交差点を右左折時、30m手前ではなく、曲がる寸前にウインカーを点滅させるドライバーが、まれにいる。そういう場面に遭遇すると、「前もってウインカーを出してほしい…」と思うだろう。
今回は、ひやひやと感じてしまう運転、気をつけておきたい点を解説。さらに、サンキューハザードの危険度についても解説していく。
文/諸星陽一
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ウインカー出すタイミング「30m手前」はどのぐらい?
道路を歩いているとき、ながらスマホの人が前からやってくるとぶつかりそうになることがよくあります。これは、ながらスマホの人が回りを見ていないことはもちろんなのですが、ながらスマホの人とアイコンタクトが取れないことも大きな原因になります。クルマの場合はなかなかアイコンタクト取りづらいので、ウインカーがその役目を大きく担っています。
交差点を右左折しようとする場合、ウインカーは曲がろうとする交差点の30m手前から点滅させることになっています。30mがどれくらいなのか? わかりづらいと思っている人もいると思いますので、目安を書いておきます。
30mは路線バスで約3台分、乗用車だと6台分くらいです。そう考えるとさほど長い距離ではありません。にも関わらず、ウインカーを出す(かつてのウインカーは実際にボディから矢印のようなものを出していたので今もこの動詞が使われます)タイミングが遅いクルマを多く見かけます。なかにはクルマを停止させてからウインカーを出す人も多くいます。
右左折専用レーンがある場所ならまだしも、片側1車線の道路でいきなり停止され、そこからウインカーを出されたらけっこうイラッとしますよね。30m手前からウインカーを出すのは後続のクルマに「そろそろ曲がるぞ、よけるとか止まるなら準備してね」と知らせるのが目的なので、手前から出さないとならないわけです。
基本はブレーキを踏む前にウインカーを作動させましょう。先にブレーキランプがつくと「なんでこんな所でブレーキ踏むんだよ」と思われがちです。
車線変更「3秒以上手前」と発車時のウインカーの習慣づけを!!
いっぽう、車線変更については車線変更を行う3秒以上手前からウインカーを出す必要があります。高速道路で観察していても、この手順で車線変更を行っているクルマはまず見かけません。
多くのクルマはボディが動き出してからウインカーが作動します。ただし大型車、とにくトレーラーなどは手順を守っていることを多く見かけます。3秒以上手前からウインカーを作動させる理由は右左折時に30m手前からウインカーを作動させるのと同じで、後続車に自分のしようとしている行動を知らせるためです。
最近のクルマの多くはワンタッチウインカーなるものが装備され、ウインカーレバーを軽く操作するだけで、3秒程度ウインカーが作動するようになっています。この装置だと、ハンドルを切ると同時にウインカーレバーに触れることで、合図を出して車線変更をしたかのように見せられますが、外から見ているとクルマが動き出してからウインカーが作動するのです。
ウインカーは車線変更をする3秒前に作動を開始させ、車線変更が終了してから作動停止とするのが正しい使い方だといえるので、ワンタッチウインカーでは作動時間が足りません。ワンタッチウインカーで3秒待機していると車線変更を開始した時点ではウインカーは消えてしまい、まるで車線変更を停止したかのように見えるのです。輸入車にワンタッチウインカーが装備されたあとすぐに国産車に広がりましたが、国産車には時期尚早だったといえるでしょう。
ウインカーは右左折や車線変更だけでなく発進時も使用します。もちろん信号停車時からの発進では使いませんが、路上に駐車している際は右にウインカーを出してから発進を行います。でありながら、この操作をして発進するクルマを見かけることはあまりありません。
発進時にウインカーを作動させるのも後続車に発進の意図を示すのが目的ですが、今後は発進合図と連動する安全機構の導入なども広がっていく可能性が高いので、今から習慣づけておいて損はしないでしょう。
サンキューハザード危険!? 正しいハザードランプの使い方
筆者が合図でもっとも問題だと思っているのがハザードランプの使い方です。ハザードランプは、その名のとおり緊急時に使用するものですが、今はいわゆるサンキューハザードとして使われることが多くなっています。
サンキューハザードの問題点は本来の意味である緊急時の使用と合図の意味が大きく乖離していることです。たとえば、車線変更をしたあとに急にアクシデントが発生してハザードランプを作動させたときに、それがアクシデントだと認識されずにサンキューハザードと認識されてしまうことです。
せっかくのハザードランプの意味が役に立ちません。サンキューハザードを使う人に話を聞くと「サンキューハザードをしないとあおり運転の対象になるかもしれないから、予防的にしている」という話がよく出てきますが、そこにはサンキューという感謝の気持ちはなく、あくまでもあおられないために行うということです。それは、まるで反社会勢力組織に嫌がらせを受けないようにする「みかじめ料」そのもの、サンキューハザードはもはや、みかじめハザードなのです。
そもそもサンキューハザードは大型トレーラーなどが高速道路での車線変更で使い始めました。大型トレーラーなどは車内で手を上げても後方には見えませんし、窓から手を出してもほとんど認識されません。そのためにはじまったものです。乗用車ならば手を上げる、窓から手を出すなどの行為で充分にお礼の意思を伝えることができます。
そもそも、車線変更をせずに運転することなど不可能に近いのですから、大前提としてきちんとした合図を行うことが大切です。そして、やむを得ず無理な車線変更になってしまったときには、手を上げる、窓から手を出すなどの行為でお礼の意思を伝えるのがもっとも大切でしょう。
ハザードランプは高速道路などでは渋滞末尾で使うように勧められています。これは一見すると本来の使い方とは違うように思われがちですが、100km/h(ところによっては120km/h)から停止になるというのは、緊急事態でもあります。ハザードランプを使うことでそうした異常事態を伝えられるので、渋滞末尾では使ったほうがいいのです。
また、渋滞末尾に近づいたら、ゆっくりとしたポンピングブレーキでブレーキランプを点滅させて減速するもの有効です。現代のクルマはABSが装備されているので、滑りやすい路面でポンピングブレーキを使う必要はありませんが、合図をより明確するという意味でのポンピングブレーキは有効です。
滑りやすい路面でのポンピングブレーキの場合はペダルから足を離さないレベルで液圧を抜きますが、合図としてポンピングブレーキを行うときはペダルからしっかり足を離してブレーキランプが点滅することが重要です。もちろん、停止距離が足りないときはしっかりブレーキを踏んで停止することがもっとも大切です。
合図のなかでいちばん気持ちが伝わるのは人間の動きです。前述のように手を上げるや、窓から手を出すなどの行為はもちろん、会釈するやアイコンタクトを行うというのも大切です。気持ちを持って身体で表現する行為は、相手にもきちんと伝わるので、まずはそれを大切にしましょう。
そして、自分の行った合図が外から見てどのように見えるのか? を意識して合図するようにしましょう。そうすれば、おのずと正しい合図を行うようになるはずです。
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