイノベーション・アワードを受賞したとのこと。メルセデス・ベンツ・トラックの商品開発部門でトップを務めるウーヴェ・バーケ博士(Prof. Uwe Baake)は次のようにコメントしている。
「日々の業務を通じて豊富な経験をお持ちのお客様と徹底的に議論し、個々のの技術的パラメータを細かく調整することができました。これにより画像の表示方法や安全性に関して、更なる付加価値を提供することができるようになりました」。
小は大を兼ねる? カメラのアームは短いほど良い
第2世代ミラーカムの外観で最大の特徴は、カメラを支持するアームが左右ともに10cm短縮されたことだ。これはナローキャブでもワイドキャブでも同じとなっている。
アームの短縮には多くの利点があるが、特に重要なのは、第1世代と比較してドライバーがトラックをバックさせる時に、より直線的なラインを取り易くなったことだ。これは第2世代ミラーカムの視点が、従来のガラスミラーの視点に近づいたことによるものだ。
より小さくなったことの別の利点としては、カメラがキャブから突出しないことも挙げられる。
2.5m幅のワイドキャブでは、ドライバーが目視可能なカーブミラーに、意図せずにカメラがぶつかることはない。もちろん2.3m幅のキャブもこれは同じだ。道路の縁にある物体との衝突は事実上なくなったと言っていいだろう。
ちなみに車両の幅の測り方は日本も欧州も同じで、ミラー等を含めない横幅が全幅となる。
カメラシステムの改善
いっぽう、カメラ本体やシステムにも重要な改善を施している。例えばミラーカムの下部に追加した「ドリップエッジ」(水切り構造)もその一つだ。これは雨水などがレンズの上を流れて、表示画像に望ましくない視覚効果が起きるのを防ぐためのもの。
また、システムではトーンマッピングの最適化を行なった(トーンマッピングとは広範囲の(=コントラストが高い)トーンを適切に表示するための画像処理のこと)。これにより、表示する映像のコントラストが改善した。
表示に関しては色および輝度の順応に関しても改善を行なった。ディスプレイ自体は非常に明るいのだが、例えば暗い場所や照明の少ない屋内施設に入った時など、運転状況に応じて適切な表示を行なうようになった。
安全性とドライバーの利便性にコミットする
こうした改善点により、ミラーカム全体の付加価値がさらに高まった。改良されたシステムは、追い越しや細かな操作が必要な時、視界不良や暗所での運転、コーナーリング、隘路など、様々なシチュエーションでサポート効果を発揮する。
併せてドライバーのストレスを軽減する効果もある。
当然ながら従来の利点も継承している。例えば後退操作時の広角モード、運転中の車両後方の物体との距離表示、コーナーリング時のカメラ画像のパンニング(旋回)、休憩中の車両周囲のモニターなどだ。
また、メルセデス・ベンツ・トラックのコーナーリング・アシスタントとミラーカムとの連動も有用であることが証明されており、特に複雑な交通状況や紛らわしい交差点で効果を発揮する。
とはいえ、トラックの右折時などに事故のリスクは常にある。
(ドイツにおける「右折事故」は、右ハンドルの日本の「左折事故」に相当し、運転席の逆サイドの巻き込み事故などが発生しやすい)
もし、ドライバーが歩行者や自転車を見落としてしまったら、システムは権限の範囲内で介入を試みる。ドライバーに対して複数ステージの警告を発するほか、オプションのアクティブ・サイドガード・アシストを搭載する場合、最大20km/hまで自動ブレーキを作動する。
なお、コーナーリング・アシスタントはワーニングのために引き続きミラーカムのディスプレイを使用する。
投稿 巻き込み事故根絶を目指す! ダイムラー・トラックのデジタルミラーが第2世代に進化 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。