今やトヨタの看板車種ともいえるシエンタだが、かつて一時生産終了となり、市場から姿を消していた時期もあった。
その後にまったく同じカタチで復活を果たし、今や大ヒットを記録するという、かなり変わった歴史を歩んできたクルマでもある。
一体なぜシエンタはここまで人気車種になれたのだろうか!?
文/青山尚暉、写真/トヨタ、ホンダ、ベストカーWEB編集部
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■超人気のシエンタは一時生産終了していた!? 後継モデル不発で再販の歴史
トヨタはミニバンにも積極的だ。現在では上からアルファード、ヴェルファイア、グランエース、ノア&ヴォクシー、シエンタがあり、過去にはエスティマ、プリウスα、イプサム、マークX ZIO、ウィッシュ、アイシスなど多くのヒット作が存在した。
今ではミニバンの王道はアルファードやノア&ヴォクシーのようなボックス型が主流になっているが、その中でもがんばって売れ続けているのがトヨタ最小ミニバンのシエンタだ。
初代シエンタは日本の一大ミニバンブームの真っ只中の2003年に登場。5ナンバーボディ、女性好みのやさしいエクステリアデザイン。3列目席を「片手でポン」のシートアレンジで、女性の細腕でも簡単に格納できるなど、商品力の高さはさすがトヨタ……という感じであった。
しかし、登場から7年目の2010年10月、販売を”いったん”終了することになったのだ。
その背景には、2008年にトヨタ・パッソセッテ、ダイハツ・ブーンルミナスというやはり5ナンバーのリヤヒンジ式ドアのコンパクト3列シートミニバンの登場がある。
トヨタとしては7年間も販売した初代シエンタの後継車として、シエンタより廉価な価格帯のパッソセッテをとらえていたはずだが、しかし、タイミング的にエコカー減税の導入もあり、エコカー減税の対象にならなかったパッソセッテの販売はいまひとつ盛り上がらなかったのだ。
■再販の初代シエンタはまさかのヒット……現行モデルで人気は不動のモノに
そこで、休眠中だった!? シエンタを2011年6月に、エコカー減税対象のマイナーチェンジモデルとして復活させ、「大きすぎないミニバン」というキャッチコピーで再販売することになったのである。
それもただシエンタを復活させただけでなく、アクティブな外観を持たせた「DICE(ダイス)」グレードを新設定。ないものねだり……ではないけれど、一時なくなったシエンタの復活ということもあって、シエンタ人気は再燃。
その勢いのまま、2015年の夏に登場したのが2代目シエンタだ。初代に対して全長で135mm、ホイールベースで50mm延長した新型は5ナンバーサイズを守りつつも、より使える、3列目席に大人がしっかり座れるパッケージング、そして待望のHVモデルを手に入れ、進化したのである。
今でも印象に残っているのは、トレッキングシューズをイメージしたという、初代とは異なるユニセックス的なエクステリアデザイン。派手なアクセントカラー=フレックストーン(ブルーメタリック、ブラウンパール)を選ぶこともでき、さながら「都会を走る熱帯魚」と筆者に評させたぐらいであった。
無論、ライバルはホンダ・フリード。その存在があってこそ、両車によってコンパクトミニバンのプチブームを呼び寄せたはずである。くどうようだが、扱いやすさ抜群の5ナンバーボディにして、ライバルに比べ、3列目席の実用性ははるか上で、人気が出ないはずはなかったのである。
■マイチェンでダメ押しの一手! 車中泊にも最適なパッケージングがキモ
そんなシエンタの人気を一気に押し上げたのが、2018年9月のマイナーチェンジだった。
エクステリアではフロントグリルなどの意匠変更を行い、例の派手なフレックストーンを廃止。カラフルな樹脂パネル類はすべて黒に統一され、シックなボディカラー、ツートーン全6色を新設定。より落ち着いた大人っぽいデザイン、見映えになったのだ。
とはいえ、2代目シエンタのコンセプト、Fun&Activeなキャラクターをそのまま進化させていることは間違いなかった。
後席を倒すだけで拡大したラゲッジルームの長さは1710mmに達し、ヘッドレストを逆付けすれば身長180cmの人でも真っすぐに寝られる、今大ブーム中の車中泊にも対応してくれるのだから完璧にもほどがある。
■フリードに対抗!? 5人乗り仕様はラゲッジ&シートのデキもお見事
しかし、シエンタ大ヒットの要因はそれだけではない。ホンダ・フリードにあった2列シート仕様を「FUNBASE」として追加。空前のアウトドアブームの最中でもあり、大容量ワゴンとしての魅力、使い勝手の良さをアピール。ここだけの話、2列目席は3列シートのシエンタとは異なるもの。よりかけ心地がいいのである。
具体的には、よりソファ感覚ある、座面に底付き感のないより厚みあるかけ心地を実現。
その秘密はシート構造にあり、3列シートモデルの2列目席は鉄ワイヤーでクッションパッドを受け、ウレタンフォームのたわみでクッション感を出しているのに対して、FUNBASEの後席(2列目席)は、伸縮スプリング付ワイヤーでクッションパッドを受ける、より座面がたわみやすいコンターマット構造を採用しているからだ。
シエンタ初の2列シートモデルの威力は抜群で、もちろん、ラゲッジスペースは大容量。開口部地上高は地上530mm(ローデッキ状態。ハイデッキ状態では610mm)とごく低く、重い荷物の出し入れも楽々。
ラゲッジフロアは奥行き935mm、幅1060mm、天井高930~1100(デッキの位置による)mmと広大。しかも床下にもしっかりとした収納があり、日常から旅行、アウトドア、小さな引っ越しなどで頼りになる、コンパクトカーとは思えない積載力を発揮。ユーティリティフックによってラゲッジスペースを多用途に使える点も見事だ。
さらに、HVモデルに至っては、フリード+HVに望めない、車内外でコーヒーメーカーや簡易電子レンジなどが使えるAC100V/1500Wコンセントを用意。アウトドアから災害時まで、大活躍必至なのである。
その後、アウトドアブームに乗っかったグランパーというアウトドア仕様車も登場し、シエンタ全体の人気を不動のものにすることに成功したのである。
■今やトヨタの看板車種に! 不満は先進安全装備程度か!?
何しろ、2018年12月には国産乗用車販売ランキングでアクア(もちろん先代)に次ぐ2位に。その勢いは止まらず、2019年8月、9月にはなんとなんと、プリウスやノートを抑え、1位に輝いたほどだ(前年同月比157・9~185・4%の台数が売れた)。
つまり、筆者としてはシエンタそのものの親しみやすいミニバンというキャラクター、使い勝手の魅力、ガソリン車で180万円台~、HVでも220万円台~手に入る買いやすさ。それに加え、2列シートの大容量ワゴンと呼べる「FUBBASE」の追加が時代にマッチし、人気を一段と加速させたと考える。
ここ最近は販売台数でライバルのフリードに譲っているものの、現行、2代目のデビューから7年を経ても、人気の根強さはいまだ健在だ。
ひとつだけ注文を付けるとすれば、ノア&ヴォクシーなどの新型車より古い先進運転支援機能=トヨタセーフティセンスの進化・充実を望むぐらいだろうか。ズバリ、お薦めはFUNBASEのHV、ブラックマイカ×ベージュの2トーンカラーボディだ。
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