NVIDIAではゲーミング用GPUであるGeForceがマイニングなどに利用できないようにマイニング性能を制限するLite Hash Rate(LHR)を搭載したGeForce RTX 3000シリーズを2021年6月頃から出荷していますが、マイニングソフトで有名なNicehashの開発陣がこのLHRを完全に無効化する事に成功したと発表がありました。
GeForce RTX 3000シリーズで投入されたLHR
NVIDIA GeForce RTX 30 Lite Hash Rate (LHR) has been fully unlocked – VideoCardz.com
NVIDIAでは2021年頃から本格化したEthereumマイニングブームでゲーミング用GPUであるGeForceシリーズがマイニングなどで利用される事を防ぐためにLite Hash Rate(LHR)と呼ばれるEthereumマイニングをGPU側が検知した場合GPU性能を約50%程度に制限する機能をRTX 3090を除く、すべてのGeForce RTX 3000シリーズに2021年6月頃から投入しています。
NVIDIAのLHRマイニング性能制限を若干無効化するマイニングソフトが出現
このLHRについては、何度か無効化できると謳うソフトなどは登場していましたが、マルウェアが含まれていた偽物であるケースがほとんどでLHR登場から1年近く経過してもクラックがされないなどNVIDIAの守りについてはかなり強固なものと見られていました。
しかし、マイニングソフトであるNiceHashの開発チームが声明を出し、NiceHash QuickMiner(Excavator)にてLHRを完全回避する事に成功したと発表がされました。
Nicehashが公式ブログで公開、RC版にて実際に使用が可能。ただしRTX 3050とRTX 3080 12GBは非対応。
100% LHR unlock at NiceHash? It’s here! | NiceHash
Nicehashの公式ブログによると、NiceHash QuickMiner(Excavator)にてNVIDIAのGeForce RTX 3000シリーズに搭載されていたLite Hash Rate(LHR)の完全無効化に成功した事が発表されました。
Nicehashのブログによると、このLHR無効化については現時点ではNicehash QuickMinerでのみ対応しており、Nicehash Minerではサポートが行われていません。また、EthereumのアルゴリズムについてはDaggerHashimoto(Ethash)のみサポートし、OSについてもWindowsのみでLinuxでのサポートはされていないとの事です。
このLHR無効化を行う上では一部モデルを除き、制約等はあまり無いようで、Nicehash QuickMiner以外のマイニングソフトを起動する事は出来ないものの、それ以外ではGeForceドライバーも最新版のインストールが可能という事で過去に出現したLHR解除方法のようにドライバー類に依存したものでは無いようです。
ただ、最近発売がされたGeForce RTX 3050およびRTX 3080 12GB版についてはLHRの最新版であるv3が搭載されているとの事で、今回のLHR無効化の対象外となっているとの事です。
NiceHashがどのようにしてLHRを完全無効化しているのかについてはFAQにも開示されておらず、詳細は不明ですがかなり大事ですのでRedditなど有志によって仕組みが近い内に明らかになると見られています。
LHR無効化時は第三者も確認済み。RTX 3080 Tiでは120MH/s程度を発揮
GeForce RTX 3000 LHR cards broken. Cryptocurrency mining profitable again? (benchmark.pl)
LHR無効化についてはマイナー達の弱みに付け込みマルウェアなどを仕込む例が多発しているため、この手の話は警戒する必要がありましたが、今回のLHR無効化については確実と言えそうです。
ポーランドのBenchmark.plと言うテック系サイトでは実際にRC版のNiceHashをダウンロードとインストールを行い、GeForce RTX 3080 Tiにて動作確認を行っています。
Benchmark.plによると、RTX 3080 TiではLHRが起動した状態では約85~88MH/sが最大性能であったものの、Nicehashでマイニングを行ったところ117MH/sでの動作を維持できたとの事です。
なお、NicehashではLHRが無効化された状態での各NVIDIA GeForce RTX 3000シリーズの大まかなハッシュレートが掲載されています。
モデル | ハッシュレート(LHR無効化) |
RTX 3060 LHR | ~ 50 MH/s |
RTX 3060 Ti LHR | ~ 60 MH/s |
RTX 3070 LHR | ~ 60 MH/s |
RTX 3070 Ti LHR | ~ 81 MH/s |
RTX 3080 10GB LHR | ~ 98 MH/s |
RTX 3080 Ti LHR | ~ 120 MH/s |
このNicehashに掲載された数値は恐らくデフォルト状態での性能と見られており、Core ClockやMemory Clockなどを調整すれば低い消費電力でこれよりも高い性能を出す事も可能になると見られています。
ゲーマーや自作erにとっては地獄の始まり・・・とはならない模様
このNicehashによるLHR無効化を受けて最も怯えているのは普通にゲームをするためにグラフィックカードを欲しい自作PCユーザーなどとなりますが、今回のNicehashによるLHR無効化については大きな影響を与える可能性は低いと言えそうです。
Ethereumの価格は2022年5月8日時点では35万円台でマイニングが活発化し始めた2021年初頭に比べると高値となっており、2021年5月のピークにも近い価格となっています。しかし、2021年当時と異なるのはEthereumについて、マイニングが不可能となるEthereum 2.0への移行が着々と進んでいる事や、マイニングにおいて収益を左右するエネルギー価格高騰、グラフィックカードの新モデル発売が控えている事が挙げられます。
Ethereum 2.0への移行は2022年中、遅くても2023年には行われる可能性が高く、LHRを無効化する前提でグラフィックスカードを購入しても恐らくグラフィックカード投資分を回収できるだけマイニングをする事は不可能となります。更に電気代などエネルギー価格も高騰しているため、投資分の回収は更に困難になっています。
また、グラフィックカードをマイニング出来る間だけ使って、その後売るという方法もありますが、これについてはNVIDIAは2022年10月頃にGeForce RTX 4000シリーズを発売する事はほぼ確実視されており中古として売るにしても販売価格が大きく下落する事は目に見えています。
そのため、今回LHRが無効化されたとして恐らくマイニング界隈では盛り上がりを見せると考えられますが、だからと言ってAmazonなどでグラフィックカードの買い占めに走るという事態はあまり考えられないと見られています。
LHRが遂に完全無効化されてしまいましたが、投入から1年も持ったのはある意味NVIDIAの偉業とも言えそうです。このLHRについてはRTX 3050やRTX 3080 12GBにてv3と言う新バージョンが投入されているようですので、今後登場するNVIDIA GeForce RTX 4000シリーズにまでこのNiceHashの影響が及ぶことは無さそうです。タイミング的にはグラフィックカード価格が値下げされているタイミングにあるため、一時的にマイニング目的で購入する人も居るかもしれませんが、2021年5月の時の様にマイニングリグを作るために数十枚ほどグラフィックカードを買うという人が出るとは正直考えられませんので、これからゲーミングPCを作りたいという方でもあまり心配する必要は無いと言えそうです。
ちなみに、RTX 3060は現在6万円程度で買えますが、1kw/h 28円でマイニングをした場合、1ヵ月の収益は3800円となりますのでグラフィックカード分をマイニング利益で回収するのに約16ヵ月ほどかかります。Ethereum 2.0への移行を考えると不可能なレベルで損する事は確実ですが、もしマイニング目的で買いたい方は以下のリンクからどうぞ。
RTX 3060 | RTX 3060 Ti | RTX 3070 | RTX 3070 Ti | RTX 3080 (10GB) | RTX 3080 Ti | RTX 3090 |
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